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よみもの

グラベルライドと「選ばれなかった道」

シマノがグラベルバイクのために用意したコンポーネント、GRX。シマノ北米ウェブサイトのGRX紹介ページには、”EXPLORE BEYOND”(彼方を探検する)というキャッチコピーとともにひとつの動画が埋め込まれています。

この動画ではロバート・フロスト(Robert Frost, 1874-1963)というアメリカの詩人による作品、”The Road Not Taken(選ばれなかった道)”がナレーションに使われています。

この詩、アメリカでは義務教育で多くの人が学ぶ非常に有名なものらしいのですが、一体なぜこの詩が自転車コンポーネントのプロモーション動画で使われているのでしょうか。

参考 The world’s first dedicated components for gravel adventure – GRAVEL.SHIMANO.COM
参考 Robert Frost – Wikipedia
参考 The Road Not Taken – Wikipedia

選ばれなかった道

この英語詩の話者「I」が自転車に乗る人と考えて、私なりに勝手に翻訳したものと原文を下に書いてみます。

詩とは多義的な解釈を許すものです。私の翻訳は「私はこう読んだ」という結果なだけなので、他の方の解釈とは違っている可能性があります

The Road Not Taken

Two roads diverged in a yellow wood,
And sorry I could not travel both
And be one traveler, long I stood
And looked down one as far as I could
To where it bent in the undergrowth;

Then took the other, as just as fair,
And having perhaps the better claim,
Because it was grassy and wanted wear;
Though as for that the passing there
Had worn them really about the same,

And both that morning equally lay
In leaves no step had trodden black.
Oh, I kept the first for another day!
Yet knowing how way leads on to way,
I doubted if I should ever come back.

I shall be telling this with a sigh
Somewhere ages and ages hence:
Two roads diverged in a wood, and I—
I took the one less traveled by,
And that has made all the difference.

選ばれなかった道

2つの道が枝分かれてしていた 黄色い林のなかで
残念だった 両方を走ることができないのが
ライダーは私一人、長いあいだ突っ立って
一方の道をはるか遠くまで見下ろした
草むらの中でその道が曲がっていくあたりまで

それから私は その道と同じくらい良さそうに見えるもう一方の道を行くことにした
その道のほうが魅力的に思えたのかもしれない
なぜならもっと草ぼうぼうで 踏まれることを待っていたから
まあそこを走ってしまえば
結局は同じように轍ができるのだろうけれど

両方の道はあの朝 同じようにそこにあった
踏まれて黒くなっていない葉の中に 
うん 私は最初の道を 別の日に取っておくことに決めたんだ!
でも 道がまた他の道にと どんなふうに繋がるかはわかっていたから
もう戻ってこられないのではないかという気持ちはあった

私はこのことを ため息をつきながら言うに違いない
これから何年も何年もたってから いつか
林の中でふたつの道が別れていた そして私は
あまり人が通らなかったほうの道を選んだ
その結果 すべてが変わってしまったんだと

冒険の結果はわからない

この「選ばれなかった道」という詩にはちょっと謎があるようです。一般的にこの詩は、

人生における様々な選択に関する詩であり、他人がやらなかったことに挑戦してみること、自分の選択に自信を持つこと

というメッセージである、と解釈されることが多いようなのです。

しかし一方で、

これは「自分の信じた道を歩め」みたいな凡庸なテーマの詩ではない。別の選択肢のほうが良かったのではないか、といつも後悔ばかりしている人についての詩である

という意見も見かけます。

実際、最後のほうに登場する”sigh”(ため息)が、

あーあ、やっぱりあっちの道にしておけば良かったのかも…

という後悔を意味しているのか、

ああ… やっぱりあの時、あの道を行った俺は正しかったのだ…

という満足や肯定を意味しているのか、誰にもわかりません。ロバート・フロスト自身が、この詩は解釈が難しいから気をつけるようにと言っているくらいです。

それはさておき、グラベルロードが近年ものすごく人気がある理由は、ロードバイクに乗っていて「走れる道」を走っていて、途中でガタガタとした非舗装路、林道、トレイルなどが目に入ったときに、

ああ、あっちの道も走れたらなぁ。でもこの25Cのスリックタイヤだと、あの石ころがたくさんの道はとても走れないなぁ… その先の激坂もこのギア比じゃ無理だし…

と残念そうに諦めていた私達に「あっちの道」も走る選択肢を与えてくれたから、と言えると思います。

あっちの道、あっちに行ってもいいんじゃないか。いつものこの道ではなく。結果がどうなるかはわからないとしても。

冒険、探検してみよう(その結果、失望するのか満足するのかはわからないにしても)

ロバート・フロストの詩を使った上のシマノの動画は、かなりいい感じに仕上がっているんじゃないかな、と思いました(映像をよく見ると、詩の内容に合わせて道が2つに別れていたりします)。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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