クロモリロードと一言で言っても、乗る人の好みや価値観は多様なためその楽しみ方やスタイルは多岐にわたります。
もちろんロードバイクと言うからには走ることによって得られる満足感が最上の喜びになるはずなので、走りに最も適したウエアやシューズが求められます。
しかし、その加減が難しいのです。
というのは、「走り出したらサイコンをストップするまで足を着かない」というストイックな時もあれば、「今日のライドのお昼は前から狙っていた『にゃんこ定食』のぼりのあるあのお店に行こう」という飯屋狙いの時もありますし、売っているタイミングになかなか出会えないトコロテンの無人販売所をチェックしに行くときもあります。
また、「久しぶりに一眼を持っていつもは(アベレージ維持のため)停まれなかったあそこの景色を撮りに行こう」という時もあるのです。
レーサールックで無くてもいいし、もっとカジュアルな感じで走りたい。でもある程度走りをスポイルしない機能を持った物にしたい。と思う時に私が参考にしたのがランドナーや旧車(70年代のロードレーサー)乗りのファッションでした。
オールドファッションと言ってしまえばそれまでですが、これがどうしてなかなか使えるのです。
それでは、経験の少ない中で選んだので極普通のものしかありませんが一例として紹介したいと思います。
ペダルはトゥクリップタイプがいい!
ロードバイクと言えばシマノのSPD-SLに代表されるペダリングに特化したペダルが当たり前になってきましたが、対応するクリートを付けたシューズではコンビニくらいの歩行ならばおおむね許容範囲といっても、観光地の散策やバイクトラブル時の押し歩きは辛いところがあります。
その点、歩行機能を考慮したシューズが使用できるSPDペダルは大変便利です。ペダルの空気抵抗やトルク伝達などそんなこと大した事ないと思える大人なホビーサイクリストの方には欠かせないペダルで、サイクリング中に遭遇する様々なシチュエーションでとっても重宝します。
しかし、もっとイージーマインドで走りたいという方、絶えず革新される気ぜわしい流行から離れて、古のロードレーサーを味わい深く楽しみたいという落ち着いた方にはなによりもトゥクリップペダルです。
参考 トゥクリップのメリット
儀式的な動き
とは言え、誰でも簡単にできるワンアクションでの固定とリリースの可能なビンディングペダルとは違い手順というか儀式的な動きが必要となります。
モーターバイクに例えれば、セル一発で始動するような今では一般的なエンジンスタートに対して、チョークを引きデコンプを開きピストン位置を探りながら全体重を載せてキックレバーを踏み下ろすようなものです。
面倒と思うか、カッコ悪いと思うか、はたまたカッコよさにシビレルかは貴方しだいです。
いままで使ったことのない方にザッと説明しますとだいたい下記のような感じです。
- トゥクリップの重さで反転したペダルを上向きにするため、靴底でペダル後方の三角形の突起を引っ掛けて回します
- シューズをトゥストラップの間に滑り込ませトゥクリップの先端まで捩じ込みます
- ペダルを上死点に止めて素早くトゥストラップの先端を引いてシューズがペダルと一体になるように締め上げます
- 信号待ちなどで停車する際には減速状態でペダルを上死点で止めて、トゥストラップのバックルを緩めシューズの締め付けを緩めます
ビンディングペダルと違い咄嗟に外れませんので、これを忘れると間違いなく黒い思い出になってしまいますので注意が必要です。
トゥクリップ対応ペダル
さてトゥクリップが装着可能でフラットソールのシューズが使いやすいペダルとしては次の物を使っています。
まずトゥクリップ使用前提のペダルですから軽量です。見ただけでは踏み面の突起が小さいように思えますがフラットソールシューズでもストレス無く使用できています。
改良型の踏み面の広くなったGR-10も良さそうです。
側板がU字型になっているので幅の広い靴でも安定して踏めます、カッコの良いシルヴァン系はU型側板にギザギザの無いロードクリート対応のタイプしかないのが残念です。
両面踏み仕様なためペダルを反転させる突起が有りませんのでスピンという三角形のアクセサリーパーツを付けると楽です。
ベアリングキャップも雰囲気の良いアルミ製でオールドカンパと工具が共有出来ます。
もう説明の必要がないくらいに定番中の定番です。
ただクリート使用が前提になっていますので側板にギザギザがありません。フラットソールシューズでも使用できますが靴底が濡れていたり泥が付いていると抜けやすくなります。
画像のクリートは3穴タイプのシューズに装着可能です。
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トゥクリップとストラップ
ノーマルタイプは細身のサイクルシューズ用なので、スニーカー等ではディープタイプを選んだほうが良いです。
参考までに履いているのは26.0cmのシューズですがトゥクリップは L サイズでちょうどよい感じです。
参考 トゥクリップの選び方
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ナイロン製で気兼ねなく使用できて、しかも明るい色が揃っているところが嬉しいです。
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革製ですので雰囲気がよく、また価格が安くていいです。
シューズはフラットソールがいい!
踏み面にピンの生えた幅の広いフラットペダルであれば快適に使えるシューズの範囲も広いのですが、トゥクリップを使うペダルの場合は踏み面の幅や滑り止めの突起の大きさなどから現在はほどんど入手できないトラッドなサイクルシューズが最適に思われがちです。
しかし意外にもフラットソールのシューズが快適に使えます。
かえってジョギングシューズのようなソールのカーブした物はペダルの踏み面と合わず一体感が乏しいですし、一見滑りにくそうなソールパターンも実はペダルをグリップしてくれずズレやすかったりします。
VANS BADJERとCHROME TURK
トリック系で定評の高いワッフルソールのVANS(ヴァンズ)はフラットペダルはもちろんトゥクリップ対応ペダルでも滑りにくく使いやすいですし、ソールに樹脂系シャンクが使われているCHROME(クローム)サイクルシューズも同じように快適にペダリングできます。
VANSのワッフルソールのグリップ感は定評通りです、またこのモデルは紐タイプでなくベルクロストラップなのでチェーンへの巻き込みを気にすることもなくペダリング出来ます。
CHROME TURK 2019のソールにはグラスファイバー製シャンクが入ってソールが若干固めになっていますので疲れにくい感じがします。
かといってVANSと曲げ比べてもあまり変わらない感じなので歩きにも全く問題ありません。
カスクは軽い!便利!
安全性ではハードシェルにスチレンフォームの緩衝材を持ったヘルメットの方が優れていますが、何も被らないよりはカスクを使用したほうが安全です。としか言いようが無いのですが、実際カスクは一種のプロテクターなので被った感じもなんとなく頼りなげです。
ですのでカスクの時は余裕を持って安全運転に努めましょう。
実のところはいつでもどこでもヘルメット!というのが一番でしょうが、乗るバイクや走行シーンを加味して使い分けてます。
また、カスクは畳んでジャージの背面ポケットに入れれるのでバイクを離れる時も便利なのです。
(ちなみに雑用に使っているウエルビー運搬自転車に乗る時は頭タオルです)
rinprojectとPOI DESIGNSのカスク
言わずと知れた「こころ旅」でおなじみのrinprojectのカスクです。とても軽量でコンパクトに収納できます。
POI DESIGNSのこの製品はMTBやトリック系ライダーが使用するボディプロテクターの衝撃吸収素材を使ってネオプレーン生地でカスクにしたものです。
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rinprojectと比べると衝撃吸収材の内側に更にクッション材を入れてあるので重めになっています。また衝撃吸収材の硬さも比較的硬めなので頭へのしっかりとしたフィット感があります。
ネットで見る限りはこのrinproject(リンプロジェクト)とPOI DESIGNS(ピーオーアイデザイン)の二点しか見当たりませんのでどうか末長く作り続けて欲しいものです。
ウエアはさりげなく風を感じて
ロードバイクと言えばレーパン・ジャージがお決まりになった昨今です。少し前まではピッチピチなウエアに気恥ずかしい雰囲気も有ったのですが今ではすっかり慣れてしまい、逆に普段着で乗ると超初心者扱いされて温かい目で見られるようになりました。
他のスポーツを見てもそれなりのウエアを着ていないと様にならないどころか認めてもらえないのが普通です。
買い物に行くような普段着で歩かずに一生懸命走っていると、ジョギングではなく単に急いでる人になってしまいますし、スイムウエアを着ずにパンツ一枚で泳いでいたら変人扱いかおまわりさんを呼ばれてしまいます。
このようにウエアでその人の行為を理解できるというのはすぐに安心が得られるのでお互いのために良いことだと思います。
そのような世間にあってちょっと思い出して頂きたいのがカフェレーサー文化です。
ジーンズを履いてレーサーレプリカを駆ってカフェに乗り付けるあのスタイルで、トップガンのGPZ900Rに跨るあのトム・クルーズの姿を思い出す人も多いと思います。
GPマシンと同じカラーリングにヘルメットや革ツナギのレーサースタイルもカッコイイですが街乗りでは気負やらなにやらの窮屈さを感じるのも確かですのでモータサイクリストはTPOで服装も使い分けています。
ロードバイクのウエアはペダリングを妨げないよう、風の抵抗を最小限にするように形状や素材が進化したものです。
そこで敢えてさりげない雰囲気で、良く言えば「風を感じるウエア」を使ってみるとどういう事になるでしょうか、「平地で30㎞/h以下になることは許せん!」「アベレージで25㎞/hを下回るならばバイクを降りよ!」とロードバイクウエアに身を包んだ自分を責め立てる自虐から開放されるのです。
攻めと開放を使い分けるのも長くバイクライフを楽しむコツだと思いますので、ウエアで気分を変えてみるのも良いです。
ごく普通の地味なポロシャツと七分丈パンツですがサイクル用に作られていますのでとても使いやすいものです。
しっかりした鹿の子生地で案外ポロシャツの襟がバタつかず快適です、袖のポケットや背面のポケットも下すぎず邪魔になることもありません。
最初はレーパンと比べてしまうので膝に当たる部分と腰のフィット感が気になりますが、ペダリングには特に影響がないのですぐに違和感は消えてしまいます。
お腹側は低めで後ろの腰は高めの裁断になっており窮屈さと背中の縁切れ感は有りません。また、カーゴタイプの側面ポケットも使いやすいです。
パッドが付いていないのでサドルによってはパッド付きインナーがあるといいかもしれません、お尻が二重になっていて破れにくくストレッチ性のある生地なので長く使えます。
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サドルは革製が一番
鉄フレームに張った革サドルは重いです、500g以上あります。
いったいフレームから250g削るためにどれだけのテクノロジーとコストがかかるでしょうか、それをあっさりと、しかもダンシングで一番振られるサドルに重しを付けるような訳ですからたいていの選択肢から外れているのも仕方ありません。
では、この手のサドルのメリットはなんでしょう、よく言われるのは重さに目を瞑るほどの快適性なのですが実際には最初は硬いです。革が馴染んでくるまで我慢できずに普通のサドルに戻したくなるでしょうし実際そのような話も多いです。
お尻に馴染んでくると他の素材では無いフィット感が現れてきますので快適さはかなり増してきます。しかし、革なのである程度の硬さはなくなりません。ウレタンやスポンジの入った柔らかいサドルのような期待は無駄になってしまいます。
その他はやっぱり雰囲気でしょう、味わいというか自分に馴染んできた物だけが持つ愛着と自慢でしょう。
B17 STANDARDはもっともスタンダードな革サドルです。革もすぐ馴染む硬さなので使いやすさも定評があります。
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プロフェッショナルはB17よりは硬めの革でよりハードユース向きです。サイドのデザインもより軽快な感じにカットされています。
SELLE ITALIA STORICAは三枚の革を貼り合わせて耐久性を持たせたという復刻版です。BROOKSと比べてロードバイクサドルに近い形状なのでデザイン的に合わせやすいと思います。
BROOKS フライヤークラスサドルはB17にスプリングを足したような物です。
おまけにキャラダイスのバッグを一つ
もしカメラや野点セットにお弁当など少々の荷物を持ちたい時などは、ランドナーのようにフロントバッグを付けても良いですが、ロードバイクの雰囲気を壊さないよう、あるいはハンドル周りに荷重することは避けたいとなるとサドルバッグが選択肢となります。
雰囲気と使い勝手でキャラダイス(Super C Audaxサドルバッグ)を使ってみました。
サドルやサポーターにベルトで装着するようになっていますが、付属の木製丸棒とタイラップを使ってクイックリリース対応バックルを付けることが出来るようになっているので、バッグマンも一緒に購入するといいです。
クイックリリース一体のサポートをサドルレールに取り付ければワンタッチで脱着できてバッグの下がりや横ずれの心配が有りません。
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「爽快さ」は個人的な感覚
5s時代のクロモリロードにはトゥクリップペダルと革サドルが付いています。
実は6sに換えてありますがそれでも現代の11sから見れば走らせるには不便なように思えます。
しかし、実際に使っているとそのバイクなりの性能を目一杯使って走らせる爽快さは高性能なバイクと比較しても遜色ありません。
なぜなら「爽快さ」という感覚はタイムや速度、アベレージ等の数値を抜きにして得られる極めて個人的な感覚だからです。
却って数値化された物差しを基準にして比較してしまうと、バイクから得られる実感そのものではなくバイクから得られる単純に比較可能な数値に固執してしまう恐れがあります。
以上なにやら走りを捨てたドロップアウト民の戯言のような感じになってしまいましたが、実際には古いロードバイクとそれに似合う気の抜けたウエアや小物で走っている人は競争やチャレンジを諦めた人かと言うとそれは早とちりです。
例えばGTroman(ロマン)という漫画をご存知でしょうか?一言で言えばあのエンスー的世界観だと思います。
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