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よみもの

パンク頻度の実学的考察

「はっ? リアが甘くなってきた、パンクだっ!」

その瞬間、宅浪の頭はスイッチが入ったように一気に覚醒し、リアホイールを外す場所を瞬時に探し出した。

「あそこだ!」

首尾よく明るい街灯のある歩道の邪魔にならないところに停止したかと思うと、軍手をはめてリアホイールを外し、マルニのタイヤレバー1本でチューブラタイヤをリムから剥ぎ取って、トー・ストラップ(死語)でサドルに括りつけてあったスペアタイヤを代わりに装着し、Zefalの最強フレームポンプhpX-3であっという間に空気を入れて、ホイールを自転車にセットする。最後にパンクしたタイヤを畳んで軍手でラッピングしてバックパックに入れる。

ここまで精々、7分。フロントなら5分が目標時間。

「今日も早かったぜ、フフフフ・・・」

パンク頻度の実学的考察

この10年ほどは、No Tubesタイヤシーラントのおかげで、もう本当に信じられない位、劇的にパンク頻度が減ってしまいました。そんなわけで、上の話(ほぼ実話)のような爆速タイヤ交換の機会は激減してしまいました。No Tubesタイヤシーラントを使う前は、度重なるパンクで、やっぱり安いチューブラタイヤはパンクするんだなあ、などと思っていたわけです。

そして、何度もパンクすると、どうもリアばかりパンクするなア、などと思い至ります。

「フロントタイヤで跳ね上げた異物をリアタイヤが踏みつける。だからリアタイヤの方がパンクしやすいのさ」

などという、もっともらしい話を聞いたことはありませんか?真偽のほどは、どうなのでしょう。世の中、胡散臭い伝説が意外と信じられていたり、ありもしない効能を謳う製品が堂々と販売されていたりするのは今も昔もあまり変わらないのですが、パンクにかかわる上記の噂の真相、これはどうなんでしょうか!?

「パンクの帝王」時代

ツールで5連勝して、太陽王と称されたのはスペインのミゲール・インデュライン(最近はミゲル・インドゥラインと表記されることが多い模様)。1991年から95年まで5連覇を果たしています。音楽の世界では帝王が存在し、ジャズ界ではマイルス・デイヴィス、指揮者だとヘルベルト・フォン・カラヤン(いずれも故人)。

一方、激安チューブラタイヤで走っていた単なるサイクリストの私は、パンクの帝王(自称)として君臨していたのでした。昔、東京都内で走っていたころはそうでもなかったような気がするのですが、仕事の関係で北関東に転居したあたりから、どうもパンクが目立ち始めます。

しかし2011年の暮れにNo Tubesタイヤシーラントを使い始めてしばらくして、パンクの帝王を返上しなければならないことを悟ったのでした。

「パンクの帝王時代のオレは一体、どれだけ凄かったんだ?」

ということで、ちょっと調べてみました。

自分の自転車史(?)の中で、かろうじて真っ当な記録が残っている最近22年の中から、No Tubesシーラント使用開始以前の、「パンクの帝王」時代のパンクのデータを眺めてみます。

基礎データ

基礎データは以下の通りです。

  • 対象期間 ・・・ 1998年10月26日~2011年12月12日
  • 対象車両 ・・・ スチールロード2台
  • パンク回数 ・・・ 76回
  • タイヤ ・・・ 21C廉価チューブラ(Vittoria社のRally, Formula UNO, Stradaなど)
  • 空気圧 ・・・ 6~8気圧
  • 用途 ・・・ 通勤メイン+サイクリング
  • 乗り方 ・・・ 雨風全般お構いなし
  • 道路 ・・・ 主に県道で交通量多め
  • 道路管理状況 ・・・ 結構異物が転がっており、良好とは言い難い

たった13年でパンク回数76回ですよ。さすが帝王。まあそれにしても21Cタイヤとか、今では入手さえ難しいですよねえ。時代を感じます。対象期間で最初のパンクは1998年ですが、その日の通勤走行記録を見ると、次の記述が。

〇〇交差点通過後の上りでいいところ見せようとして後ろタイヤやられる。

なんだこりゃ?

う~む、一体何をやろうとしていたのか全く思い出せません(笑)

道路管理状況といえば路肩清掃車の出動頻度も重要です。通勤でよく使う県道は、2000年代序盤だと年4回だった(県庁情報)のですが、財政難のおり、その後減っているかもしれません。

いずれにしても、都心の主要道路のように、頻繁に路肩清掃車が出動するというわけではないので、事故で飛散したガラスなどは、長期滞留し、路肩側に集まっていると思われます。私の非常に大雑把で根拠希薄な感想では、都心の幹線道路の2倍程度のパンク頻度ではないか?という印象です。

前後タイヤのパンク比率

前後タイヤのパンク比率を図1に示します。

ロードバイク2台の合計で、フロントが19.7%、リアが80.3%となりました。なお、合計パンク回数(母数)は61+15=76です。おっと、76回しかパンクしていないのですから、19.7%などという3桁数字は、過剰です。せいぜい、フロントが2割、リアが8割、という言い方が適切です。

図1 前後タイヤそれぞれのパンク回数

図1 前後タイヤそれぞれのパンク回数

というわけで、ごく大雑把に言うと、パンク頻度の前後比は2対8程度である、と言ってもよさそうです。

たとえば、高々10回のパンク回数のうち、リアのパンクが8回だった、ということになると、2対8程度、と言ってしまうことには躊躇しますが。サンプル数が76回なので、2対8程度と言っても許してもらえるでしょう。

しかし、この2対8という数字。世の中の一般的傾向と同様なのか、乖離しているのか?

ちょっと興味がわきますよね。フロントで跳ねた異物をリアで踏みつけてしまうのか、それともリア荷重が大きく、しかもトラクションホイールだからなのか?何だかよくわかりませんが、両方が関与しているような気がしますが、であるならば、2対8なのか3対7なのかはわかりませんが、世の中の傾向もリアのパンク割合が50%を越えているのではないかと思われます。

「最近の2回のパンクで、フロントとリアのどちらがパンクしましたか?」

という質問を投げかけて、

「フロント2回」
「リア2回」
「両方1回ずつ」

の三択にして250人の回答を得ることで500回分のパンク情報を収集する、というのも、興味津々です。

というわけで本記事公開にさきがけてTwitterアンケートをCBNマスターさんに実施していただきました。結果は・・・

投票数が500、したがってパンク数は1000!

棒グラフのパーセントから、フロントとリアのパンク頻度割合は、

フロントが28.3%、リアが71.7%

となりました。つまり1000回中、リアのパンクが717回です。

途中経過も注目していましたが、リアのパンク比率が72%前後で推移し続けていました。リアが終盤に向かって追い込んできたわけではないんですねぇ。虚心坦懐な投票をいだだけたのだな、と思いました。

というわけで、私の場合の20%対80%とまではいきませんが、リアがパンクしやすいのは間違いないようです。総パンク回数が1000回ですから、統計的に極めて意味のある数値です。リアタイヤのパンク頻度は明らかに高い。これは都市伝説でも何でもないということがはっきりしました。

投票してくださった方、ありがとうございます!

パンク to パンク間隔

初体験銘柄のタイヤがパンクしてから100kmも走っていないのにまたパンクした!などということが起きると、たった一度の経験だったとしても

「このタイヤ、100kmごとにパンクかよ!?」

などと思ってしまうものです。では、パンクしてから次にパンクするまでに走る距離というのが一体、どんな分布になるのでしょうか?

2台のロードバイクそれぞれのフロントとリヤに分けて考えます。つまり、

フロントがパンクしてから次にフロントがパンクするまでの距離

と、

リアがパンクしてから次にリアがパンクするまでの距離

を、ロードAとロードBに関して整理し、その後、フロントとリアをまとめてみます。図2がフロント、図3がリアです。

図2 前タイヤのパンクのヒストグラム

図2 前タイヤのパンクのヒストグラム

図3 後タイヤのパンクのヒストグラム

図3 後タイヤのパンクのヒストグラム

フロントは12000km以上パンクしないというレア事例もありますが、もちろん、途中でタイヤがすり減って、交換しています。なお、フロントは16回のパンク回数なので4000km毎、リアは61回のパンク回数なので細かく区切って400km毎のヒストグラムにしています。

平均すると、フロントは4300kmに1回のパンク、リアは1050kmに1回のパンクです。ハーヤレヤレ・・・

パンクヒストグラムの積分

つぎに、先ほどのリアタイヤのヒストグラムを積分してみます。

ヒストグラムではわかりやすくするために刻みが400kmでしたが、今度は50km刻みで積分してみます。単にパンクの数を数え上げるだけなので、最終値はもちろん、リアタイヤがパンクした回数である61になるのですが、このときの距離は6000km弱。ここまで走れば99%はパンクしているだろう、と仮定して、積分の最終値 “61回” をパンク確率 “99%” に規格化したものを図4に示します。ちょっと乱暴ですがご勘弁を。

図4 後タイヤのパンクの累積分布

図4 後タイヤのパンクの累積分布

800kmまでに50%のタイヤがパンクして、1000km以上で傾きが緩くなって多少パンクしにくくなる、という、まさに初期故障と劣化故障という、製品故障と同じような風景が垣間見えてしまいました。それにしても、リアは3000kmに至る前に大半がパンク。壮絶な時代を走り抜けていたんだなあ。

製品故障に関る統計的な手法はいろいろとあります。それらをこのデータに適用するのも面白いと思いますが、ここでの深追いはやめておきましょう!

まとめ

  • ロードバイクの場合、リアタイヤはフロントよりも明らかにパンクしやすいようで、それは統計的にも有意と言えそうだ
  • パンクの累積分布は、どういうわけか、よくある製品故障のそれに似ている
  • No Tubesタイヤシーラントを使い始めてからパンク頻度が激減してしまい、「パンクの帝王」を返上するに至った(笑)

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GlennGould | CBN Blog
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著者
GlennGould

単なる市井の自転車乗り。2020年はスレスレで年間走行距離10000kmを上回り、最近10年間の総走行距離は109500kmほど。早朝4時から7時前(冬は真っ暗)に走ることが多く、日焼けはかなり控えめ。ここ数年はMTB走行が多め。おかげで自転車の操縦が少しだけ上達したような気がする(というのは完全に思い込み)。 そういえばサイスポ歴は立ち読みも含めて45年。 なお、山歩き歴も長いですが、そちらは永遠の初心者。

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