燃えろタイレル かけろテツ路跡
闇にうごめくnadokazuです。
というわけで、本日の駄文はこちら!
前回の!ラ…あらすじ!!
春、「おりたたみ自転車と旅しています」を読んだnadokazuは、仕事をポイ投げして旅に出る決心をした!
『私も自転車で「風の道」を走ってみたい!』
さらなる聖地巡礼のため、次の目的地を探すnadokazu。
その前に、東京で記事を書いたとき出会った道、片鉄ロマン街道ちゃんが候補として現れた!
『奇跡だよ!!』
(♪みーたーことーない夢の軌道〜)
桜が咲き誇りまくる、片鉄ロマン街道へ!
とまあ、そんなわけでジャンボフェリーで高松に渡って、うどんを食して、Tyrellファクトリーを訪問。
わずか5時間の滞在で四国を後にして、下津井電鉄の廃線跡「風の道」と「茶屋児島自転車道」を走行。「下電ホテル」に投宿しました。
ホテルご飯を満喫したあと横になったら即座に意識を失って、気付いたらもう朝。朝焼けに染まる瀬戸大橋を眺めつつ、出発準備を整えます。
次に向かうのは、先述のとおり「片鉄ロマン街道」。1991年に廃線になった、片上鉄道の路線跡に整備されたサイクリングロードです。
岡山県備前市、和気町、赤磐市、美咲町にまたがり、全長は34.2km。
サイクルスタンプラリーや「片鉄ロマン街道”桜”サイクリング大会」などのリアルイベントが開催されているほか、ネット上には公式/非公式含めて情報が多数。YouTubeにも、多くの走行動画がアップされています。
自分は以前、廃線跡のサイクリングロードについて記事を書いたときに知ったのですが、調べれば調べるほど行きたい気持ちが高まるばかり。
▼ 参考記事
なにしろ
- 廃線跡だから、無茶な登坂は無い。
- 映えスポットいろいろ。
- そもそも走っていて、実に気持ちよさそうな道。
さらに!
- ちょうど沿道の桜が咲きまくっている時期。
これだけ条件が揃っていて、走りに行かない選択肢はありませんよね。廃線遺構と桜を絡めた、映え映えの自転車写真を撮るのですよ!
生まれてしまう…!承認欲求モンスター…!
マリンライナーに乗り遅れる?タイムリミットまで39分!
せっかく行くなら、始点〜終点までの全線をきちんと往復したいところ。ただし夕方には帰りの新幹線に乗らないといけないので、スタート時間が早いに越したことはありません。
片鉄ロマン街道の出発点の最寄り駅は、JR赤穂線の西片上駅。児島駅7時39分発のマリンライナーに乗車できれば、岡山駅での乗り換えを経て9時12分の到着です。
その次のマリンライナーだと、児島駅8時53分発で西片上駅到着は10時8分。残り時間を考えると、10時を過ぎてからのスタートはちょっと遅すぎでしょう。なので、7時39分発のマリンライナー乗車が必須。
だがしかし!
朝食の開始時間を聞いてびっくり、なんと朝の7時から!
せめてあと30分早ければ全然違うのに…。とはいえ、ホテル的には極めて普通の時間です。自室に持ち込むお弁当形式なので、用意でき次第持って行かせて欲しいですがワガママは言えません。
つまり、自分に与えられた時間は39分。これって余裕があるようにも感じますが、朝食と駅までの移動を考えるとギリギリもいいところです。
最終手段発動!コスパ最悪の短距離輪行!
7時に朝食を受け取って、食事・精算・チェックアウトで15分、輪行準備に3分、ホームまでの移動に1分かかるとすると、残りは20分。ホテルから駅までは約4kmなので、時速12kmで走れば間に合う計算です。これなら、ギリギリ何とかなるのでは?
…という目論見は「ホテルから駅へ向かう途中に坂がある」という現実にあえなく打ち砕かれました。RWGPSでの計測では距離約1.5km、獲得標高33mというザコい坂スペックですが、へっぽこ脚を破壊するには充分すぎる威力です。
ハイ詰んだー!終了ー!!
そこで、やむなく最後のカードを切りました。
その通りだぜ、相棒!
俺はこの状況を、最初から予測していた!
俺のターン!ドロー!
手札の樋口一葉を生け贄にして、フィールドに一般旅客乗用車を召喚!!
内燃機関の特殊効果で、脚のライフを消費することなく高速移動できるぜ!!
というわけで、タクシーに畳んだ自転車を積んで移動しました。コスパ最悪にもほどがありますが、背に腹はかえられません。ちなみに折り畳み自転車のTyrell IVEは、タクシーのトランクに楽勝で収まりましたよ。
自転車では絶対に出せないスピードで坂をクリアして、駅に向かって爆走するタクシー。ぶ、文明の利器ってすげー!!
輪行準備の時間もカットできたので、乗車時刻にはもちろん余裕で間に合いました。
岡山駅構内のコインロッカーにバックパックを詰め込んだあと、赤穂線に乗り換えて予定通りの時刻に西片上駅へ到着!
輪行サイクリストを襲う、西片上駅の罠!
片鉄ロマン街道起点の最寄り駅である、西片上駅。ホームと改札が同一平面上にある構造なので、階段昇降不要で改札を出られます!素晴らしい!!
なんですが!
実は西片上駅があるのは、結構な高さの土手の上。ホームから改札までは階段無しですが、改札を出たところにあるのは併走する国道2号線だけです。
国道2号線を渡れば通行可能な道はありますが、多数の車両が絶え間なく高速通過しているので横断はさすがに無謀。サイクリングロードに向かうためには、自転車を抱えてスロープのないバリアフリー無視階段(しかも結構長い)を降りるほかありませんでした。
まだ走り出す前だというのに、ライフの大幅減少を余儀なくされて、早くも涙目です。
どっちが起点?2カ所ある0キロポスト!
西片上駅から少し海側に戻ったところが、旧片上鉄道の片上駅があった場所。今では短い線路と、当時駅構内にあった0キロポストが「ゼロ起点」として整備されています。
ただ、片鉄ロマン街道の起点はここではなさそう。いろいろ資料を見てみると、新幹線の高架手前に鉄道標識に模した0kmの距離標が設置されていて、正式にはそちらが起点みたいです。
ここまで紆余曲折ありましたが、いよいよ片鉄ロマン街道サイクリングのスタートです。さあ、廃線跡のサイクリングロードの平坦路面を気持ちよく走ろう!
…と、思っていた自分の目の前に出現したのは、いきなりの登坂でした。グワーッ!
満開の桜が、あっちにもこっちにも!
そりゃあ廃線跡なので、大した斜度ではありません。けれど距離約2.1kmで獲得標高59m(RWGPSによる計測)の登坂を初っ端から喰らうというのは、坂嫌いには思いっきり堪えます。心の中に広がっていく、どす黒い闇の感情。
このままでは、せっかくの遠征が黒歴史になってしまう…。涙目になっていると、目の前には咲き誇る桜のトンネルが!
先へ先へと続いていく満開の桜並木に、舞い散る花びら。今日の勝利を、確信する瞬間でした。
しばらくすると桜のトンネルは途切れましたが、沿道のあちこちで満開の桜が咲き誇っています。暖かな日差しと、新緑の木々、そして爽やかな空気。もしかして今日は、ベストコンディションかも!
起点から約2kmの峠清水トンネルを越えると、ようやく登坂は終了。ゆるゆると坂を下って、旧清水駅跡に到着しました。ホームの遺構には桜が植えられていて、こちらも満開です。
清水駅跡の次の駅、中山駅跡にホームの遺構は残っていませんでした。駅名標(古い感じがしないので、サイクリングロードの整備とともに設置されたものと推察)だけが、かつて鉄道駅があったことを示しています。そして、ここでも桜が満開です。
起点からおよそ8.5km。JR山陽本線、和気駅の先の鉄橋には「片鉄ロマン街道」のロゴが描かれていました。こういうの、遠征で来たときは特に気分が上がりますよね。
和気の街中を抜けて、しばらくすると再び登坂が始まります。1%だろうが3%だろうが、坂は坂。そして、すべての坂は憎むべき敵!呪詛を吐きつつ進むと、左手には新田原井堰が見えてきます。
そしてその先が、映えスポットとして名高い天瀬駅です。自転車乗りだけでなく、クルマで来たであろう方々もたくさんいらっしゃいました。
なるべく広角で撮りたい…けれど、フレーム内に誰もいなくなるタイミングがない!ギリギリまで引いて、ようやくこんな感じでした。
しばらくすればシャッターチャンスが巡ってくるかも…と思いながら待ちますが、ちっとも途切れる気配がない人の波。泣く泣く天瀬駅を後にして、走り出しました。
天瀬駅の先、起点から約15kmのところには天神第一/第二と連続したトンネルが現れます。はい、先生!わたくし、もちろんこういうの大好物です!!
それにしても、片鉄ロマン街道は「街中」「川沿い」「山あい」「住宅街」などなど、景観の変化が実にダイナミック。そんな中を、安全が担保された状態で走れるというのは、本当に幸せなことですよね。
右に左に大きなカーブを描く吉井川の流れや、対岸の桜並木が水面に映る様子などが次々に目に飛び込んできて、気分は終始高揚しっぱなし。
そして今日のハイライトだったのが、吉井川と滝山川の合流点にかかる番念寺橋から周匝橋までの「コスモス街道」という案内看板のある区間。桜並木が約1,500mに渡って延々と続き、とんでもない見応えがありました。
走っても走っても、桜並木が終わらない!これは、桜満開の季節だからこその体験ですね。
興奮冷めやらぬまま走っていると、唐突にゴール地点の吉ヶ原駅跡に到着しました。少し先に進むと、真新しい施設にDD13型ディーゼル機関車と昔の列車が保管されていました。線路に枕木が積まれて封鎖されていますが、車両は手入れが行き届いている感じ。普通に現役で動きそうな印象を受けます。
後で調べたところ、ここは廃線後に新規開業した「黄福柵原駅」。吉ヶ原駅との間で、展示運転が行われているそうです。
吉ヶ原駅跡とその周辺は、黄福柵原駅も含めて「柵原ふれあい鉱山公園」として整備されています。当時の駅舎だけでなく多くの車両も残されていて、大変興味深いです。
柵原ふれあい鉱山公園に併設されている柵原鉱山資料館には、「サイクリスト大歓迎!!」の看板が大々的に掲げられていました。大歓迎されてるなら、ぜひ往訪してチヤホヤされたいところ。ですが、どうしても後のスケジュールが気になってスルーせざるを得ませんでした。時間に余裕があれば、普通に立ち寄れたはず。この脚に、もうちょっと走力があれば…。
そうそう、片鉄ロマン街道の天瀬駅とならぶ映えスポットに、苦木駅があります。往路では人大杉で、賑わう様子を横目でチラ見しながら通過するほかなかったのですが、復路ではほぼ無人。独り占め状態でした。
古い駅舎がきちんと整備されたうえで残されていて、オンボロ残念感を一切与えず昭和レトロな映えスポットに昇華させちゃうのは素晴らしいですなぁ。
舞い散る花びら。片鉄ロマン街道は、普通に走っても充分以上に楽しめる道だと思いますが、桜の季節はその魅力が数十倍、いや数億倍・数那由他倍にまで高まりますね。
同じく廃線跡である「つくば霞ヶ浦りんりんロード(筑波鉄道区間)」も桜のトンネルは楽しめますが「旧駅舎との絡みがある」というのは、片鉄ロマン街道のストロングポイント。これは来年の桜の時期に、どっちへ行けばいいのか迷いそうです。
VOLT800の里帰り!キャットアイ吉井工場に巡礼!!
そうそう、今回の旅のテーマ「聖地巡礼」ですが、今日は自転車乗りとしての聖地、サイコンやライトでお馴染み、みんな大好き株式会社キャットアイの吉井工場を訪問してみました。
もちろん休日なので、門扉は固く閉ざされています。工場にはどなたもいらっしゃらないし、車両の出入りもないので写真撮影にはむしろ好都合。
Tyrell IVEに続いて、3本持っているVOLT800のうち1本を里帰りさせることができました。
工場の看板には、社員の方が設置されたのであろう猫マスコットが貼られていました。やるなぁ。
これで片鉄ロマン街道の全線を走りきる&キャットアイの吉井工場に訪問する、という2つのミッションは完了です!
キラキラネームな橋を渡って、カキオコ食べよう!
あとは来た道を逆方向に戻るだけですが、このまま西片上駅から乗車すると土手の上にある駅までスロープ無しの階段を登ることになります。しかも、自転車を抱えた状態で!それ、あまりにもイヤすぎるぞ…。
復路は休憩・撮影のタイムロスを最小限にするように走ったので、少しだけ時間に余裕ができています。そこで、日生(ひなせ)まで脚を伸ばしました。日生駅なら、普通に階段を上るだけでホームに着けますし。
「備前♡日生大橋」というハートマーク付きで正式名称という、恥ずか…キラキラネームな橋を渡ってまずは鹿久居島へ。
そして、さらにその先の頭島まで辿り着いたところでタイムアップ。日生の名物「カキオコ」を食べることはできず、泣く泣く日生駅から電車に乗りました。
日生まで走ったおかげで、瀬戸内の多島美を追加で堪能することができました。ですが、「カキオコを食べ損ねる」というマイナス体験も追加されてしまう失態。
これは…リベンジせねばなりますまい。
まとめ
これまで「つくば霞ヶ浦りんりんロード(筑波鉄道区間)」こそが、廃線跡のサイクリングロードの王者だと思っていました。路面状態やアップダウンの無さ、そして総延長や周辺施設の充実ぶりは、りんりんロードが圧倒的。土浦&茨城県のサイクリストおもてなしパワー、やっぱり半端ありません。
▼ 参考記事
けれど「片鉄ロマン街道」も、双璧を成すレベルで素晴らしいです。沿線風景がより変化に富んでいるのは、圧倒的に片鉄ロマン街道の方。そして鉄道遺構がバッチリ残されていて、キチンと整備/維持管理されているのもポイント高いです。
「東のりんりん・西の片鉄」
廃線跡のサイクリングロードは、このツートップが最強!と、断言したいレベルで気に入ってしまいました。
そうそう、首都圏エリアから輪行で片鉄ロマン街道に行くなら、スタートは西片上駅よりも和気駅をオススメしたいです。改札を出てからスロープ無しの階段を降りる必要がある西片上駅の構造は、輪行サイクリストにとってツラすぎます。
和気駅であれば、改札を出たあとに階段はありません。首都圏から始発の新幹線で向かった時も、西片上駅は10時8分着なのに対して和気駅なら9時50分に到着可能。さらに!片上〜峠清水トンネルまでの登坂も回避できちゃいます。
これから片鉄ロマン街道に行こう!と思われた方は、和気駅スタートをぜひご検討ください。