カーボンフレームのトップチューブに座っても強度的に問題はないのだろうか? ごく普通に見られる光景だけれど… という素朴な疑問に対し、米国の伝説的な自転車メカニックLennard Zinn氏がVeloNewsにて面白い回答をしているのでご紹介します。
出典 Zinn technical FAQ: Sitting on carbon top tube, through-axle security, hill gradients
専門家による一致した見解は?
読者から次のような質問が寄せられていました。
カーボンフレームのチューブをメンテナンススタンドでクランプしてはいけないことは、私達は皆知っているわけですが、カーボンフレームのトップチューブに座ることについて、自転車メーカーの見解はどのようなものになっているでしょうか?
地元のクラブライドで赤信号で停まる時や、レース後のライダーを見ていても、多くの人がカーボンのトップチューブにお尻で座っているのを見かけるのですが
Zinn氏はこれを「素晴らしい質問だ、私も是非知りたい」と思い、複数のカーボンフレームメーカーやカーボンフレームのリペア業者に問い合わせてみたそうです。すると寄せられた回答がバラバラであることが判明しました。
- 薄いチューブにダメージを与えるような鋭利な物がポケットに入っていない限り、トップチューブに座っても問題はないでしょう。極度に集中した応力が問題なのです – Chris Cocalis, Pivot Cycles
- これは私達は全然おすすめしない行為です、特にロードバイクでは。トップチューブに座る時の力は、通常のライド条件における力の規模や方向を超えるものであり、ダメージになることがあります。よく見る症状です。トップチューブには座らないようにとシールを貼っているメーカーもあります。軽量なロードバイクのトップチューブは1mmほどの厚さのものがあり、手で簡単に曲げられるくらいですから – Brady Kappius, Broken Carbon(カーボンリペア業)
- トップチューブに座るのはサイクリストにとって普通の行為です。しかしライダーがそうした後にトップチューブにヒビが入ってしまい、複数メーカーのフレームを修理したことがあります。これはメーカーの保証によってカバーされませんでした。これらのフレームは楕円形のチューブだったように記憶しています。楕円の平面側への負荷はうまくいなせないのかもしれません – Craig Calfee, Calfee Design, Inc.
- トップチューブは座るために作られているものではありませんが、座っても大丈夫なくらいの強度はあります。普通の使い方ではないですけれども – Ryan Cannizzaro, Alchemy Bikes
- スペシャライズドでは、ライダーがトップチューブに座ったことによる問題は確認していません。しかし、どのような状況でもカーボンフレームをワークスタンドでクランプすべきでないという点については完全に同意します – Mark Schroeder, Specialized
カーボン修理専門業の方よると「やはりやめたほうがいい」。一方スペシャライズドのエンジニアリング・ダイレクターの方によると「問題ない」。というふうに、全員が納得できるコンセンサスのようなものは存在しないようです。
その上でZinn氏は「トップチューブに腰掛けないで済むのなら、しないようにする。特に超軽量なカーボンロードフレームでトップチューブが楕円形なら、避ける。私の考えでは、MTBのカーボンフレーム、特にトップチューブにショックマウントがあるようなタイプは十分に厚みがあるだろうから心配は少ないと思う」と締めています。
元記事でアイキャッチに使用されている画像はFactor O2 VAMかOSTRO VAMと思われるのですが、調べるとFACTORのバイクには”DO NOT SIT ON TOP TUBE – WARNING”というデカール付きで出荷されているものがやはりあるようですね。
近年の丈夫そうなエアロロード・オールラウンドロードなら問題ないのかもしれませんが、登りに特化したデリケートな見た目の超軽量カーボンフレームではやめておいたほうが良さそうです。