クランカー(Klunker)は「オンボロ車」を意味する”Clunker”のヒッピー用語。
MTBという物がまだ無かった1970年初頭、サンフランシスコ郊外の山々を改造した古い頑丈な自転車で下る少々馬鹿げた遊びが流行りだしました。
その時に使われていたダウンヒル用改造実用自転車がクランカーと呼ばれていたのです。
そのダウンヒルレースでいつも表彰台を専有する主だったメンバー達がその後自前でフレームを作り、サンツアーやTA等のパーツを装着して初のMTBが発生したと言うことです。
そのメンバー達というのがオールドMTBマニアにはたまらないGary Fisher(ゲイリー・フィッシャー)やTom Ritchey(トム・リッチー)、Joe Breeze(ジョー・ブリーズ)等でした。
またMTBに乗りたくなったので クランカー(Klunker)バイクを組んでみることにしました。
26インチMTBを手放して後悔
実は20年以上連れ添ったMTBフレームを去年まで使っていた。
それは私が初めて買ったMTBでKuwahara製のカンチ受けのある頑丈なフレームだったが、26インチのホイールやタイヤやROCKSHOXにMANITOUという古めかしいサスペンションの補修パーツの入手が面倒になってきたのでついに手放したのだった。
しかし、今更ではあるがやはり26インチの腰下の収まり感は特別である、それに気づいたのはSURLY Cross-checkに43cタイヤを履かせて林道に行ったときであった。
たしかに700cは走破性が高い、しかしコーナーで路面を噛んでいるタイヤが遠い気がするのだ。
26インチと同じようにバンクしても腰が高くて妙に落ち着かない、それはまさに林道下りの楽しみが半分失われたようなものだった。
そこでやっと短足な私にはホイールが大きすぎた事に気づいたが、すでにフレームは手放してしまっていた。
自分を恨んでも仕方がない、また26インチのMTBを手に入れれば良いだけだと思ったが、しかし、無情なことに時代はすでに26インチを消し去っていた。
では、中古のマディフォックスか?いや、それならばオリジナルのスタンプジャンパーではないのか?いやいや、当時のパーツは揃わない、だから手放したんじゃないのか?と悶える日々の中で懐かしいMTBを眺めていた時だった。
嗚呼、ヘップバーンは永遠に可愛い…
「一度くらいビーチクルーザーを味わうのもMTB乗りとして必要なことだ」と訳の分からない言葉が浮かんだ。
そこでカンチレバーブレーキと6スピードの外装変速機が付いたSCHWINNを林道に持ち込んでみた。
楽しい!楽しいぞ!これだ!
なにせ林道専門だがMTB歴だけは長いのだ、持て余す性能はストレスになるだけだと知っている。
下りでブレーキをかけるのは俺の腕のせいじゃない、こいつをいたわるためだ!
楽しい中でも優しさが必要なのだ。ほら「優しくなければ生きていく資格がない」と言うじゃないか。
MTBとビーチクルーザーか…
そこでヤバイものを見てしまった。
クランカーとの出会い
居ても立ってもいられない。
「グズグズするな!今すぐクランカーフレームを手に入れるんだ!」と正体不明の至上命令が脳内に響き渡る。
早速届いたフレームの塗装を剥いで見る。
「いい具合だ…錆が美しい、チンケな薄い塗料の下で最上の錆が生まれているではないか、なにせクランカーと言えばラスティじゃないか」と歓喜する。
パーツの選定へ
クランカーと言えば一も二もなくゲイリーフィッシャーの1930年式SCHWINNビーチクルーザーをベースにしてスターメーアーチャーのドラムブレーキを付けたあれだろう。と足回りは決まった。
なにせこのフレームはクルーザーのためロングアーチの情けないブレーキ取り付け穴しか無いのだ。
変速はどうする?
CHAGEBIKESからCLEAVERというクランカースタイルの26インチバイクが出ているがそれの原型になったモデルがなかなかしびれる。
参考 CHARGE BIKES HBD – HACK BIKE DERBY KLUNKER
内装変速機でいいだろう、そもそも今時のディレイラーなんて似合わない。
クランクはどうする?
Gary Fisherにならって古臭いTAの5ピンクランクでも付けようかと考えていたところ、小倉自転車さんから「BMXのクロモリクランクがなかなか良いですね。」と至言を授かる。
そう、BMXも元はと言えばSCHWINNのキッズ用クルーザーから生まれた物だから、同じSCHWINNのビーチクルーザーを使ったクランカーバイクとは親子関係なのだし、26インチBMXというジャンルも有るくらいだから好都合ではないか。
68mmハンガーにアウトボードボトムブラケットを付けてプロファイルレーシングのクランクを付けることにする、スプロケット(チェーンリング)はツリーライトだ。
ちなみにシマノBB-5700にスパニッシュ用ベアリングを押し込めば19mmシャフトのクランクを使う事ができた。
ハンドルバーは当然ベロオレンジのクランカーバーで決まりだ。
納屋の隅で蜘蛛とボウフラの巣になっていた古いタイヤを洗って干すとまだ使えることがわかった。
さらにドロッパーの先祖であるhite-riteも付けてみた。
使ってみると走りながらサドルの上げ下げが可能なスグレモノだった、今のドロッパーは使ったことが無いがこれでもなんの不足もない。
クランカーバイク、完成
さあ、クランカーバイクの出来上がりだ。
90年代MTBにも劣る重い車体(16kgはある)、カンチブレーキよりマイルドなドラムブレーキ(効きがイマイチなのでゲイリーフィッシャーはオートバイ用のマグラ製レバーを使っていたくらいだ)、そして3×7速時代より変速域の狭い内装8sではあるが案の定楽しい。
林道を気持ちよくダウンクルージングするだけならロックセクションを駆け下りるロングストロークなフルサスペンションも大径ホイールも必要が無いので、基本的なハードテイルの26インチ鉄製MTBで十分だと思っている。
26インチディスクのこれもなかなか楽しそうである。
2018 SLEDGEHAMMER 26 – VOLUME BMX: Sledgehammer Klunker In Action
洒落を大事にしたい
バイクに限らず乗り物という物はより早く、より遠くへ、より効率良くを目指して発展し現在にいたっている。
しかし、これだけ多彩で境界も分からないくらいジャンルが広がったバイク界だから、別に早くなくてもいいし、なにせ遠くに行かないし、しかも汗だくで早く腹が減ったほうがいいから重くても構わないという洒落っ気のあるクランカー的バイクも有っていいと思ったので、あまり情報の無いMTBのご先祖様的オンボロバイクについて語ってみた次第である。
シャレっすよシャレ!w
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