投稿日:2031年4月1日 ー シマノの新型デュラエース、R9550の使用を開始して3ヶ月ほどになるので、CBNに初期使用感を投稿します。R9550系は脳波シフトのBi2(Brain Integrated Intelligence)を初めて搭載したR9450(2029年)の後継製品で、脳外科手術を行わなくても気軽にディレイラーを脳波コントロールできるようになったのが大きい特徴です。
あなたの自転車を脳波変速システムに、カスタマイズ。
BI2(ブレインインテグレーテッドインテリジェンス)システムは、高精度な脳波シフティングと圧倒的な操作性を実現。ライダーのスタイルに合わせたカスタマイズを可能にするプラットフォーム「B-TUBE PROJECT」が、ライディングをさらに快適にしてくれます。
– Shimano Bi2 2031年版シマノカタログより
外科手術が不要に
購入の動機
シマノがイーロン・マスクのNeuralinkと共同で開発した「脳波を読み取りシフターを操作する」世界初のコンポーネント「Bi2 R9450」は発売直後から気になっていましたが、使用にあたっては脳にチップを埋め込む外科手術(要1週間入院)が必要になる点が自分的にはハードルが高いので見送っていました。
これまで多くの競技系サイクリスト・プロサイクリストが脳にBi2チップを埋め込む手術を受け、さすが世界のシマノとNeuralinkだけあって医療事故などはこれまで全く起きていないのですが、自分はそこまでガチのサイクリストではないため、もっと気軽に脳波シフトを楽しめる時が来るのを楽しみに待っていました。
そんな折、脳にチップを埋め込むのではなく「ヘルメットに内蔵したセンサーで脳波を増幅して読み取る」タイプの新型R9550が発売されたため、妻の貴金属を売却して予約購入しました。
スムーズな変速の要となるSIS(シマノ・インデックス・システム)を礎に、BI2(ブレイン・インテグレイテッド・インテリジェンス)コンセプトのもと、脳制御による高精度のシフティングを開発。それがSBIS(シマノ・ブレイン・インテリジェント・システム)です。脳波からのライダーの意志を電気信号に変換、鋭いレスポンスとともにディレイラーに伝え、前後ギアの位置関係に応じてコンピュータ制御による最適な動作を行い、変速をコントロールします。
– Shimano Bi2 2031年版シマノカタログより
ちなみにBi2対応のヘルメットは現在のところシマノ傘下のLAZER製となっています。
シフトは言語以外に映像でも
使用感
Bi2は脳波スキャナーとトランスミッターを兼ねた専用ヘルメットと、ワイヤレスのディレイラーとのセットです。通信はシマノの独自規格Shimatooth 8.1で、ヘルメットとディレイラー間の通信は何の問題もありません。今ではロードバイクでも標準装備になったワイヤレス・ドロッパーシートポストも問題なく操作できます。
脳波スキャナーの精度も良好で「軽く!重く!アップ!ダウン!2段軽く!限界まで軽く!」等、どんな表現でシフティングを念じてもだいたい本人の意思通りの動作をしてくれます。またスマホのBi2アプリで、どのくらいの強さで念じれば本当に変速するかを調整できます。
さらに最新ファームウェア(ver4.1)では「想起映像による『らくらくシフト』」が搭載され、言語で念じなくても、たとえばモン・ヴァントゥーのような「山の映像」を思い浮かべるとギアが軽くなったり「マーク・カヴェンディッシュのスプリント時の姿」を想起するとギアが最大になったりします。
なら「ラーメンと餃子の映像」を思い浮かべるとどうなるのだろう思い、人柱覚悟で実際に西伊豆スカイラインで試してみたところ、ギアが52×9に移動し、その後しばらくはそのギアから変速できなくなりました。これがバグなのか、何らかの意図のある動作なのかは不明です。
Bi2の最大の短所は、シフト操作にあたっては当然ながら専用ヘルメットが不可欠なところです。自分はライド中必ずヘルメットをかぶるので気になりませんが、近所のポタリングのつもりでうっかりいつものBi2バイクに乗ってノーヘルで外に出てしまったカジュアルライダーの方は「しまった!」となるかもしれません。これを避けたい方は脳にBi2チップを埋め込むしかないでしょう。
「念じる」以外のシフト操作は過去のものになる
まとめ
Dura-Ace Bi2 (R9550) は先代のR9450系で必要だった脳外科手術(保険適用外)を必要としない点で、脳波シフトをより身近なものにしてくれました。R9450のリリース直後は英語・フランス語・イタリア語・スペイン語・日本語のみの対応でしたが、その後のアップデートでオランダ語やポルトガル語、ロシア語や中国語にも対応し、R9550では数十の言語に対応しているそうです。
2年前のツール・ド・フランスでは39歳のピーター・サガンがスプリント時に英語でシフトアップを強く念じたところ、訛りが強かったせいで脳波を読み取れなかったためステージ優勝を逃す場面がありました。これを受けてR9450は急遽スロバキア語にも対応。
ただし現行バージョンでは「緑色」や「凱旋門」や「ラーメン」をイメージするだけでギアが最大になるなど、よりファジーな脳波読み取りにも対応しているようです。
また先代のR9450系では通信規格がオープン規格だったためサイクルロードレースなどでは他の選手の変速をメチャクチャにする「脳波ハッキング」が行われた疑惑がありましたが、R9550では暗号化が強化されているのでその点も安心です。
価格はBi2基本セットだけで99万8000円と決して安価ではなく(シマノダイレクト直販価格)、日本の所得水準も何故か10年前の2021年とは全く変わっていないため、コストパフォーマンス的には正直微妙です。しかし今年のツール・ド・フランスではほぼ全てのチームが脳波シフトのコンポを使用するので、「念じる」以外のシフト操作は過去のものになりそうな気がしています。
脳波シフトには他に「Campagnolo Super Psycho(スーパーサイコ)」や「SRAM MindTap AXS(マインドタップ)」等がありますが、精神状態も含めた「きめ細やかな意思の読み取り」という点ではShimano Bi2が一歩抜きん出ているのではないでしょうか。Garmin Edgeシリーズを含むGPSサイコンの脳波操作にも対応しているのは、いまのところBi2だけです。
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