新型コロナウィルスによる外出制限などで、以前のように外でサイクリングできなくなった。全体的な運動量が減った。以前より気分が落ち込むようになった。わがままボディになってしまった。といった悩みを抱えている方は決して少なくないと思いますが、コロナはプロのアスリートにどのような影響を与えているのでしょうか。
Stravaとスタンフォード大学が共同でアメリカのプロの持久系(エンデュランス)アスリート131人に調査を行い、あわせて回答者のStrava上のアクティビティも分析しています。本記事ではその主だった点を紹介します。
調査手法
- Stravaとスタンフォード大学が共同で調査を行った
- 米国の131人の身元の確かなプロの持久系(エンデュランス)アスリートが調査に参加した
- Stravaプラットフォームでのサイクリスト・ランナー・トライアスリートを含む
- アスリートは30問のアンケートに回答し、114人がアクティビティ・データの分析を許諾した
- 「COVID-19以前」は2020年1月1日から2020年3月14日とし、「COVID-19期間中」は2020年3月15日から8月20日までとした
- 調査は2020年8月12日から25日にかけて行われた
- プロアスリートの内訳は44%がランナー、39%がサイクリスト、11%がトライアスリート、6%がその他となった
アスリートのメンタルヘルスへの影響
- 5人に1人のアスリートがメンタルヘルス、モチベーション、COVID-19に関連する運動の困難さを報告した
- COVID-19による制限以前は、3.9%のアスリートが週の半分以上は気分の落ち込みや抑うつ状態があったと報告したが、COVID-19の制限期間中は22.5%(5.8倍)に増加した
- COVID-19による制限以前は、4.7%のアスリートが週の半分以上はイライラや不安があったと報告したが、COVID-19の制限期間中は27.9%(5.9倍)に増加した
アスリートへの経済的な影響
- 調査に参加したアスリートの71%がCOVID-19による諸制限の期間中、アスリートとしての活動に対する経済的な埋め合わせを得られるかどうかを心配している
COVID-19によるアスリートの行動習慣の変化
- 31%のアスリートが調査期間中のトレーニングセッションの時間が増加したと回答した
- 17%のアスリートが調査期間中のトレーニングセッションの強度が増加したと回答した
- Stravaのアクティビティデータによると、プロアスリートはCOVID-19による制限以前は1日平均92分運動していたが、COVID-19による制限中は1日103分運動していた
- COVID-19による制限前・制限期間中において、ペース(ラン)・ワット(サイクリング)・相対的なエフォート(全アクティビティ。心拍をベースにしたStrava独自のメトリック)に大きい変化はなかった
- 約半数(47%)のプロアスリートが、COVID-19による制限以前よりも制限期間中のほうがより身体を維持できている(=fit)ように感じた、と回答した
運動量を増やしてもメンタル上の悩みは解消されない?
以上の調査結果で個人的に興味深かったのは、コロナ以後は気分の落ち込み・抑うつ・イライラ・不安が約6倍にも増えてはいるものの、プロアスリートの運動時間と運動強度はむしろ増えているということです。
しかし、これは何を意味するのでしょうか。もしプロアスリートのコロナ期間中の運動量がもっと短く、運動強度がもっと低かったとしたら、抑うつをはじめとするメンタルヘルスへの影響はもっと大きくなっていたのでしょうか。それとも小さくなっていたのでしょうか。
これらが相関関係にあるのか、それとも逆相関関係にあるのか、そのあたりも気になるところです。
普通に考えてコロナ期間中に「まったく運動しない」と気分の落ち込みが加速するのは間違いないとは思いますが、気がつくと運動しすぎていてそれが原因で逆にウツに…ということもあるような気がします。
生活がかかっているプロアスリートの場合、先が見えないとなると「次の出番で最高のパフォーマンスを出してスポンサー獲得につなげたい」といったプレッシャーもありそうです。