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105 R7100シリーズのスモールハンド用STI「ST-R7025」誕生秘話 女性用ハードウェアは不況を乗り越えていけるか

Shimano 105 R7100(メカニカル11スピード)の油圧ブレーキSTIとして「ST-R7025-R」と「ST-R7025-L」というモデルが存在します。ブレーキレバーへのリーチが通常版より4mm短く、外側に張り出した形状になっており、手の小さい人でも扱いやすい製品とされています。これが生まれた背景について海外メディアが紹介しています。

LANGMA ADVANCED 2 DISC QOM © GIANT

出典 Giant’s chairperson tells industry to reach out to women
参考 シマノ 105 油圧ディスクブレーキ デュアルコントロールレバー 11スピード スモールハンド用 | SHIMANO BIKE(自転車部品)-日本
参考 2023 Liv Cycling | トップページ

スモールハンド用STIは継承されるか

以下、記事の概要です。

  • GIANTグループの会長、ボニー・ツー(Bonnie Tu, Tu Hsiu-Chen)氏は同社のLIVブランドのバイクや、女性にフィットするサイクリングアパレルの開発における自らの役割について語った
  • 2007年、ツー氏は57歳の時に閉経やその他の健康問題による影響と格闘していた。「その頃、自転車ライドに出かける機会があったのです」。彼女は子供の時からそれまで1度も自転車に乗っていなかったのである
  • GIANTは年間300万台の自転車を製造していたが、彼女に与えられたのは小柄な男性用バイクとメンズジャージだった。「それでもサイクリングは本当に楽しめました」と同氏は語る。しかしより重要だったのは、彼女の健康が改善しはじめたことだった
  • こうしたライドがきっかけとなり、ツー氏はGIANT社内での影響力を駆使し、女性サイクリストに真剣に向きあう動きを作った。「全ての女性に適切な機材を提供しなければなりません」と彼女はGIANTの役員達に促した
  • 当時GIANTには女性エンジニア・プロダクトデザイナーがいたため、ツー氏はそのスキルを活用した
  • 1年後、ツー氏は台北のダウンタウンに初のLIVストアをオープンさせた。また地元の有名人を含む女性グループを伴い、台湾島での伝統的なライドを行った。その結果、地元メディアはこのライドを大きく取り上げ、大勢の女性たちがLIVストアに押し寄せることになった
  • 「それから15年が経ちました。私が学んだのは、消費者を教育する必要があるということです。実に多くの女性が(今でも)どうやって乗るか、特に都市部でどう走るかを知らないのです。しかし乗りはじめるとすぐ、家族のアクティビティになるのです」
  • LIVからのスピンオフとして、女性メカニックの育成もあった。「女性メカニックは男性と同じくらい資質があります。」女性メカニックは女性に対しても、男性に対しても、説得力のある販売スタッフにもなった。またサンデーライドの主導も楽しく行っている
  • 「そんなわけでLIVはうまくやれていますが、15年もかかったのです」とツー氏は言う
  • また彼女は、女性の小さい手にフィットするリーチの短いブレーキレバーを製造するよう、シマノに、そして後にSRAMにも働きかけた
  • 日本の富士山でのライドで、下りでブレーキレバーを操作しようとするツー氏の手は痛くなった。2015年、彼女はシマノの役員に(女性にも使いやすい)ブレーキレバーを製造してほしいと訴えた。返事は「考えておきます」だった
  • 2016年にふたたびシマノ関係者に会った時も同じ返事だった。2017年も同じだった。そして2018年、ついにシマノは「スモールハンドのための」ブレーキレバーを設計した。翌2019年、それは105グループにおけるオプションとして提供された
  • 現在72歳のツー氏は、今でも自転車業界が女性にリーチするための努力を続けている。「LIVはひとつの例であって、ひとつの例外ではありません」と彼女は語った

ボニー・ツー氏が富士山ライドを行っていたこと、スモールハンド用STI「ST-R7025」については知っていたのですが、同氏の働きかけによってST-R7025が誕生したらしい、ということは初めて知りました。57歳になるまで何十年も自転車に乗っていなかったというのも驚きです。やはり経営陣が製品の必要性を身をもって理解している会社は強い、という感じがします。

と、これだけだと「へぇ〜!」で終わってしまうのですが、気になるのは大ブランドによる「ジェンダーニュートラル」の動きです。完成車やフレームの話ですが、スペシャライズドは女性用モデルを廃止しました(2019年)。トレックやキャノンデールにはまだ女性用モデルはあると思います(サドルやウェアなどはもちろんどのブランドも女性用製品に力を入れてはいます)。

メカニカル12スピードの105でも用意されるかどうか気になりますね。登場する可能性は充分にあると思いますが、経済が比較的良好だった時代に比べて、販売台数が見込めないのであれば女性専用のハードウェアはしばらく停滞する懸念もあるのだろうか、と思いました(※DI2グループについてはレバーの握り幅調整ができます)。

現状で、GIANTの女性向けブランド「LIV」は健在。コンパクトなST-R7025を搭載している完成車もちゃんとあるので、手が小さい方はチェックしてみてはどうでしょうか。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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