スペシャライズドが一部地域で完成車のオンライン販売・自宅への直接配送サービスを開始することになりました。「Ship to Home」と「Specialized Delivery」という2つの新しいサービスが、まずは2月1日から米国で始まります。2つの海外メディアの記事からその概要をまとめてみました。
出典1 Specialized to add consumer-direct sales on Feb. 1 (Bicycle Retailer)
出典2 SPECIALIZED IS GOING CONSUMER-DIRECT FOR COMPLETE BIKES (CyclingTips)
従来型の購入パターンも継続
- スペシャライズドは2月1日からダイクレクト・トゥ・コンシューマー型の完成車販売形態である「Rider Direct」プログラムを開始する
- ただしE-BIKEは対象外
- およそ10年前、同社創業者のマイク・シンヤードはディーラー向けのイベントで「我々がネットで自転車を売ることは絶対にない」と語ったことがある
- 同社は1月27日に開かれた小売業者とのZoom会議で、どのような販売パターンがあるかを説明した
- (パターン1)顧客はスペシャライズド・ディーラー・ショップ(独立店または直営店)に足を運んで買うこともできる(ディーラーは従来通りの販売マージンを得られる)
- (パターン2)顧客は同社ウェブサイトで欲しいバイクを探し、在庫のあるディーラーをロケーターで探して問い合わせることもできる
- (パターン3)顧客は同社サイトから直接購入し、Tier 1またはTier 2に属する最も近くのディーラーまで配送させ、そこで「ピックアップ」することもできる。この場合ディーラーは通常マージンの50%を受け取る
- (パターン4)顧客は同社サイトから直接購入し、ほぼ完成した状態のバイクを自宅に配送してもらうこともできる。Canyon等と同様のパターンで、この場合同社はソルトレイクシティとオハイオの施設で完全な組み立てと調整を行い、大型の箱で顧客に配送する。パッケージにはツールとQRコードが含まれ、顧客は動画を見ながら最終的に組み立てることができる。問題がある場合はライダー・ケア・スペシャリストが電話対応したり、近くのリテイラーを紹介したりできる。これを「Ship to Home」と言う
- (パターン5)他にも同社ウェブサイトで購入した後、ディーラーに自宅まで配送してもらうことも可能。これを「Specialized Delivery」と言う。ディーラーは配送とフィッティングを行い、通常マージンの75%を受け取る(現在の「クリック・アンド・コレクト」と同様のマージン)
- パターン4と5では、顧客が支払う金額は同じ(通常価格プラス50ドルほど)
- Trekをはじめ大ブランドの多くがクリック・アンド・コレクトを提供しているが、ディーラーの関わりなしに自宅まで完成車を配送するオプションを提供するのは、大ブランドとしてはスペシャライズドが初となる
- スペシャライズドは近年、米国で小売店の急速な買収を進めるTrekやPONグループ(CerveloやSanta Cruzを傘下に持つ)などの影響で、地域によっては販売網を失っていた
- 同社は他のブランド同様、販売業者をそのコミットメント度合いによって複数のティア(階層)に分けているが、スペシャライズド自身が最上位のTier 1ディーラーとなるだけでなく、ダイクレクト・トゥ・コンシューマー販売用に全体の15%の在庫を確保できるようになる
- 同社は現在の同社トップディーラーにとっての直接の競合となるだけでなく、車体の割り当ての面でも有利になる
販売店網の減少が背景か
Canyonのようなダイクレクト・トゥ・コンシューマー・モデルの業績が好調であることに加え、TrekやPONグループの路面店買収による販売網の減少が背景にありそうですね。
消費者側から見ると選択肢が増える分、恩恵のほうが多いのですが、スペシャライズド製品を扱うショップにとっては利益率が低くなるのは恐らく間違いなく、しかもショップが今年度分の在庫確保を完了したタイミングでこのサービスが発表されたため、米国ショップでは不満の声も聞かれているそうです。
スペシャライズドとしては生き残るために仕方のない戦略であることもわかりますが、直営店以外のディーラーがこの動きを良しとするかどうか、2023年以降の展開が注目されるところです。