サイクリストと自動車ドライバーとの諍い報告は世界中で絶えることがありません。海外掲示板を眺めていてもクルマ関連のトラブルは毎日必ず目にしますし、基本的に不毛な話題なのでよほど興味深い内容でなければスルーするのですが、今回は少し面白い話が含まれていたのでご紹介。
出典 Hate from motorists(ドライバーからの憎悪)
米国の危険ドライバーから攻撃性を奪う魔法
まずスレ主さんは次のように投稿しました。
一体ここはどうなっているんですか。私はパートナーと一緒に13ヶ月前から自転車旅行していて、アルゼンチンを抜けて今はバハ・カリフォルニアのアメリカ国境南にいます。私達は英国からやって来ました。アメリカは初めてなのですが、先週は3回、向こうからやってくるアメリカのドライバーが窓の外に手を出して中指を立ててきました。ある時は「バカな○○野郎どめも」と叫ばれました。3回とも、相手は大型ピックアップに乗った白人の中年男性でしたが、私達を追い抜い抜くのではなく、向こうから来るクルマでした。道はとても広く、路肩も広く、交通量も少なかったのです。まるで私達は存在しているだけで憎まれているようでした。アメリカ合衆国のサイクリストはこういう行動をどう思っているのでしょうか、こうしたいわれのない攻撃は日常茶飯事なのでしょうか? いったいどうしたら、これほどのネガティヴィティ(=否定)に対処できるのでしょうか? 99%の人々は嬉しそうに私達に手を振ってくれるのですが、この少数の人々に本当に腹が立つのです。
ちょっと気の毒な話ですね。しかしスレ主さんの出身地である英国でもクルマとサイクリストとの対立や揉め事がすごいと聞いていたのですが(例えばroad.ccという英国の自転車メディアはそれがサイトの主力コンテンツになっている)、それ以上にアメリカはひどいのか(まだバハ・カリフォルニアなので合衆国には入っていないようですが)。
これに対して寄せられたコメントの中で、個人的にとても面白かったのが以下。
- それがアメリカです、ピックアップ・トラックの中は自分に特別な権利があると思いこんでいる臆病者でいっぱいです。あなたの言う通り、彼らは少数派です。私は自分に「傷付いた人々は他人を傷付けるものだ」と言い聞かせ、なだめています。ひとつ役に立つことを言うと、私はアメリカ海兵隊のジャージを着ているのですが(従軍経験はありません)、これを着るようになってからピックアップ・トラックが不思議と速度を落としてくれるようになりました。試してみては?
- 愛国的なジャージもいいと聞いたことがあります
- 自転車が好きな人はリベラルなXXXXであり、石油が嫌いなんだろう、と思われています。そして石油が嫌いならテロリストが好きなんだろう!というわけです。まぁ冗談ですが、多くのアメリカ人はそんなふうに考えます…
- 自転車にアメリカ国旗を付けて安全旗として使うと良い、と聞いたことがあります。棒に取り付ける30cmくらいの旗で、自転車の左側に垂直に、道路側に立てます。すると頭に血がのぼっているドライバーも、愛国者仲間に怒鳴ったりはしにくくなります
- アメリカ国旗のように見えるジャージを着るといいですよ。私はキャノンデールの赤・白・青のジャージを着ていますが、ディーゼルのピックアップに嫌がらせを受けることが大幅に減りました。星条旗は「俺はサイクリストだ、でもアメリカンでもあるんだぞ」と言っているようなものです
ステレオタイプは当然入っているかもしれませんが、リフトアップした大型ピックアップ・トラックでサイクリストを煽ったり憎悪を表明してくるのは右派であり、共和党支持者だろう、という前提があるようです。トランプ支持者で、かつガソリンの使用を抑制させようとする地球温暖化説などは絶対に認められない人々。自転車はエコ。環境に優しいサイクリストは敵!
そう思っている(?)ドライバーに対して「お〜い、俺も仲間だ!アメリカ万歳!」というメッセージを伝えるために軍関係者っぽいデザインのジャージ、星条旗モチーフのジャージや旗は有効、というのは面白いですね。合衆国では従軍経験のある人も現役軍人も、非常に尊敬されると聞きます(リベラルからの反応は別です)。
読者の方がいつかアメリカ横断サイクリングにチャレンジする時はそれっぽいデザインのジャージを試してみてはどうでしょうか。
ちょっといい話
上の星条旗モチーフ・軍モチーフジャージのおまじない効果も面白かったのですが、このスレッドにはもう1つ「ちょっといい話」が含まれていたので、それもご紹介します。
いつもそう(=ピックアップに乗っている人達がサイクリストを憎んでいる)とは限らないですよ。私の友達が、コンチネンタル・ディバイド(メキシコ〜カナダ間の約3,100マイルに及ぶアメリカ合衆国の国立自然トレイル)を自転車で旅していました。彼はモンタナで峠道を登っていました。
彼はリフトアップしたフルサイズの四輪駆動ピックアップが後ろから爆音を上げて迫ってくる音を聞きました。泥だらけのタイヤが舗装路で唸り声をあげています。彼は最悪の事態を想像し、恐怖しました。
そのトラックは通りがかりに速度を落とし、中にいた2人の若い男は、彼にむかって「ホーホー」と動物のような鳴き声を発しました。そしてそのまま坂道を登っていきました。
私の友達が頂上に辿り着くと、彼は道路脇に、丁寧に置かれた1缶の冷たいビールを発見しました。クルマの男たちが、頂上に辿り着いたご褒美として置いていってくれたのです。そのビールは美味しかったそうですw
一見怖そうな人達と思っても、必ずしもそうじゃないからね、というエピソードですね。他にも、アメリカと言っても広いので、ひどいドライバーは勿論いるけれども98%くらいは良い人達だから幻滅しないで走り続けてほしい、という応援のコメントが多く寄せられていました。同じ州でも地域によって全然違うのだそうです。