nadokazuが描くのは、
自転車に懸けるぼっち中年の
“トクベツ”な遠征
ゆるポタ野郎 nadokazuの
初めての大仕事!
生死をかけた島内サイクリングが始まる!
というわけで、本日の駄文はこちら!
無謀すぎない?→無謀でした。以上!
結論から申し上げます。無謀でした。無茶でした。這々の体で宿に戻ったあとは、気絶レベルで爆睡。
翌日はガタガタになった身体で泊まりの荷物と自転車を抱えて輪行帰宅するハメになり、まさに地獄。佐渡島をフルで一周するなら、せめて小径車じゃなくて普通のロードバイクを使うべきでした…。バタリ。
佐渡島へ、実際に行ってみた。
前稿で記載した通り、佐渡島を一周するにはいろいろな走行パターンがあります。
▼ 参考記事
余裕を持ってサドイチしたいなら、2日に分けて走るのが絶対的な安牌。なんですが、自分は結局「2泊3日・一括走行プラン」を選択しています。
どうして「1日目に途中まで走ってラクをする」という、堅実な選択をしなかったのか?
理由は簡単。そもそもの動機が「100kmおトクに完走認定をもらって、本シーズンで走る皆さんを出し抜きたい(最低)」でしたから。佐渡島をフルで一周する気なんて、これっぽっちもありません。2日に分けて走るなんて、考えもしませんでした。
130km走れば、メダルはもらえる。だがしかし!
最大の目的である「メダル」は、130km走ればもらえます。わざわざフルで一周して、したくもない苦労をする必要性は皆無。
【サイクルボールSeasonⅣ】プレシーズン:サドイチ メイン 130km
それに自分が乗っているのは、ロードバイクじゃありません。ハンデありまくりの、小径折り畳み自転車です。それで200kmを走るなんて、普通に無謀。
「敵は200km超ですよ? 乗車している自転車がただの小径車で、他にどういう作戦があると言うんですか!! ありはしませんよ!!!」
脳内で、太田中佐が机に拳を叩きつけます。
なんですが、佐渡島に到着したらサクッと気が変わってしまいました。だって佐渡島、あまりにも素晴らしいんですもん。
青い海、緑の木々。澄んだ空気。信号には滅多に出くわさず、主要幹線をちょっと外れるだけでクルマ通りがほとんどナシになる。自転車で楽しく走るのに必要な条件が、これでもかと揃いまくっています。
「こんなイイ場所に交通費と宿泊費をかけて遠征してきたんだから、長く走らないと絶対に損だよなぁ…」
という考えが湧き上がるのは、もはや必然でしょう。
そして自分には、距離160kmのAACR(アルプスあづみのセンチュリーライド)を走り切った経験があります。フルのサドイチは、そこに僅か1りんりん(=つくば霞ヶ浦りんりんロード片道分)を追加するだけでしかありません。
▼ 参考記事
あれ…もしかしてサドイチフル、意外とイケちゃうんじゃない?
明らかに甘すぎる目論見だというのに、脳内議会は全島一周を可決。
「よーし!パパ、佐渡島全島を、小径折り畳み自転車で一周しちゃうぞ!!」という決意が固まってしまいました。あーあ。
逆算すると、出発は深夜!
約200km、アップダウンありまくり。そんなコースを走るのに、いったいどれだけの時間が費やされるのでしょうか?
平均時速12kmで走ったとすると、雑に計算して17時間半。絶対厳守が必須な夕食の最終時刻は19時30分なので、早朝に出発してもタイムアウトになってしまう可能性は極大です。
この条件下で走行時間の余裕を確保する選択肢は、「出発時間を早める」ただひとつ。
というわけで午前1時、アラームに叩き起こされて部屋を出ました。ロビーに自転車を置かせてくれる神対応ホテルだったので、スムーズに出発できています。ありがたや〜。
スタート地点の「あいぽーと佐渡」に到着したら、アプリ「ツール・ド」を起動。いよいよ、無限に続く旅の始まりです。
スタートから間もなく、両津港の周辺エリアを過ぎると街灯が無くなって周囲は真っ暗闇になりました。左側から波の音が聞こえてきますが、見えるのはVOLT1200に照らされた路面の一部分だけです。
そしてしばらくすると、脚の超高感度センサーが路面の斜度を探知。ギアを少しずつ落としていきますが、気づけば早くもインナーローです。初っ端からこれだと、先が思いやられるなぁ…。やっぱり全島一周なんて、やめた方が良くない?
走り出して10分もしていないのに、見え隠れする「撤退」「敗走」の2文字。
とはいえホテルに戻ったところでフロントが閉まっていて、部屋には戻れません。逃げ帰ることすらできず、もはや前に進むしかない。つまり!これから10時間以上にわたって、サドルの上で辛い辛い時間が続くのです。なんという絶望。
涙目で夜空を見上げると、そこには「満天の星」としか表現のしようがない、夥しい数の星が煌めいていました。
▼ 2日目の夜に宿で撮った星空。
どれがデネブ アルタイル ベガ? 一等星すら埋没する、とてつもない数の星。肉眼なのに、天の川の目星がついてしまいます。八ヶ岳高原でだって、こんな星の見え方はしません。これ、いつも見ているのと本当に同じ空なの?佐渡島おそるべし。
ライトで照らされた路面しか見えない漆黒の闇の中でペダルを回し、たまに上を向いて星空の凄まじさに息を飲む。そんなことを繰り返していると、徐々に夜が明けてきました。振り向くと、空はちょうどブルーモーメント。
午前4時半になると、ライトが不要になるほど明るくなりました。ザーザー音がするので、見てみると道の脇に滝が。わりと見栄えがするスポットなのに、凄く雑な扱い。あとでググってみたら、佐渡島って結構立派な滝がそこかしこにあるんですね。この扱いも納得。
小木港を過ぎて島の反対側に入ると、沿岸の様子が地殻変動で隆起した感アリアリのより荒々しい印象になってきました。自転車を停めて、シャッターを切る回数が増えます。時間帯が良かったのか、空と海が同じ色に染まりました。
地面から突き出した大岩に、なんだか妙な模様が。あとで調べたら「潜岩」という名前があって、地元では「キリン岩」と呼ばれているらしいです。へー。
そして島の方々の暮らしを覗き見。本当にタライみたいな、円形の船で漁をされてるんですね。
さらに進んでいくと、ルートは海岸線から離れて少しだけ内陸のほうを走ります。もちろん海岸と内陸には標高差があるので、登坂を強いられました。勘弁して…。
佐渡観光スポットの定番、人面岩。確かに、人の横顔に見えないこともないかも。ここまでで出発からだいたい6時間が経過して、時刻は午前7時半。でもまだ走行距離は半分にも満たないし、この先にはまだまだ坂が待ち構えているという幻日…じゃなくて現実。絶望。
走っているのはサイクルボール本シーズンのサドイチのコースだけど、認定を受けるのはプレシーズンの130kmコース。というわけで、チェックポイントの真野公園に立ち寄って無事にチェックイン。熱中症指数計は、まだ注意〜警戒程度なので熱中症の不安なし。
▼ 熱中症指数計のレビュー記事
真野公園の次のチェックポイントは、佐和田海水浴場。海面に突き出した桟橋(あめやの桟橋)が、インスタ映え映え〜なスポットとして知られています。
が、そんなリア充っぽい場所で写真を撮るなんて行為が、陰キャ自転車乗りにできるはずもありませぬ。チェックポイントのチョイ先で、ひとり写真撮影に勤しみました。
SONYのDSC-RX100 M7は、トップチューブバッグに余裕で収まるコンパクトボディに35mm換算で200mmの望遠レンズを搭載。「目一杯ズームして撮って、背景をぼかす」という素人ワザが使えます。
次のチェックポイントは「ラピュタっぽい」と名高い遺構、北沢浮遊選鉱場跡。海岸線のルートから内陸方面に少し登坂した場所にあるので、普段のサイクリングだったら登坂を嫌って絶対にスルーしてたでしょうね。
「観光とかどうでもいい!可能な限りラクをしたい!!」
そんなザコいメンタルで走っているところに、メダルをはじめとするニンジンをぶら下げて強制的にオススメスポットに連れて行ってくれるサイクルボール。自分みたいな面倒くさがりに新しい体験をさせてくれる、本当にありがたい企画です。
それにしても佐渡島の海岸沿い、特に上半分の北側は奇岩・奇石が織りなす「なんじゃこりゃー!!」という景色のオンパレード。走っていて、まったく飽きません。
こういうのとか、きっと見る人が見たら垂涎モノなんでしょうね。
そして特筆すべきは、べらぼうに高い海の透明度!西伊豆の海もキレイですが、佐渡島の海は美しさが尋常ではありません。かなり遠くまで、底が普通に見えます。
この角度から、海を撮れる理由ですか?登らされたからですよ!坂を!!
港がある海沿いを走る → 岬を越えるための坂が登場する。という悪夢のパターンが何度も何度も何度も何度も繰り返されて、100km以上走った脚に着々とダメージを蓄積していきます。
どれだけ走っても、繰り返し繰り返し坂が登場する。お願い…もう許して…。
そして佐渡島を走っていると「どうしてこうなったのか意味がわからない!」と叫びたくなる、狂った造形の岩がカジュアルに登場して驚かされ続けます。
なんですが、距離を重ねると完全に感覚が麻痺してきて、これぐらいではもう驚きすらしません。実際このレベルでは、名前すらつけてもらえない模様。
12時26分。ついに…いよいよ…とうとう、サドイチで最も恐れていた現実に直面しました。
そうです。目の前にあるのは、悪名高い「Z坂」。いままで画面の中でしか見たことがなかったのですが、実物を目の当たりにすると凄まじい禍禍しさに震えがきます。感じる…!ここを通過していく全人類から、脚の筋繊維を1本も残さず引きちぎろうとするZ坂の「圧」を!!
か、か、帰りたい!! よっしゃ、今すぐ引き返そう!!
全身の細胞が、恐怖で悲鳴を上げています。とはいえ、ずっと前から「もう後戻りできない場所」に来てしまっているのです。意を決して、ゆるゆると登坂を開始。
登り始めてすぐ、右側に立派な滝が流れ落ちているのが見えました。自転車を降りて写真を撮りまくりたいところですが、ここは地獄のZ坂。一度停まれば、あとは押し歩くだけになるでしょう。ペダルの回転を、緩めるわけにはいきません。
ヘアピンカーブを右に回って登り続けていると、トンネル入口の手前まであっさり到着してしまいました。もっと苦しい思いをするかと思っていたのですが、そんなことは全然無かったですね。受けた苦痛は、想像の100万分の1以下。
もしかして自分の登坂能力、実は向上してない!? 俺様「登れる人」になっちゃった!?
Z坂、恐るるに足らず!! こんなん楽勝!! どうしてあの程度のチョロい坂を、みんな恐れてるんだろう? そっかー!もしかして、貧脚さんなのかなぁー?
ゲスいドヤ顔を浮かべながら、再スタートします。あとは大野亀のあたりにキツい坂があるっぽいですが、Z坂を楽勝クリアした自分の登坂力なら瞬殺間違いなし!
ところで、さっきからインナーローにしてるのにペダルが全然回らないんですが、どういうことでしょう? BBがトラブったかな? セカンダリータービン止まってる?
そしていつの間にか、サイコンの心拍数表示が200近くを示していました。脚が重い…苦しい…つらい…いつまで経っても坂が終わらない…。
ナメきったことを考えていた自分を待っていた、ドギツイ登坂。そう、Z坂はトンネルから先で本気を出してくるのです。慢心してたら満身創痍。僅かに残っていた脚のライフは、完全に底を尽きました。
自分が登れる人になった、なんて一瞬でも考えた自分がバカでした…アホでした…。
そのあとは、岩をブチ抜いたトンネルに驚愕したり…
大野亀のド迫力に腰を抜かしたりしながら、坂の出現にビビりまくりながら走行。
そういえば、大野亀の先にあった坂もトラウマ級でしたね…。あまりのツラさに記憶が飛んでいて、よく覚えておりませぬ。
最後のチェックポイント、北小浦を過ぎるとあとは消化試合。さすがにトラウマ級の登坂の出現はなく、疲労しきった脚を引きずるようにしながらも景色を楽しみながら走れました。
15時24分、ゴールの「あいぽーと佐渡」に到着しました。完走記念のメダルをもらったあとクーラーの効いた館内でベンチに腰を下ろしたら、完走して気が緩んだからなのか、途端に押し寄せてくる激烈な疲労。
腕、肩、腰、脚、臀部と、全身のありとあらゆる部位から不快な体内信号が発せられます。もう立ち上がりたくない…このままへたり込みたい…という気持ちをグッと堪えて自転車に跨がり、ヘロヘロと宿に戻ります。
部屋に入ったら着替えもせずにベッドに倒れ込み、しばらく硬直してました。知ってる…これ…疲労が限界突破して、不快感で眠れないやつだ…。
そのまま、横になりながらまんじりともせずに時間を過ごし、なんとか起き上がって入浴。ようやく人心地を取り戻しました。早めの夕食を済ませて部屋に戻り、気付くと深夜。意識、飛んじゃってましたね。
そんなわけで走行時間13時間37分、獲得標高1,788m、走行距離208km。サドイチフル、なんとか完走です!
佐渡島の○マルと×バツ
佐渡島ライドの良かったところとイマイチだったところを、個人の主観だけでまとめてみました。
○ヤバい暑さを感じない
走った日の天候は、快晴。結構な日差しでしたが、気温が激烈に高いとは感じませんでした。走行中の熱中症指数計も「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」の4段階のうち2番目の「警戒」までしか発報されていません。
海から吹いてくる風が涼しくて気持ちよかったのと、あとはトンネルの中がひんやり天然クーラー状態だったのが特に強く印象に残っています。
ちなみに佐渡島を走る前の週に霞ヶ浦を一周していますが、そのときは吹いてくる風が湿気を含んだ熱風でむしろ超絶に不快でした。
○坂が長くない
サドイチの外周コースには、いくつもの坂が登場します。何度も地獄を見るハメになるのですが、長くても2km程度です。
10km超のドギツイ坂がカジュアルに登場してきやがる憎き伊豆半島に比べると全然マシどころか、むしろラクチンと言えてしまうでしょう(キツくないとは言ってない)。
○クルマがいない!信号がない!
リアビューレーダー要らないんじゃないか、と思ってしまうぐらいの交通量の少なさ。特に、島の北側はクルマが少なくて走りやすいことこの上なしでした。
そして、信号をまったくと言っていいほど見かけません。両津港の周辺を除くと、本当に数えるほどしか信号ストップしてない気がします。まぁ、これは合法的な休憩時間が無くなるという諸刃の剣ですが。
○景観が素晴らしい!
とんでもなく透き通った海。手を変え品を変え出てくる奇岩。目に飛び込んでくるのは、心に残る風景ばかりです。控えめに言って最高!!
○補給にそんなに困らない。
一部区間を除けば、自販機は普通にあります。水分補給に困ることは、ほぼ無いでしょう。コンビニは極めて数が少ないので食料を調達する機会は限定されますが、そこは事前の準備でどうにかできちゃいますよね。
…とまぁ、こんな感じでいいとこばっかり!という印象でほぼ占められているのですが、ネガが無いわけではありません。
×遠い
横浜からだと本州を横断して、そのうえフェリーの乗船が必須。時間と費用の負荷が、もう半端ではありません。日帰り不可能な遠さは、佐渡島の高い高い敷居です。
×ビジネスホテルがほぼ無い
調査不足はありますが、観光客用のホテルばっかりな印象。ルートイン的なビジネスホテル、無いですよね? 宿泊のコスパは、悪化しがちに感じます。もちろん土地柄とか現地の事情はガン無視なので、勝手すぎる無い物ねだりです!
×帰りたくなくなる
泣きそうなほどツラい思いをしていますが、楽しい思いもしています。佐渡島に滞在すると、アッという間に島を離れたくなくなります。帰宅する日のツラさといったらもう…!
まとめ:佐渡島はいいぞ…!
佐渡島はイイ…すごくイイ!これが、一周走ってきた正直な感想です。
交通費と宿泊費で家計は大ダメージを受けますが、それを補って余りあるだけの体験ができる!と、断言できます。自転車旅行の行き先に迷ったら、ぜひぜひ検討してみてください。
ただし!
覚悟しておかないといけないのが、島を離れるときの一歩間違えたら涙が出ちゃいそうな喪失感。
「島を離れる」というだけなら、伊豆大島で散々経験しています。ですが佐渡島で湧き上がってきた感覚は未経験レベル。たとえて言うなら泊まりでディズニーに行って帰宅するときの「強制的に夢から目覚める感」を、特濃級に煮詰めたような感情が押し寄せてきます。
人生初の佐渡島でしたが、思いっきり気に入ってしまいました。自分の中の「もう一度行きたい場所リスト」に、がっつりランクイン。写真を見返しながら、溜息をつく日々です。
それと今回の佐渡島一周で、ものすごく後悔していることが1点だけあります。
それは、深夜スタートになったので両津港を出発してから夜明けまで、ずっとVOLT1200に照らされたアスファルト路面だけしか見られていないこと。およそ50kmの風景が、完全に闇の中です。佐渡島への心残りを、思いっきり残した状態。こんどは2日かけて走破するプランで再訪するしかないなぁ、と思えてなりません。
そして、次の坂が始まるのです!!
おまけ:ドンデン山、死の行脚。
佐渡の絶景ポイントのひとつに、「ドンデン山」がある。そんなことを、佐渡島に着いてからググって知りました。
「ドンデン」って、どこのゆるキャラですか?プー、クスクス。そんなユーモラスな名前の場所で、キツい思いをするはずがない!という謎の思い込みのもと、下調べゼロで舐めてかかって向かったのですが、まぁ、見ましたね。この世の地獄。
激烈な斜度が延々と続き、たまらず押し歩きです。そして、地獄ポイントは斜度だけに留まりません。ミニベロを殺す恐怖のデコボコ舗装路面が、延々と続きます。
アップにするとこんな感じ。ダウンヒルですらつらい。
そんな地獄ロードを耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、ようやく辿り着いたドンデン山からの絶景を写真に収めました!どうぞご覧ください!!
驚きの白さ!!
散々キッツイ思いをした挙げ句、この結果。完膚なきまでの完全敗北に、涙も涸れ果てましたとさ。
終了!!