サドル製品レビュー

Astute STARLINE VT 「薄さ」と「狭さ」が際立つ唯一無二のサドル

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6年前に、アスチュートというサドルメーカーが誕生しました。

ASTUTEやASTVTEなどの表記ゆれがありますが、輸入代理店のサイトでは「ASTVTE」表記が、メーカー本国サイトでは「Astute」が用いられています。どっちやねん。

Astute(ASTVTE)について

ここでは、本国サイトに従って「Astute」としておきます。

一般的に人気な大手サドルメーカーといえば、セライタリア、サンマルコ、SMP、セラロイヤル(フィジーク)、ブルックス、などなど50年以上の歴史を持つ老舗メーカーばかりです。

10年そこそこで有名メーカーへとのし上がったサドルメーカーの例も無いではないですが、2~3年程で一気に知名度を得たメーカーというのは珍しいのではないでしょうか。

Astute STARLINE VT

Astute STARLINE VT 〈出典:ヴィットリア・ジャパン

Astute STARLINE VT

僕が愛用しているのは、同社の「STAR」シリーズのチタンレールモデル、STARLINE VTです。

Astuteは、SKYCARB、SKYLINE、SKYLITEの3つのサドルで創業したメーカーで、実際にAstuteといえばSKYシリーズを使っている人が最も多いように思います(統計的な根拠は無い)。

というのも、Astuteのサドルは創業から2年間はSKYシリーズしか無かったからなんですね。

STARシリーズがデビューしたのは2016年の事なので、今現在まだ登場から3年しか経過しておらず、ユーザー数が少ないのはある意味当然なのかもしれません。

STARシリーズには、ベーシックモデルのSTARLINE、カーボンレールのSTARLITE、幅広モデルのPILARGA(ピラルガ)、女性用のMISSLINE、TTバイク向けのTIMELITE、といったラインナップがあり、ベースの形状はいずれも共通となっています。

全体的にフラットな形状のSKYシリーズとは異なり、サドル後部の座面は外側に向かって緩やかな曲面になっています。

また、Astuteのサドルの「VT」というのは穴あきを意味するのですが、貫通穴になっているSKYLINE VTとは異なり、STARLINE VTは穴というよりは溝と言った方が適当かもしれません。

確かに「表皮とパッドには」穴が開いているのですが、それを受け止めるベース部分が穴なしなので、結果として半穴になっている感じです。

STARLINE VT

筆者のSTARLINE VT

実際に使ってみた感想ですが、そもそもサドルのパッドが薄いため、レーパン無しで座ると非常に痛いです。

「溝のエッジが立っていない座面」というのは、割と誰にでも合うサドルの条件のひとつではないかなあと勝手に思っているのですが、STARLINE VTの場合ベースの硬さがそれを上回っており、悪い意味で「剛性が高い」と言えます。

STARLINE VT

レーパンを着用した上で乗ると、レーパンのパッド部分が丁度よい具合に溝を埋めてくれるのか、なかなか悪くない座り心地になります。

特に、腰を後ろへ引きつつ骨盤を前傾させ、下ハンドルを握って低姿勢でペダリングする座り方が特に気に入っています。

逆に、鼻先の方の感触はイマイチで、(そもそも僕はやりませんが)極端な前乗りポジションには向いていないように思います。サドル全体での「座りやすい領域」が、一般的なサドルよりも後ろ寄りに設定されているのかもしれません。

Selle San Marco Zoncolan

後ろ乗りに向いていないサドルのひとつが、サンマルコのゾンコランです。

同じクランク長さ、同じフレームスケルトンで同じサドルポジションを出そうとすると、ゾンコランの方がサドル後退幅を20mm多く取らないといけません。

サドルを選ぶ時は、自分に合った形であるか否かはもちろん、既に取り付けているサドルと比較して、座りやすい位置がどれくらい前後するかを考慮する事が重要です。

STARLINE VT

最大のウリは「薄さ」

STAR系サドルの、最大のウリは「薄さ」です。

サドルレールを含めた「サドル全体の厚み」が、現代の一般的なサドルと比べて非常に薄くなっているのです。

というのも、ISP(ヤグラ直下ギリギリまでシートチューブが伸びているカーボンフレーム)や特殊形状シートポストがここ10数年で一気に増加した影響で、「どんなシートポスト、どんなヤグラであっても取り付けが可能な最大公約数的サドル形状」というのが現代では求められています。

STARLINE VT

このサドルを付けているシートポストは、BBBのSkyscraperです。

前後2本締めのヤグラですが、前のボルトがサドルに干渉しそうなくらいギリギリに迫っています。

もしこれが完全に当たってしまう場合はアウトです。普通の丸チューブのシートポストであれば、汎用品で合うものを見繕えばいいだけですが、最近流行りのエアロロードなどでは、そのフレームセット専用の特殊シートポストが付属していて、それ以外は使用できない様になっているため不可能です。

なので現代の大抵のサドルは、どんなシートポストが相手であっても取り付けられるようなクリアランスを確保する事が大事なのです。

薄いサドルのメリット

では、薄いサドルにはメリットはあるのかと言われると、もちろんあります。

STARLINE VT

サドルレールには、「この範囲でヤグラに固定せよ」というリミットラインが必ず印字されています。

この、前端ギリギリのところを測ると、実測で約39mmしかありません。

これ以外の一般的なロード用サドルでは、ここが45mm以上あるものがほとんどで、40mmを割っているサドルはごく少数派です。

ここの数値が小さいと、シートチューブから出るシートポストの量が大きくなる、というメリットがあるのです。

スローピングフレームではあまり意識されませんが、ホリゾンタルフレームにとっては意外と深刻な問題だったりします。

ゼファール(Zefal) 大容量サドルバッグ 自転車 Zアドベンチャー R11 [Z Adventure R11]

↑これは、Zefalが昨年秋に発表した大型サドルバッグ「Adventure R11」です。僕はこの手のバイクパッキング用バッグを買った事がほとんど無いのですが、間もなく出走予定のブルベの為に購入しました。

当初の予定では、ドイターの6Lのバックパックに必要最低限の荷物だけを入れ、ロードバイクにはなにも付けずに背負って走る、というスタイルを想定していたのですが、試しにバックパックで試走をしてみたところ、気温や湿度の兼ね合いでとても耐えられそうにない気がしたので、方針を急遽変更した次第です。

それはいいとして、このサドルバッグ、シートポストに巻きつけるベルトの縦幅が長いという特徴があります。

荷崩れの起きにくさやシートポストへの負荷の分散を考えれば、これ自体は普通の仕様です。

とりあえず、これをロードバイクに取り付けてみると・・・

ゼファール(Zefal) 大容量サドルバッグ 自転車 Zアドベンチャー R11 [Z Adventure R11]

このように、シートポストのフレームから出ている部分のほぼ全てをバンド巻き付けとサドルバッグのサポートで消費する事になります。

当然ながら、ライトなどを付けるスペースなど残っていません。

バンドの下端がシートチューブに接触しそうになっており、実際サドルバッグに詰める荷物が重いと完全に当たります。

Selle San Marco Concor Racing

サンマルコのConcor Racingの場合、サドルの厚みは約46mmになります。

サドルレールをヤグラでつかむ位置も変わるので一概には言えませんが、単純計算でいくと約6mmシートポストの出が少なくなるわけです。

もっと厚い、例えばSan Marco Concor SupercorsaやCinelli Unicanitorといった「極厚サドル」の場合、シートポストは更に1cmくらいは引っ込むでしょう。

そこまでいくと、最早サドルバッグの取り付けどころではなくなってしまいます。

これらが、まさに「スローピングフレームではほぼ無縁な課題」です。

そもそもシートポストがたくさん出ているので、多少引っ込んだところで問題視されないんですよね。

S-WORKS TOUPE

S-WORKS TOUPE 《出典:スペシャライズド・ジャパン

STARLINE以外の「薄い」サドル

STARLINE以外に「薄い」サドルが無いのかと言われれば、あります。

SPECIALIZED TOUPEのS-WORKSグレードがそうです。

スペシャライズドには、TOUPE、ROMIN、POWER、PHENOMという4種類のロード用サドルがありますが、この中で厚みが40mmを切っているのは唯一TOUPEだけ、しかもカーボンレールのS-WORKSグレードのみとなっています。

それ以外のモデルでは、全て約45mm程度、またはそれ以上の厚みがあるのです。

TOUPEも良いサドルだとは思いますが、カーボンレール対応のシートポストを用意するのが面倒だったのと、そもそも自分の尻に合わなかったので購入を断念しました。

あとは、セライタリアのSLRというサドルで、非常に薄いモデルが現行品にあったと思うのですが、現物を確かめた事がないので断言は控えておきます。

スイートスポットは狭い。しかし唯一無二のサドル

以前、フィジークのサドルで最も人気なのはアリオネ系モデルだ、という記事を読みました。

フィジークのロード用サドルのラインナップを整理してみよう
ヴィンチェンツォ・ニバリは今期のツール・ド・フランスでも例年通り、フィジークのアンタレス(Fizik Antares)というサドルを使用しています。所属しているバーレーン・メリダはPrologoにサドルを供給してもらっているのですが、どうし...

僕もアリオネCXを使っていた事があるのですが、スイートスポットというか「ここに座ってペダリングするのがベスト!」的な範囲が広いように感じたのです。

という事は、サドルの位置出しが多少甘くとも一応はスムーズなペダリングに支障が出ないのでは、と考えたのですが、STARLINEの感触は真逆です。

座面のスイートスポットが非常に狭く、サドル高さも後退幅も狭い範囲で収束させなければポジションは出せません。

僕も、買ってからの1年間でサドル高を2回・サドル後退幅を1回変更し、先月ようやくベストポジション(と呼べそうなサドル位置)を得たばかりです。

自分のような不慣れな人間が使いこなすにはそれ相応の時間と手間が必要ですが、「同じような競合製品が無い」という意味で、唯一無二の良いサドルだと思います。

著者
PHILLY

京都に生息するロードバイク専門サイクリストにしてランドヌール見習い1年目。初めてのブルベを寝坊でDNS。愛車はラグカーボンバイクと軽量アルミロード(軽いとは言っていない)、最近新たに迎えたシクロクロスが1台ずつ。自他共に認める甘党であり、ドリンクボトルで如何にしてタピオカミルクティーを持ち運ぶか考え中。山に囲まれた地域に住んでいながら平地のサイクリングにうつつを抜かしてばかりの今日このごろ。

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