落車で顔から血をダラダラ垂らした状態で自転車を押し歩いている時、誰一人として声をかけてくれなかった。うちの近所に限ったことかもしれないが、そういう人には声をかけてあげて下さい! というサイクリストによる訴えが海外掲示板に投稿されています。しかし彼を心配してくれなかったサイクリスト達は、血も涙もない非情な人々だったのでしょうか?
サイクリストのコミュニティに、愛や優しさは存在しないのか… 人間心理についての少し面白い観察が展開されているので、ご紹介します。
誰も心配してくれなかった!
スレ主さんは次のように経験談を語っています。
数日前、私は舗装されたトレイルで自転車から投げ出されてしまいました。完全に自分のミスで、周りには誰もいませんでした。ヘルメットはかぶっていましたが、それでも頭を強打しました。
私は脳震盪を起こし、数分間、立つことも見ることもできませんでした。立ち上がれるようになると、私の顔が血だらけであることは明白でした(地面やウェアやバイクに血が垂れていた)。1マイル強歩くと自転車に乗れるようになったので、自宅まで最後の2マイルを乗って帰りました。
顔が半分血まみれで、恐らくショック状態で自転車を押し歩いている時、昼の明るい日差しの中、6〜7人とその道ですれ違いました。誰一人として何も言いませんでしたし、私が大丈夫かどうか確認してくれる人もいませんでした。
こうした状況に陥っている人には、大丈夫かどうか聞いてください。押し歩きの最初の1マイルで、私はまだ少し目眩がしていて、ものをはっきり考えられず、気絶しそうなのかどうかもわからない状態でした。もし誰かが5分程度、隣を歩いていてくれたらとても安心できたと思います。
これは望みすぎではないと思いますし、私のような状況の人には大変大きい違いになることでしょう。これは私が住んでいる土地特有の経験かもしれませんが、他の土地では人々がもっと同情的であるといいなと思います。
ちなみに私に後遺症は残らず、目のまわりを縫ったのと、親指の骨折で済みました。2週間後にはまた自転車に乗れると思います。
「無視された」2つの理由
これに対し、Aさんとスレ主さんが次のような会話を交わしています。
(Aさん)素晴らしい指摘ですね。そこから導かれる「系」(=corollary, 必然的な帰結)は、あなたがもし怪我をして誰かがあなたのほうに歩いてくるのが見えたなら、(自分から)助けを求めて下さい、ということです。どれだけ多くの人が「気付かされる」必要があり、(気付きさえすれば)あらゆる手助けをしてくれることに、あなたは驚くことでしょう。
(スレ主さん)その通りですね、私もそれに同意します。でもあの時、私は脳震盪の後にものを明瞭に考えられず、言葉を発することが大変困難な状態だったのです。何か意味のあることを口にできたかもしれない頃には、助けが必要な時期は過ぎていたんです。
(Aさん)回復しつつあるようで嬉しいです。脳震盪は軽く見ないで下さいね、脳はデリケートですからね。
なるほど、言われてみると確かに、ライド中はそれなりのスピードが出ていたり、風景に見とれていたり考え事をしていたりで、向こうから自転車を押し歩いて来る人の顔が血だらけかどうか気付かないこともあると思います。昼間のサイクリングロードでも相手の異常に気付かないことはあるでしょう(勿論、気付いたほうが良いけれど)。
これとは別に「気付いてもあえて声をかけない」という意見も出ていました。BさんとCさんです。これまた面白い。
(Bさん)「気付かされる必要がある」ということだが、それだけじゃないな。もし俺が顔中血だらけのサイクリストを見たら、その人はクラッシュした後、自転車が壊れてしまったから、歩いて家に帰ることで自分に残された最後の威厳を保とうとしているだけだろう、と推測すると思う。もし座っていたり、横になっていたりしたら、大丈夫かどうか聞くさ。
(Cさん)その通りだな。思うに、スレ主さんが「誰も助けてくれない」と他人を非難するのは少し筋違いなところがあると思う。俺も顔面血だらけで、プライドが本当にズタズタにされた状況がある。「大丈夫ですか」という言葉は、その時俺がいちばん必要としないものだったよ。
しかし本当に大惨事になって、救急車が必要になった時は、トレイルにいる人に大声で助けを求めないといけなかった。すぐに助けてくれたよ
これも、な、なるほど! と思わされるところはありました。つまり「落車してカッコ悪い思いをしながらも、最後の力を振り絞ってプライドを保つために歩いている…」人に「大丈夫ですか?」と声を掛けたら、それはその人のプライドにとどめを刺してしまうかもしれない。気の毒だが、そっとしておいてやるか… ある意味これも「優しさ」だったりするのでしょうかw
とはいえ、です。スレ主さんのように、頭を強く打ってしまい、助けを求めたくとも言葉を発することができない状況に陥っているケースもありうるというのは、頭に入れておきたいですね。
血を流しているような人には「余計なお世話」と思われたとしても、とりあえず声を掛けたほうが良いでしょう。それで「う、うるせー!ほっとけ!」と叫ばれたなら「フン… 次はせいぜい転ばないようにな…」と返して元気付けてあげましょう(アドレナリンが出て無事家まで帰れるかもしれない)。
サイクリングロードでもバイクを押し歩いている人はハンガーノックになっていたり、メカトラに見舞われたりしているかもしれないので「パンクしましたか?」と声を掛けるのが良いかもしれません。「大丈夫、大丈夫!」と言っている人も、実は大丈夫でない場合もあるでしょうから、真に受けず様子で総合的に判断したほうが良いでしょう。
結局のところスレ主さんが顔から血を流して歩いていても心配されなかったのは、すれ違ったサイクリストが必ずしも意地悪だったのではなく、単に気付かれなかっただけ、あるいは「武士の情け」で「おまえはよくやった… 俺は何も言わん。生きて帰れ…」的な反応だったのかもしれませんね。