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自転車キャンプで使う調理器具の素材は何がいい?【チタン・アルミ・鋳鉄の特徴】

自転車キャンプに持っていく調理器具(やかん・マグカップ・フライパン・鍋等)はどんな素材のものがよいのだろう? というテーマの記事です。自転車人ならつい「チタン一択じゃないの? だって軽いでしょ?」と思うのではないでしょうか(私がそうだった)。しかし実際にあれこれ使ってきた結果「適材適所だなぁ」と思ったので、私感をまとめてみます。

アルミのフライパン

魂は熱いがヒートアップしないクールな奴、それがチタンだ

まずチタンの調理器具(や食器)がダメかというと、そんなことはありません。やはり軽量ですし、登山系の人も軽量化する時はチタンを選ぶことが多いようです。軽さ、まずこれは確かな長所。

しかしチタンには他にも「火が直に当たっているところ以外は、あまり熱くならない」という特徴があります(これを「熱伝導率が低い」と呼ぶらしい)。

この特徴は、長所にも短所にもなります。例えばチタンのマグカップの場合、直火で熱してもわりとすぐに、縁に口を付けて飲むことができます(火傷しないように確認はしましょう)。器具全体がアツアツに熱せられるわけではないからです。これがアルミやステンレスだと、熱湯を外から入れたり湯を沸かしたりすると容器全体もすぐ激アツになってしまい、すぐに口は付けられません。

チタンのマグカップ

チタンのこの「熱伝導率の低さ」は、短所にもなります。火が当たっているところは熱せられるけれども、熱がそれ以外のところに波及しにくいので、多めのお湯を沸かす時は少し時間がかかるわけです(ただ、個人的には不便なほど遅くは感じないのですけれども)。

チタンのシエラカップ

チタンのシエラカップで、下の写真のようにラーメンを茹でるとします。できあがると、フーフーすればすぐにスープを飲めます。

チタンのシエラカップ

調理器具としても食器としても、チタンは十分「あり」だと思います。しかし「火が当たっているところ以外は熱くなりにくい」ため、焼き物をすると焼きムラが出てうまくいかないのは大きい短所。炒めやグリルには向かない。お湯を沸かすなら、OKかなと。あと自転車パーツ同様、お値段はやや高め(ただしチタン製品は有名ブランドでなくとも「はずれ」は少ない印象は受けます)。

熱しやすく冷めやすい情熱家、それがアルミだ

アルミ(やステンレス素材)はどうでしょうか。これもチタンほどでないものの、まあまあ軽量です。チタンと違うところは、熱がガーッと器具全体に一気に波及するので、お湯などはかなりはやく湧くところです(これを「熱伝導率が高い」と言う)。

アルミのケトル

お湯を沸かすのには特に良いものかなと感じます。

アルミのケトル

しかし料理に向くかどうかは、使い方次第。すぐアツアツになるので、料理がすぐできあがる…のは長所ですが、下のようにアルミのフライパンでラーメンを作った場合、スープを飲もうとすぐに口を付けるとチタンと違って火傷しそうになります。「食器としても」使おうとすると難しいところがあります(料理をどんぶりやボウルに移せばそれで解決しますけれども)。

アルミのフライパン

そして調理時の火加減が難しい。火が強すぎると、お湯がすぐ蒸発しそうになります(下の写真でゴボゴボと泡が湧いているのが見えますが、これは火が強すぎて失敗している状態)。水の量を多めにしたり、火を小さくしたり、目を離さない、など気をつけることが出てきます。

アルミのフライパン

焼き物も、油断していると下のようにすぐ焦げてしまうことがあります。しかしこれは使う人の腕次第という感じです。慣れたら便利。あとチタンだと均一に火が通らないので、「何か焼く」ならアルミかステンレスが便利かなと感じます。ちなみに「底面だけ熱伝導性の高いアルミ、それ以外は軽量なチタン」という構造の鍋やフライパンも存在します(さすがだ!)。

価格がお手頃なのもアルミの良いところですね。調理器具としては「軽さと扱いやすさのバランスが取れている万能選手」といったところでしょうか(次に紹介する鋳鉄に比べると冷えやすいという短所はあります。熱しやすく冷めやすい情熱家…それがアルミだ!)。

熱しやすく冷めやすいなら、ラーメンのスープもすぐ飲めるのでは? と思えるかもしれませんが、アツアツのスープが中に入っている状態だとその熱が容器にガンガン伝わり続けます。ソーセージなどは、焼き終わるとフライパンの熱は外気に移動して器具はわりとすぐ冷えます。

これ以上は熱力学の深遠な世界になり、筆者の貧弱な語彙では説明できないのでこの記事では深堀りしません!

体重と引き換えに究極能力を手に入れた奴、それが鋳鉄だ

最後に「鋳鉄」を考察します。これは、調理の性能面では抜群に素晴らしい素材だと思います。全体がゆっくりと熱くなっていって、冷えていくのもゆっくり(冷めにくい)。だから料理が焦げついて失敗することも少なく、余熱で調理することもできます(ちなみに鍋物をつくる日本の鉄なべも鋳鉄)。

鋳鉄のスキレット

ぶ厚い塊肉でも、弱火で熱した鋳鉄のスキレットに置いておくだけで中まで火が通ります(時間はかかるけれど)。上の写真のようなアヒージョを作るのにも良いですし、ローストにもグリルにも良し。焚き火をするなら、熾火の端っこに置いておくだけで失敗することがほとんどありません。

鋳鉄のスキレット

では鋳鉄の短所は何か。それは「メッチャ重い!」ということ。直上の写真のスキレット(=鋳鉄のフライパン)は、キャプテンスタッグの18cm深鍋タイプで、これは本当に使いやすくて私は家ではよく使うのですが、重さが1.1kgもあるので(戦車か)自転車キャンプには持っていきません(持っていきたいけれど、他に荷物があるので諦めています)。

10cmのミニサイズのスキレット(アヒージョを作るのに便利)でも、やはり自宅で活躍しているキャプテンスタッグ製品で実測424g。ずっしりと重いのです。

この重さ故に、私は自転車キャンプには鋳鉄のスキレットもダッチオーブンも持っていきません。

「自転車キャンプで何を重視するか」という価値観によって、鋳鉄の評価は大きく変わってくるでしょう。

というのも、私は写真を撮るのが好きなのでカメラやレンズを自転車旅に持っていくのですが、それらは1kgを超える装備です。カメラに興味はないけれど、キャンプ地では美味しいキャンプ飯を楽しみたい、料理も趣味だ、という方であれば、1kgのスキレットを持っていくのは全然アリな選択でしょう。というか、アリ寄りのアリでしょう。

また調理においては「重さ」が有利に働くこともあります。焚き火の上で安定します(倒れにくい・中身がこぼれにくい)。その意味では、鋳鉄製品の重さは必ずしも欠点とは言えなかったりもします(自転車の立派なセンタースタンドにも、そういうところがありますね)。

Surly Big Dummyのようなカーゴバイクに乗っている方なら、鋳鉄の調理器具を持っていくのはアリじゃないですか。結局はどんな自転車キャンプ・自転車旅を楽しむか次第、と言えましょう。また、実際に使ってみないと素材の特性や長短はわかりにくいと思うので、まず安いものでいろいろ試してみるのが良いのではないでしょうか。失敗もキャンプ・旅の楽しみのうちです。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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