自転車キャンプをするにあたって自分に必要な装備は何なのかーー。自転車キャンパーとしてはまだまだ経験が浅いながらも、筆者のこれまでの思考過程や悩み事、気付いたことなどを振り返ってみた記事です。
特定の考え方を推奨するものではなく、私個人は大体こんなふうに辿ってきたかな? という記録です(時系列は若干前後があるかもしれません)。自分に合った装備や方法論は百人百様、同じ人でも毎回違うはず。自転車同様、それがキャンプ・旅のおもしろいところだと思います。あくまで一例としてお読みいただければ幸いです。
Stage 1 はじめてのお泊り
- 激安テント買った。激安寝袋買った。これでとりあえず凍死することはないだろう。よし自転車キャンプ行こう!
- いや待て。この荷物はサドルバッグに入らない。バックパックに入れるか…
- バックパックでも無理だ。よしパニアバッグを導入しよう、リアラック付けよう!
- キャンプ来た! 自転車重かった! テント張れた! 夜ごはんはお菓子だけ! でも楽しい
- 寝るか。背中痛ィィッ! 地面ってこんなにゴツゴツしているのか。寝袋の下には敷くものがいるんだな
- 雨降ってきた! いい音! でもなんだか背中冷たい… そうかテントの下にも敷くものがいるのかもしれない
▼ 「テントの下に敷くもの」も付いてくるやつ
Stage 2 反省・改善・新しい欲求
- 寝袋の下に敷く「クローズドセルマット」というのを買ったぞ。新しいテントには「グランドシート」も付いていた。お湯を沸かす鍋みたいなやつとガスストーブを持っていこう。今度はあったかいラーメン食う。よしまたキャンプ行こう!
- 山道に迷いこんだらマットが枝にひっかかった! 道が狭いとパニアもひっかかることがあるんだな…
- 次はパニアをやめて、大型シートパックとフォークパック、フレームバッグにしてみるか。流行りのバイクパッキングスタイルだ!
- するとクローズドセルマットは運びにくいからエアマットにしよう。小さいから運びやすいな…
- あったかいラーメンうまい! でもガスの火にはロマンがない。俺が求めているのは大自然だ。自然の火を扱いたい。ホモ・サピエンスの遠い記憶を呼び覚ますんだ。よし次は焚き火台と防火シートだ…
Stage 3 キャンプ用品沼
- よく眠れないのは枕がないからだろうか。そういえば空気で膨らむ枕をAmazonで見た気がする。枕なんかいらないだろうと思っていた
- 眠れないから次はウイスキーも持参しよう。でも小瓶はガラスで重いし割れるかもしれない。そうかフラスクというのを買えばいいのか
- 眠れないから本を読みたい。この登山用ヘッドランプだと少し暗いな… よし自転車用ライトをランタンシェードに入れてみよう
- マットを敷いているのに地面にどんどん熱を奪われる。死ぬ。よし帰ったらダウンパンツとテントシューズ買おう
- 焚き火であたたまろう。でも、薪が太すぎてなかなか燃えないな。そうか、だからナイフで薪を割っている人がいるのか。バトニング、という言葉を聞いたことがある。ナイフが欲しいなんて思ったことはこれまでなかった。最初はどれがいいんだろう?
- 荷物が増えてきた。スタッフバッグで圧縮するか。ただの圧縮袋では固くて丸いボールになるだけだから、スペースが無駄になる。エア抜き付きが板っぽくも圧縮できて便利だな
- 装備が充実してきたのは良いけれど、走行感が重くなってきた。一気に軽量化するならテントと寝袋だ。合計で… じゅっ、10万円!?
- バトニングナイフでは肉も野菜もうまく切れやしない。食材の切り口は食感に影響する。薄い調理用ナイフが必要だ。まな板が必要だ。ウルトラライトなテーブルも必要だ
- 一度にもっとたくさん水を汲んできたい。水場との往復たいへん。たくさん入るボトルかウォーターパックみたいなものがあるといいのか…
- 石や木に座っていると尻が痛い。軽量な折りたたみ椅子… そうかヘリノックスを持ってくるか
- ひえっこんな時に豪雨が! 火が消える、椅子が濡れる! そういや昼は暑かった! あれなんていうんだっけ、ひらべったい布の屋根みたいなやつ。サバイバル登山家が使っているのを動画で見た。タープ… あれがあれば自転車も濡らさなくて済むぞ
Stage 4 反動で一気に質素なキャンプに
- ピロー置いてきたけど、セルマットの上を2回折り返せば枕がなくても済むんだな。さらにウェアを重ねて置くと十分枕がわりになるかもしれない
- テントシューズ置いてきたけど、オルトリーブの防水パニアバッグに足を突っ込むと空気がたまってあったかいんだ…
- 今日はリアパニア2個で来た。普通に走るぶんには問題ないけれど、激坂で後ろに引っ張られた。バッグが増えて重量増になっても、フロントパニアも使って荷重分散したほうが今日は疲れにくかったのかもしれないな
- バフって吸水性も良いしすぐに乾くのがいいな。フェイスマスクにもタオルにも、テントの露拭きにも使えてなんて便利なんだ
- 今日は焚き火はしない。あれこれやらないキャンプものんびりしていて、いいものだ。夕食は水で戻したコールドソークのリゾッタとナッツ。温まらないけれど、空腹は満たせる
- ザトウムシが足元を歩いている。キャンプをはじめたばかりの頃は虫が苦手だったけれど今なら少し愛でられるようになった…
- 俺、何でこんなことをやっているんだろう…でもやっぱりキャンプは楽しい。今回は軽装備だったから、次は自転車グランピングでも挑戦してみるか!
あとがき
この記事で主に伝えたかったことは、自転車キャンプというと実に多くの装備と知識が必要で、ハードルが高いのではないか、と思われている方がいるとしたら、Stage 1のような最小限の装備でとにかくはじめて良いのではないか、ということです。いきなり焚き火も調理もしたいと思っても、揃えるものが増えて大変です。
あとは少しづつ自分なりの進化を遂げるということ。キャンツーを重ねるにつれて、今回は何が足りなかったのか、逆に何がいらなかったのか、次は何をしてみたいかが自ずとわかるようになり、その繰り返しでキャンプがより楽しくなるのだと思います。装備やノウハウを更新していく過程そのものもまた、キャンプの楽しさです(頭の中で計画するだけでもすごく楽しい)。
また、どのステージで経験したこともひとつとして無駄なものはなく、過去に不要と考えていたものが次回は必要になったり、その逆になったりすることも。その時々に応じて、次の旅に必要になりそうなものを過去の経験をたよりに選択していく。そこでの正解は、誰も与えてくれません。
本や情報サイトは、もちろん大いに参考になりますが、うまく行かなかったり自分には合わないこともあります。やってみたいなぁ、と思われた方は、とりあえず最小限の装備ではじめてみるのが吉ではないかと思います。
思考の大きい区分としては、
- 居住装備(テント・寝袋等)
- 調理系の装備(クッカーなど)
- それらを運搬する装備(パニアバッグやシートパック等のバッグ類)
- パッキングのスキルとノウハウ
に分けられるかもしれません。
手始めにあまり遠くないところで一泊してみると、次に必要なものと効率的な段取りは、自然に明らかになると思います。「今回の装備品リスト」を作って、次回の旅ではそのリストを洗練させる。その次ではまた改善する。それを繰り返す。
やってみてはじめて理解すること、身につくスキルが多いのです。例えば居住装備には、どれもポーチが付属しています。重量増になるから全部置いていこうかなと悩みますが、グランドシートが雨でびしょ濡れになっていた時はあー持ってきて良かった、ということも。圧縮袋を使ったら衣類もコンパクトになるかと思いきや、球体は平面充填できないのでむしろないほうが良い時も。
話が尽きないのでこのあたりで。ここまでお読みいただいた方、ありがとうございました。