高速鉄道への自転車持ち込みについて:イタリアの事例紹介

最近新幹線の新たな荷物置き場についての話題が沸騰していますね。

東京以西で新幹線輪行するサイクリストに暗雲が立ち込めています。JR東海(東海旅客鉄道)・JR西日本(西日本旅客鉄道)・JR九州(九州旅客鉄道...

旅行者としては荷物置き場が増えるのは歓迎ですが、システムの煩雑さや、現場の負担、それに輪行をする我々サイクリストへの利便性等々、なんかズレてんなぁ…と思うことも多々あります。

良い機会なので、私が経験したイタリアの高速鉄道Frecciarossaの荷物(と自転車)事情についてご紹介します。あくまで経験なので、統計等にそぐわない記述はご容赦ください。

イタリアでは日本と同様に、飛行機、電車、バス等の交通手段が揃っていますが、特に北イタリアでは電車が発達しており、高速鉄道が速さを求める旅行客のメインの足となっているように見受けられます。

高速鉄道は全席指定で、チケットは当日でも購入できます。時間帯や場所にもよるとは思いますが、私が見た限り乗車率はほぼ100%です。自由席に立ち乗りができないのが新幹線と違うところです。

乗客が持ち込む荷物サイズは?

3辺の合計が115cm以内、いわゆる「機内持ち込み」サイズのスーツケース(以下小型荷物)と、3辺の合計が160cm以内、いわゆる「預け荷物」サイズのスーツケース(以下大型荷物)、両方あります。

割合は常に小型荷物が多いですが、旅行ハイシーズンには海外からの観光客が持ち込む大型荷物が非常に増えます。

この辺は事情は日本と同じかと思われます。

荷物の置き場所は?

小型荷物に関しては、置き場所は豊富にあります。

  1. 背中合わせの座席の隙間
  2. 頭上
  3. 客車内外の棚

イタリア(とドイツ)の高速鉄道は、座席が回転しないかわりに予め向かい合わせの席が設けられています。向かい合わせでない席よりも、このようなテーブル席の方が数が多いです(そして各席にWi-Fiと電源、ゴミ箱完備!)。

注目していただきたいのは、背中合わせの隙間がきちんと荷物置きとして設定されており、走行中に荷物が通路に飛び出さないようにキャスター止めまでついているところ。中型荷物までは十分入ります。

頭上は新幹線と同様に棚がありますが、盗難リスクが高くなることでしょう。私は背が低いので、いつもこの背中合わせスペースの早い者勝ちを狙いにいきます。

ビジネスクラスの車両ではこのスペースは、大型荷物が置ける程度まで広がります。

大型荷物はさすがに席の隙間や頭上には置けないので(屈強なお兄さんが持ち上げているのを見たことはありますが)、各客車の内外に設けられた棚を使用します。

Gallery | Hitachi Rail SpAより。ちなみにこのFrecciarossa 1000は日立製です。

見にくいですが、右手前にあるのが客車のドアを入ってすぐの場所にある棚。大体すぐにいっぱいになります。盗難リスクがあるので、チェーンロックがあると安心かも。

Frecciarossa
This photo of Frecciarossa is courtesy of TripAdvisor

こちらはデッキから客車エリアに入る直前にある棚。まさに大型スーツケースのために場所がとられています。

で、自転車は?

イタリアの高速鉄道では、分解・梱包すれば無料で車内に持ち込めます。

ただし、上記の置き場所にはフィットしないことが容易に想像できるので、車両の連結部や、食堂車の邪魔にならないところに、乗務員さんのOKをもらって置かせてもらうことになります。

参考 Trenitalia 自転車持ち込みについて(英語)

高速鉄道で自転車を運んでいる人は滅多に見かけませんが、そのような人はほぼ例外なく、飛行機輪行でも使用するシーコン級のバッグを使用しています。

ちなみに鈍行列車では分解が必要ないケースがほとんどです。

鈍行での輪行。ぶらーん。

PBP時、フランスの高速鉄道TGVでの輪行で日本の輪行バッグが大注目されたとおっしゃる参加者のツイートを多く見かけましたが、それは何よりも、欧州では輪行バッグが必要となるシーンが高速鉄道しかなく、そのため(薄手の)輪行バッグというものがそもそも市場に存在しないからなのです。

閑話休題。

ドイツ鉄道Deutsche Bahnが高速鉄道ICEの新型車両に自転車置場を導入したことが、去年ちょっと話題になりました。

参考 Deutsche Bahn | 新型車両ICE 4の紹介記事(ドイツ語ですが画像で把握できると思います)

ICEにて。ミュンヘンからヴュルツブルクまで、特急で2時間の旅。手前は「姉さん」の愛車、手前から2台目のBianchiが我が愛車水縹号。

自転車置場が導入されたのはミュンヘン・ハノーファー間限定、車両数も少ないのですが(2018年8月当時)、ロマンチック街道を走るためにたまたま該当部分でICEに乗ったため、ありがたく輪行に使わせていただきました。お値段は9ユーロ、予約制です。

で、高速鉄道はお高いの?

新幹線と比較すると、圧倒的に安いです。

例えば、執筆当時(9月1日)から2週間後の9月15日日曜日、お昼の時間帯の、幹線ルートであるミラノからフィレンツェの値段を見てみましょう。距離にして300km、東京から名古屋あたりまで、所要時間は1時間40分です。

Trenitaliaより。下2行は30歳以下と60歳以上向けの割引システム。

横が各車両クラス、縦が割引です。

割引チケットのEconomyとSuper Economyは数量限定で、時間の変更に回数制限があったり、払い戻し不可だったりと、いろいろ制約がありますが、確実にフィックスされた旅行ならば非常にお得です。うまくすればメルマガクーポンでここからさらに40%割引なんて荒業も可能です。つまり、運がよければ18ユーロ=2000円程度で東京-名古屋間を動けるのです。

これらが売り切れた場合(人気エリア・時間帯だとすぐなくなる)や前日だと、基本料金のBaseしかありません。こちらは相当高いです。

欧州における電車と自転車の関係の展望

私は交通専門家でも何でもないので、あくまで所感ですが…

欧州では自転車の市民権が日本よりも非常に高いこと、鈍行列車で自転車(シティサイクル、ママチャリ)を運ぶのがごくごく当たり前であること、また、特にドイツでは(ピチピチのジャージを着てレースに出るのではなく、あくまで余暇の)レジャーとして自転車を楽しむことが一般化していることから、この「高速鉄道にそのまま持ち込み」の流れはおそらく広がっていくのだと思います。

(ちなみに上のICEの自転車置き場は、後に全部MTB寄りのツーリング車で占められました。ロードバイクは我々のみ)

上記のドイツ鉄道の発表を受けて、「なんで自転車本場国のイタリアがドイツに遅れをとってるんだ! イタリアのFrecciarossaでもさっさと導入しろ!」とお怒りのイタリア語記事もあり、一サイクリストとして私も首がもげるほど頷きました。

欧州は、都市計画、人口密度等々、日本(の特に東京)とは異なる要素が多すぎて比較は簡単にはできず、私も手放しで欧州礼賛をするわけでもありません。

が、東京オリンピックを控え、日本がインバウンドを政策として掲げる以上、日本が誇る新幹線への荷物持ち込みの利便性・柔軟性の向上、それに一サイクリストとして、環境問題対策・健康増進政策としての自転車の普及を、こういう小さいインフラの面から進めていって欲しいなぁと、切に願う次第です。

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