コルナゴ「C」シリーズの価格と日本の給料相場を比べてみた

コルナゴのフラッグシップモデルとして長年君臨する「C」シリーズ。1989年のC35に始まり、現行は2018年のC64です。奇しくも平成の30年間にほぼ重なっています。

その間、Cシリーズの定価は上がる一方でした。一般的には市場経済の規模は年月と共に拡大するのだから、当然と言えば当然です。

しかし日本の会社員やパート従業員の給料はどうでしょう? Cシリーズの値上がりに見合うだけの上昇カーブを描けたのでしょうか?

真相を突き止めるべく、取材班(私1人w)は国会図書館に飛びました―。

国会図書館

日本人の給料は20年前に及ばず

まずは給料について。前段で「国会図書館に飛んだ」とか言っといてなんですが、これについてはネットでだいたい分かります。国税庁の「民間給与実態統計調査」というのがそれで、平成30年(2018年)分が最新版です。

以下で述べる「平均給与」は正社員だけでなく、派遣社員やアルバイト・パートの人も含んでの平均です。

ですが「年間を通じて同じ職場で働いた人」が調査対象のため「小遣い稼ぎにバイトを2カ月やっただけなので、この年の年収は20万円」といった人は除外されています。

同調査や当時~最近の報道内容を総合すると、平成元年(1989年)の平均給与は402万円でした。これが平成の底値です。

意外なことに、90年代初めのバブル崩壊後も上昇はおおむね続き、97年には467万円でピークを迎えます。しかしこの年にあったアジア通貨危機と消費税増税(3→5%)のせいか、翌年以降はほぼ下がり続けます。

わずかな持ち直しはあったものの、2008年にリーマン・ショックが起きたため、翌09年は平成2番目の低さの406万円でした。その後の上がり下がり(というか下がり上がり)を経て、最新数字の18年は441万円。いまだに20年前のピーク時とは開きがあります。正直、自分でもショックな結果が判明。。。

平均給料 (万円) 主な出来事
1989 402 平成スタート、消費税導入(3%)
1990 425
1991 447 バブル崩壊始まる
1992 455
1993 452 米の凶作と緊急輸入
1994 456
1995 457 阪神・淡路大震災
1996 460
1997 467 アジア通貨危機、消費税増税(5%)
1998 464
1999 461 銀行再編進む
2000 461
2001 454 アメリカでITバブル崩壊
2002 448 日韓共催サッカーW杯
2003 444 株価がバブル後最安値7607円
2004 439
2005 437 愛知万博(愛・地球博)
2006 435 ライブドア事件
2007 437
2008 430 リーマン・ショック
2009 406
2010 412 JAL破たん
2011 409 東日本大震災
2012 408
2013 414 東京五輪開催決定
2014 415 消費税増税(8%)
2015 420 堀北真希結婚
2016 422
2017 432
2018 440 日産ゴーン事件

コルナゴの値段は30年で2倍に

C35~40

今度はCシリーズの歴史です。コルナゴ公式サイトや雑誌「サイクルスポーツ」のバックナンバー(主にこのために国会図書館に行きました)によると、1989年の創業35周年を記念し、フェラーリとコラボした「C35」がシリーズの始まりです。

本稿でのバイクの歴史は発売開始年ではなく、コルナゴ公式サイトの記載に準拠して書いてます。要するにみなさまの記憶や記録と1年ぐらいズレててもそっとしといてね!!

ただしC35は生産台数を100台ほどに絞り、特別仕様の完成車として142万円で売り出したものです。レースマシンではなくコレクションアイテムというべきで、以降の価格比較からは除外します。

ちなみにCシリーズというとラグ成型のイメージが強いですが、C35はカーボンモノコックだそうです。ストレートフォークもこれが初だとか。

次は94年登場の「C40」。サイスポ95年1月号によると、フレーム価格は37万円(税込か税抜かは不明)。これが事実上の初代Cシリーズと言っていいでしょう。特徴は星型カーボンチューブとのこと。

余談ですが当時のサイスポは圧倒的にMTB推し、トライアスロン特集もあるなど今読み返すと新鮮でした。

ビアンキの〝フルサスロード〟(車種名は「パリ~ルーベ」)というびっくりマシンもあり、完成車で80万円。

C50~64

「C42」というバイクもあるみたいですが、アワーレコード用のトラックレーサーらしいので除外して、お次は04年のC50。

写真の通り、一気にデザインが現代風になります。これなら今でも欲しい…けどお値段は一気に上がって税込50万円(フレーム)。

そして10年には「C59」がリリースされます。

…あれ? 04年がC50なのに計算合わなくね?と資料を3度見したところ、イタリア建国(1861年)から150周年を祝ってのモデルなので、コルナゴの創業年とは関係ないもよう。

それにしたってなんで「59」なんでしょうね。とりあえずこれも除外。

本題に戻ると、正当後継車のC60が14年、最新作のC64が18年の発表です。

フレーム価格はC60のリムブレーキ仕様が66万5千円(税抜)。なおシートポストは別売りで2万5千円(税抜)。。。

C64はカラーで値段が変わりますが、最安のマットブラックなどが65万円、最高のアズーロ(青)などが69万8千円でした。いずれもリム仕様で税抜。

上記4台(C40,50,60,64)の価格を消費税込(税率は当時、C40は税込と仮定)にそろえ、C60はシートポストの価格を含めず、C64は最高値のカラーだとしてグラフ化すると、以下のようになります。

Colnago Cシリーズの価格推移

単純計算ですが、30年で価格は2倍になりました!!

給与は足踏み…でも富裕層の人数は世界3位

そして1コルナゴ(=Cシリーズ発表年の平均給料÷C40,50,60,64の価格)を算出してみました。

この指数は「平均的な勤め人の年収でCシリーズが何台買えるか」を示しています。

1994 2004 2014 2018
12.3 8.7 5.8 5.8

ごらんの通り、指数は一直線に下降。「現代で一般人がフラッグシップモデルのロードバイクに乗ることは、25年前の2倍難しくなった」と言えそうです。

どうしてこうなったか。

一つには、先進国で日本だけ賃金の伸びが「1人負け」していることが思い当たります。

経済協力開発機構(OECD)が1997~2018年の約20年分について、労働者の時間当たりの収入を各国通貨ベースで指数化したところ、先進国の中で日本だけがマイナスになったそうです(昨年8月29日付の東京新聞より。リンク先にグラフあり)。

Cシリーズはイタリア生産ですから、現地の人件費がぐいぐい伸びれば、日本の給与相場が足踏みしてようとも価格設定に跳ね返ることでしょう。

もう一つは「どんなに高額でもお金持ちなら買える…それが……圧倒的現実ッ!!」

実は、日本は「ミリオネア(資産100万ドル以上)」の人数で世界第3位と言われています(クレディスイス「グローバル・ウェルス・レポート」2019年版より。リンク先は内容を抜粋、邦訳したネットメディア「ビジネスインサイダージャパン」)。

資産が1億円以上あるようなお大尽なら、バラ完ロードバイクが80万円になろうが120万円になろうが、ポイポイ買えてしまうでしょう。「高値でも売れるんなら高く売る」のは当然の戦略です。

もちろん、富裕層がみんなロードバイク趣味というわけではないでしょうけど(笑)

世界経済の伸びに日本経済の成長が追い付かなければ、一般人がフラッグシップモデルに乗れる日は今後いっそう遠のいていくことは確かです。

30万円相当の性能が、今では10万円に

なんともシビアな話になりましたが、調べる過程で気づいたことがあります。

サイスポ95年1月号によると、当時のタイムのフラッグシップ?はアルミラグ&カーボンチューブのフレームで、重量1.67kg、30万4千円でした。

今ではフレームの重量だけでいえば、それと同じぐらいのものが10万円(しかも完成車の状態)で買えます。

技術の発展の恩恵はセレブだけが受けられるものではなく、万人に行き渡るという証左ではないでしょうか。

それと、自分自身の感性も変わりました。以前は試乗会でフラッグシップに乗ると、帰り道で自分のバイクとの性能格差にしょぼんとすることもありました。

しかし結局の所、レーシングバイクというのはメシやフロや観光とセットのサイクリングではなく、純粋に走ることだけを楽しむ・極めるためのものです。というか出先で駐輪したら盗難怖いし。

自分の志向と合わないものを手に入れても、持て余すのは目に見えています(ただし私のサイズに合うお下がりをくれる人がいたら、よだれを垂らしてスライディング土下座する準備は万端ですが)。

もう少しポジティブな言い方をすると「C64はとてもすてきなものだ。だが、アルミのVORREIちゃんも、それとは違う意味で同じくらい素晴らしい」といった具合でしょうか。

ちょうどサイスポ2020年4月号では「〝グレードフリー〟なバイク&パーツ選び!」として、「高い物こそ最高」という呪縛からの脱却、自分に合う機材選びの大切さを説いています。

CYCLE SPORTS (サイクルスポーツ) 2020年4月号
CYCLE SPORTS編集部
八重洲出版 (2020-02-20)
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