現在ドイツのメッセ・フランクフルトにて世界最大の自転車製品展示会「Eurobike 2022」が開催されていますが、それに合わせBrytonとMageneがGarmin Varia(サイクリングレーダー)の競合となる製品を発表したそうです(Mageneは展示会非参加でウェブでの発表のみ)。DCRainmakerとGPLamaが報じているので情報を集約してみます。
これまでWahoo, Stages, Hammerhead等を含むサイクルコンピューター各社はGarmin Varia製品との互換性を保ってきましたが、レーダーユニットそのものを製造していたのはGarminだけという状況でした。
今回Brytonは新製品「Gardia R300」をブースに展示し、Mageneはウェブサイトで「L508」を正式発表(4月には中国でティーザー公開されてはいました)。いよいよ「サイクリングレーダー」分野で競争が生まれることになります。
出典1 Bryton Gardia R300 & Magene L508 Cycling Radar Sensors Announced at Eurobike
出典2 Eurobike 2022 Day 1 // Recap with GPLama and DCRainmaker
Bryton Gardia R300
まずはBryton Gardia R300に関する情報から。DC Rainmakerによると…
- Gardia R300の公式スペック・価格情報は7月末まで明らかにはされない
- Gardia R300のレーダーとライトはANT+で通信するためBryton社以外の多くのユニットでも動作することになる
- Gardia R300の駆動時間はGarmin Variaをはるかに凌駕する。価格もはるかに安い
- 大きさはVaria Radar RTL-510/515と大体同じ、重量はRTL-515と同じくらいに感じた
- あとは精度と信頼性がどうかだ。Garmin Variaと同サイズで駆動時間が長いとするなら、何らかのトレードオフがあると考えるのが普通だ。技術の進歩で駆動時間を伸ばせたのか、センサーへの電力供給が減らされ精度が落ちているのか、今後見ていく必要がある
記事冒頭で紹介したGPLamaによる動画にはGardia R300のパッケージが写っています。それを見ると:
- サイズ:97 x 20.9 x 40mm
- 重量:68g
- 防水:IPX7
- ビューアングル:220度
- LEDインジケーター:ANT+, Bluetoothリンク, パワー
- 65ルーメン
駆動時間は:
- 点灯(ハイ)で9時間
- 点灯(ロー)で12時間
- グループライドで10時間
- ナイトフラッシュで22時間
- デイフラッシュで27時間
- LED OFFで40時間
となっています。USBのタイプは言及されていませんが動画を見るとUSB-Cに見えますね。また箱にはMSRP(メーカー希望価格)129.95ユーロという数字が読めます。本記事時点でのレートで18,155円相当です。
Magene L508
Magene L508に関する情報です(DC Rainmaker)。
- Magene L508の外観はGarminのユニットに瓜二つに見える。またスペックも大部分は似通っている
- スペックは公開されている(公式サイト)
- 充電: USB-C
- 通信: ANT+ & Bluetooth Smart
- ライトモード:点灯・点滅・パルス・プロトン・レーダーオンリーモード
- 駆動時間:点灯で6時間・プロトンで8時間・点滅で10時間・パルスで12時間(すべてレーダーONの場合)
- ライトの明るさ:点灯で20ルーメン・点滅で20ルーメン・プロトンで6ルーメン・パルスで3-20ルーメン
- スマートブレーキセンシング:あり。ブレーキングで「ハイライトモード」になる
- Garminのデイフラッシュ16時間に比べるとバッテリースペックは見劣りするものの、Garminにはないスマートブレーキセンシングがある
- USB-CもGarmin Variaでは新型のRCT-715にしかないので長所
- 明るさはパルスを除きGarminと同等かそれ以上だ(パルスではGarminは最大65ルーメンだがMageneは20ルーメン)
- マウントはGarminと同じクォーターターン式に見える
- 価格は600中国元であり、米ドルでは90ドル相当になる。しかし米国では諸コストを考えるともっと高くなるのではと思う
- Magene製品はアジアでよく流通しているが欧米で入手するのはやや難しい
Bryton Gardia R300もMagene L508もペーパースペック上は非常に魅力的ですね。しかしDC Rainmaker氏の記事にあるように、ランタイムを長くしたいあまりセンサー回りへの電力供給を減らしているのならフォールスネガティブ(誤判定)が発生しないかという懸念はあり、ミッションクリティカルな製品であるだけにやはり気になるところですね。
逆に精度・信頼性が高い製品群ならGarminにとっては大きい脅威になりますね。類似スペックのVariaより1〜1.5万円ほど安い製品になります。
Garminは2015年にiKubuからBacktrackerを買収しています。その際にサイクリングレーダー関連の特許を取得したと思われるのですが、それらの特許の大部分はDuane Klausという個人が2001年に取得したより大きい特許に依存しており、その特許が切れたのが2021年9月28日とのこと。いまになって次々にVariaの競合製品が出てきたのはそういう背景もあるのでしょうか。