シマノ製MTBコンポのDEOREから上のグレードにはクラッチ(チェーンスタビライザー)機構が搭載されていて、悪路でのチェーンのばたつきを抑えてくれます。ロード用のUltegra RXとグラベルロード用のGRXのリアディレイラーにもこのクラッチが搭載されています。
オフロード走行はもちろん、パリ〜ルーベのような石畳でもチェーンが暴れてチェーンステーをビシビシ叩いたりチェーンが外れたりといったことが少なくなります。少し重量増にはなりますが、悪路も走る人には便利な機能です。
さてこのクラッチ、中身はどうなっているんでしょうか。
いま使っていないSLXのリアディレイラー・RD-M7000が手元にあるので、分解して観察してみたいと思います。
SLX RD-M7000のクラッチの中身
これがそのSLX RD-M7000。11速モデルで、すでにシマノの公式サイトから姿を消しています。SLXは12速になり、型番もM7100になってしまいました。
「プレート体カバー」と呼ばれる、3つのボルトで留めてあるフタを開きます。工具は2mmのヘックスレンチです。すると中身はこんな感じ。これはクラッチOFFの状態で、板バネのようなパーツ(フリクションスリーブ)の先端が開いているのがわかります(「ひょうたん」の入り口のような部分です)。
ここでクラッチをONにすると… 先端がこんなふうに少し閉じます。外側の金属プレートが内側の回転体を摩擦力で強く締め付けることになり、この結果プーリーケージが手では動かなくなる、という仕組みです。
フリクションの調整
この締め付け具合は自分で調整することができます。フリクションユニットの隣にやはりM2のヘックスボルトがあるので、それを締めたり緩めたりします。長く使っているとこのボルトが緩んでくるらしいので、そういう時は締めなおすわけです。なおこの調整をする時はクラッチをOFFにしておきます。
下の写真は極端に締め上げてみた様子です。あまり締めすぎるとクラッチレバーがONで固定しにくい感じになるので、気をつけたほうが良いでしょう。何事もほどほどに。
どのくらいのフリクション設定になっているかを確認するには、クラッチをONにし、片手でフリクションユニットを押さえた状態で、もう片手で4mmのヘックスレンチをクラッチのまんなかの穴に入れて、反時計方向に回し上げます。プーリーケージを持ち上げるイメージです。
ただプーリーケージがどのくらい動くかは、上の確認方法だとうまく本体を押さえるのが難しいので、なかなかやりにくいです。その場合は下の写真のように、プーリーケージの左プレートにT30トルクスレンチが入る穴があるので、そこに差し込んでケージをグイッと持ち上げてみます。このほうがずっと楽にフリクションを確認できます。
非常に荒れた路面ではこうやって確認した時に動く量だけチェーンがばたつくことになります。構造を考えると少しずつゆるんでくるものなので、激しいライドをする方はたまにチェックすると良いでしょう。
調整自体に難しいところはまったくありません。
参考:microSHIFT ADVENTのクラッチとの違い
先日下の記事でmicroSHIFTのMTB用コンポADVENTを紹介しましたが、ADVENTのリアディレイラーのクラッチはシマノと構造が少し違うようです。
シマノの場合は上で見てきたようにワンウェイベアリングを板バネのようなものが外側から挟み込んで、その摩擦で固定する仕組みですが、ADVENTの場合はホイールのフリーボディーなどで採用されているラチェットと爪の仕組みを採用しています。
microSHIFTいわく、このほうがゆるみにくく調整ももっと簡単なのだそうです。実効性は定かではありませんが、これはご参考まで。
メンテナンス作業にはニトリルグローブがあると便利です。ツール缶に入れておくのもおすすめです。
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