昨年(2021年・令和三年)11月1日から新しい500円玉の流通が始まっています。旧500円玉は2021年3月時点で50億枚が流通していますが、21年ぶりの更新となる新500円玉は昨年中に2億枚が発行されたそうです。私の小銭入れにもその姿が確認される機会が増えてきましたが、今のところはあまりありがたくない存在です。
新500円玉と旧500円玉の違い
新旧500円玉の違いを拡大写真で観察していきましょう。基本的なデザインは大きく違わないので、ぱっと見は気付かなかったりしますが、いくつかの大きい違いがあります。
まず色味が少し違います。新500円玉(写真左)は外周部と中心部の素材が同じではなく、発色が異なります。ヨーロッパの1ユーロ硬貨のコントラストを薄くしたような仕上がりになっていて、高級感がありますね。旧500円玉では素材に「ニッケル黄銅」のみが使われていましたが、新500円玉では「ニッケル黄銅・白銅・銅」の3種類から出来ています。
▼ 写真はいずれも筆者がマクロレンズで撮影
肉眼で確認できるもう1つの大きい違いが「ギザ」。「異形斜めギザ」という仕様で、時計の12時・3時・6時・9時のあたりでギザの幅が太くなっています。これらの仕様変更はすべて偽造防止のためだそうです。
さらに「潜像」と呼ばれる、一定の角度でしか見えない文字が仕込まれています。表の「500」という数字を手前側から斜めに眺めると「500YEN」という像が見えます(肉眼では少し判別が難しい)。これは旧500円玉では「500円」(最後はYENではなく円)という像でした。
今度は上から覗き込むと(天地を逆にすると見やすい)「JAPAN」という文字が見えます。これは旧500円には仕込まれていない文字列です。上と下の写真でもクッキリと写せてはいませんが、目を少し細めて見ると潜像が浮かび上がってくると思います。
重量は新500円玉が7.1gで、旧500円玉より0.1g重くなっています。他にも裏面の上下2箇所に「JAPAN」・左右2箇所に「500YEN」という「微細文字」が加工され、桐の葉には「微細点」と呼ばれる穴加工、「日本国」と「五百円」の刻印の背景には「微細線」が入っています(髪の毛よりも細い線だそうです)。直径自体は変わらず、どちらも26.5mmとなっています。
新500円玉を認識しない自販機があと2年は存在する?
さてこの新500円玉ですが、現時点ではすべての自動販売機で使えるわけではないそうです。新500円玉を認識するためには「硬貨選別装置のセンサーの更新」が必要と言われています。
大都市の主要な公共交通機関や全国の大手コンビニ、ATMなどでは対応が完了しているところも多いようですが、自販機では未対応のものがまだ数多く残されていると聞きます。その理由としては、
- 機器更新にはそれなりのコストがかかる
- 2024年には新しい紙幣が出るため、更新はその時に同時に行いたいという意向もある
- 事業者が更新するつもりでも、半導体不足のため更新スケジュールに遅延が発生している
- そもそも新500円玉がどれだけ流通するかがまだわからないため、コストをかけて機器を今すぐ更新すべきかの判断が難しい
等々があるようです。
筆者は昨年暮れ、地方の山の中の自販機で水を買おうとし、新500円玉を(当時はそれと気付かず)入れたところ、やはり認識されずに返却されてしまいました(他に硬貨は持っていませんでしたが、紙幣があったので事なきを得ました)。普段は飲料を買う時のために100円玉も数枚持っていることが多いのですが、その日に限って500円玉(しかも新タイプ)1枚のみ!
サイクリングではICカードが使えない時に備えてキャッシュも当然持っておくべきですが、安心のために携帯していた500円玉がいざという時に使えないとなると、結構困りますよね。最悪の場合、あと2年は「新500円玉を認識しない自販機」が存在し続けるかもしれないので、100円玉も数枚携帯するようにしておきたいところですね。