Audibleは「耳で聴く本」。人気のベストセラー書の「朗読版」がいろいろと用意されています。スマホアプリやウェブブラウザで聴くことができます。
Audibleはむかしからたまに聴いているのですが、最近、インドア・サイクリングの「Zwift」をやりながら聴くようになりました。
その理由と、Zwiftしながら聴く時の音量設定のコツ、そして最後に私がおすすめの本を2冊、紹介したいと思います。
長時間ライドの時は時間を有効活用したい
異論はあると思いますが、Zwiftは基本的に、飽きません。画面も面白いし、BGMの自然音が秀逸なので、大音量で楽しんでいます。
しかし30分程度のライドであれば問題ないのですが、60分や90分走る時は、自宅での自由時間が限られていることもあり、たまに「テレビのニュース見よう」と、パソコンディスプレイの隣にポータブルテレビを置いて、両方の画面をちらちらと眺めながらライドすることがあります。
さらに最近、Audibleで同時に読書、ならぬ「聴書」もしたいと思い、よく聴くようになりました。この時、画面はずっとZwiftの風景を見ています。
ZwiftとAudibleの両方の音を聴きたい
ただ、初期設定は少し工夫が必要でした。私は「Zwift Companionアプリ」で「MacのZwiftアプリ」に各種信号を束ねて送っています。Zwift画面操作も、iOSのアプリを使います。
Audibleは、ウェブブラウザからもストリーミング再生できるのですが、これもやはりハンドルにマウントしてあるiPhoneで早送り、巻き戻し、音量調整といった操作できたほうが便利です。
しかし最初にやってみた時に気付いたのが、「Zwiftの自然音BGM」と「Audibleの音量」のバランスの問題です。
Zwiftの自然音は好きなので、少しでもいいから聞こえる感じに流しておきたい。と同時に、Audibleの朗読もちゃんと聞こえるように音量設定したい。
Zwiftの音量コントロールは、Zwiftアプリ内と、Mac本体の外部音量出力とで調整できます。
Audibleはどうすればいいんだろう。音、どこから出せばいいんだ…
やってみたら、意外に簡単でした。iPhoneをパソコン用のBluetoothスピーカー(下のCreative T12 Wirelessというもの)に接続します。すると、Audibleの音はこのスピーカーから出ます。
Zwiftの自然音は、Zwiftアプリ経由でMacに送られて、スピーカーからはZwiftとAudibleの音がミックスされて出力されます。
Mac本体でZwiftの音量を少し控え目にしておきます。同時に、Audibleアプリの音量調整ボタンで、ここを大きめにします。
結果、バッチリでした。Zwiftの画面内を走る自分のアバターを眺めつつ、ロードノイズや鳥の声も聞きつつ、Audible本を快適に聴くことができます。
年々、読書の時間が減ってきているのを感じるので、新しい考え方や情報をインプットする良い方法です。
しかも「音で本を聴く」のと「目で読む」のとはかなり違った体験で、不思議な集中力を使うので、内容もよく頭に入ります。外での実走時にこれをやるのは危ないのでおすすめしませんが、インドアサイクリングであれば安全です。
外で走る時は、自然音だけを十分に楽しみます。室内でZwiftを長くやる時は、Audible本で少し勉強します。いい感じですよ。
最近聴いている本
最近私が聴いているAudible本を2冊、紹介します。
嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え
まず「嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え」という本。心理学者アルフレッド・アドラーの本自体は昔読んだことがあり、基本的な考え方は知っていたのですが、先日ベストセラー1位になっていたのであらためて買ってみました。
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この本、「哲学者と若者」の対話形式になっていて(いわゆるソクラテスの「産婆法」です)、おもしろく聴けます。耳で聴くAudibleにぴったりの形式と言えると思いました。ラジオドラマみたいな感覚です。
この本の大きいテーマを一言で言うなら、「人間の行動は過去(あるいは「原因」や「トラウマ」)によって決定されるのではなく、目的によって決定されている」というものです。
わかりやすい例をひとつ挙げてみます。
居酒屋さんで、店員さんが間違ってある人にビールをこぼしてしまったとします。
そして、その人が激怒したとします。もう半端なく激怒したとします。そんなに怒らなくてもいいじゃないか、というくらい、憤怒爆発だったとします。
その人が激怒した理由は、何でしょうか。
本人はきっと、「ビールをこぼされたから」だ、それが原因だ、と主張するでしょう。
しかしアドラーの考え方では、その人が激怒したのは「激怒したかったから」であり(目的)、「ビールをこぼされた」ことは、彼が激怒するための「手段」として使われた、ということになります。
つまりこの人は「いつも何かに不満を持っていて、怒りを爆発させる対象を探している」のです。
いつも他人の揚げ足を取り、難癖を付ける対象を探しているのです。
そして、怒りを爆発させる対象は、この人にとってはぶっちゃけ何だっていいのです。ビールをこぼされた、でも、マスコミがくだらない、でも、テレビ番組がつまらない、でも、政治がひどい、でも、何でも良い。
この人の目的は「怒りをぶちまけること」そのものなので、その対象は、実は何でも良いのです。
別の言い方をすると、この人は「怒る」という目的に、知らず知らずのうちに縛られていることになります。
この人の生き方が変わるために必要なのは、ビールがこぼされないことでも、マスコミが公正な報道をすることでも、政治が良くなることでもありません。
自分を縛っている「目的」と向かいあい、そこから逃れることです。
SNSでは、よくこういう感じの「謎の正義感に駆られた義憤bot」のような人が、「怒りや苛立ち」を朝から晩までツイートしているのを見かけますよね。
そういう人達自身は、より良い人生を送るためには「自分は実は怒りを爆発させることを目的に生きてしまっているのだ」ということに気付く必要があります。
これは、そういうことについて書かれてある本です。面白いですよ!
いま自分はあまり幸せではない、と感じている方、何かに行き詰まっている方は、是非聴いてみて下さい。ベストセラーになっている理由は、よくわかるような気がしました。
勉強の哲学 来たるべきバカのために
もう一冊紹介したいのは、哲学者・千葉雅也氏による「勉強の哲学 来たるべきバカのために」という素晴らしい本です。これは、書籍でも持っているのですが、私は千葉さんのファンなので、Audible版を見つけた時に速攻でポチりました。
この本は、上のアドラー思想の紹介書籍よりも、少しだけ難しい内容です。しかし「SNS疲れ」している人には激しくおすすめしたい一冊です。
そして、「勉強することによって、自分を変えたい。今の自分から脱皮して、変身したい。」と考えている人にとっては、バイブルになりうる本だと思います。
著者の千葉雅也氏は現代フランス哲学の研究者で、本書のバックグラウンドにあるのもフランス系の革新的で難解とされる何人かの哲学者の思想を背景にしているのですが、あれをこれほどわかりやすく説明できるものか、と感心するくらい、わかりやすく書かれています。
この本に何が書かれているかを乱暴にまとめると、「人は勉強して新しい自分になる時、進化するとき、まわりから見ると『ノリの悪いヘンな奴』になる。しかし、その『ノリの悪さ』(=バカになること)は、避けられないものであり、気にする必要はない」という内容です。
ある共同体(集団)の中で、誰かが何か変わったことをやりはじめる。ヘンなことをはじめる。
すると、その人は目立ちます。そして、集団は目立つ人を叩きます。出る杭は打たれる、というやつです。
いわゆる「同調圧力」というものです。日本人はもともと「みんなとは違うことをやりはじめる」人間に対しては非常に不寛容で、SNSはこの同調圧力を増幅させる装置なので、日本のTwitterもFacebookも2chのような匿名掲示板も、「変わったものを叩くための装置」として優秀な機能を発揮します。
そのため人は、みんなと同じようなことを言わないといけなくなり、みんなと同じように世界の様々な不条理に対して憤らないといけないし、自分の投稿に「いいね」がつかないと、自分は外れているのではないか、滑ってているのではないか、と不安になり、焦ります。
そんな中、新しい思考を得るべく勉強している人、新しい価値を生み出そうとしている人、進化の途上にある人は、その言動がぎこちなくなります。すると、
なんだあいつ、おかしなことやってるぞ、香ばしい奴www
みたいなふうに思われます。俺たちと違う奴がいるぞ。俺達のテイスト、俺達のルールから外れた、ヘンな奴がいるぞ。
SNSや匿名掲示板といった共同体の、格好の餌食となります。
千葉氏の「勉強の哲学 来たるべきバカのために」は、そう思われるのは、「変身」しようとしている人間にとっては当たり前のことであり、何も恐れる必要はないことを教えてくれます。
アドラー本と、千葉雅也氏の本は、全く違うものですが、どちらも年々窮屈に、そしてつまらないものになりつつあるインターネット世界を生きる上で、大きいヒントを得られる本です。
別の言い方をすると、どちらの本も「変身」というテーマ、「自由になる」というテーマを扱っている点で、不思議な共通点があります。
深くは勉強しないというのは、周りに合わせて動く生き方です。
状況にうまく「乗れる」、つまり、ノリのいい生き方です。
それは、周りに対して共感的な生き方であるとも言える。
逆に、「深く」勉強することは、流れのなかで立ち止まることであり、それは言ってみれば、「ノリが悪くなる」ことなのです。
深く勉強するというのは、ノリが悪くなることである。
(…)
単純にバカなノリ。みんなでワイワイやれる。これが、第一段階。
いったん、昔の自分がいなくなるという試練を通過する。これが、第二段階。
しかしその先で、来るべきバカに変身する。第三段階。
「勉強の哲学 来たるべきバカのために」より
ピンと来た方は、是非読んでみてください。必要のない人には一生必要がないですが、必要な人には一生の先生になってくれるような本です。
Audibleは最初の1ヶ月、無料でお試しできます。無料体験中に退会すれば翌月からの料金は発生しないので、まず無料で試してから判断するのが良いでしょう。