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サイクリストはあまりならない?貧血の原因を考えてみた

突然ですが、サイクリストの皆さんは貧血(を思わせる)症状を経験されたことはありますでしょうか。例えば、疲れが取れない・倦怠感が強い・めまい・立ちくらみなど。「よくなるよ〜!」や「あんまりならない」等々、是非教えてください。

疲れがたまっている人

photo: Andrea Piacquadio

私自身は、サイクリング活動が原因と思われる貧血様症状に悩まされたことは、あまり記憶に残っていません(なぜ貧血「様」と書くかというと、血液検査をしなければ本当のところはわからないからです)。にもかかわらず、最近どうも「貧血なのでは?」と思うようになったので、調べつつ考えてみたことについて書いてみます。

注:本記事は医療情報ではなく、1個人による体験とリサーチに基づく主観的考察です

貧血の原因

貧血とはそもそも、

…血液が薄くなった状態である。医学的には、血液(末梢血)中のヘモグロビン(Hb)濃度、赤血球数、赤血球容積率(Ht)が減少し基準値未満になった状態として定義されるが、一般にはヘモグロビン濃度が基準値を下回った場合に貧血とされる。医療業界では、アネミー、アネミ、アニーミア(Anemia)ということもある(Wikipedia

と定義されており、

  • 失血・出血することによって血液量自体が減ったり、
  • 運動に必要な赤血球の生産が追いつかない状態になったり、
  • 赤血球を破壊するような運動を長時間継続すると発生する

とされています(出典:Merck他)。ヘモグロビン(赤血球の中に存在するタンパク質)や赤血球の数(濃度)と関係があるようです。

ヘモグロビンは「酸素の運搬」を担うため、これが不足すると運動パフォーマンスに影響します(筋肉に力が入らない・頭がぼーっとする等々)。多くのスポーツで禁止されているEPO製剤(エリスロポエチン)や自己血輸血によるドーピングは、ヘモグロビンを増やすことが目的なんですね。プロサイクリング界でも暗黒の歴史が多々あったのは皆様御存知のところと思います。

私がなぜ貧血?になったか

さて最初に書いたように、私はキツい峠越えを含むハードめなロングライドやオフロードライドでも、普通の疲労や筋肉痛は経験しても、極度の倦怠感・疲労感が3日以上続いたり、翌日に立ちくらみやめまいがして起き上がりたくない、ということは、これまでなかったのです。

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それが、最近増えてきた。変わったことと言えばここ数ヶ月、週1の「たっぷりサイクリング」に加え、週1の「たっぷりハイキング」も活動に加っていること。それ以外の運動はポタリングと、軽い筋トレです。

この「ハイキング」については、歩行時間も距離も伸びてきました。獲得標高もかなり増えています。そして「どうもこれはハイキングに起因する貧血かな?」と思うようになったのは、「溶血性貧血」や「行軍血色素尿症」という言葉を目にしてからです。

「溶血性貧血」や「行軍血色素尿症」は、バスケットボール・バレーボール・剣道や陸上選手の多くが経験するのだそうです。なぜか。足裏を何度も地面や床の上にドンドン叩きつけることにより、その周辺の赤血球が破壊されるから、らしい。

「行軍血色素尿症」の「行軍」は軍隊の行進から来ていて、1881年に最初に報告されたものだそうです(出典:Mechanical hemolytic anemia – Wikipedia)。

ハイキング中に足をドンドン叩きつけるような歩き方は、膝を壊すので勿論やらないのですが、歩行中はどうしても足裏に衝撃が発生します(特に下り)。

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トータルの運動強度やカロリー消費は、ガチサイクリングとあまり変わらないと思うのですが、サイクリングでは経験したことのないタイプの疲労感・脱力感を覚えるようになったのです。

さらに、大きく割れたり、スプーン状に大きく変形した爪が出てきました(加齢では片付けられないレベル)。これは「スプーンネイル」と呼ばれ、鉄欠乏性貧血の症状の1つなのだそうです。

サイクリストも貧血になりうるか

考えてみると、サイクリングでは「ペダルを踏む」という表現こそあるものの、足裏で(ずっと)ペダルを打ち付けるわけではありません。そのため足裏で赤血球が破壊されることによる「溶血性貧血・行軍血色素尿症」は少ないのではないか。

SHIMANO PD-ES600

ある程度の衝撃があるMTBでは、少し影響はあるのかもしれませんが、足裏を継続的に何時間も硬いものに叩きつける、という活動ではありませんよね。

しかし、他の原因によるサイクリスト貧血は、ありうるのだろうか…

プロロードレース選手における貧血について、海外情報も含めていろいろ調べてみたのですが、赤血球の重要性について触れているものはあっても「ロードレーサーの貧血対策」といったテーマの考察は、あまりないようです(サイクリングに特化した記事は少ない)。

ただ、高所トレーニングを行う場合は、薄い酸素に順応しようとして赤血球(のヘモグロビン)の製造が活発になるため、鉄分が枯渇しがちなので注意が必要である、という主旨の記述は見かけました。

参考1 WHY LOW IRON LEVELS MIGHT BE AFFECTING YOUR PERFORMANCE
参考2 THE IMPORTANCE OF IRON FOR CYCLISTS

また、スプリンターやヒルクライマーのことを考えてみると、筋組織の破壊は絶対に発生するはずじゃないですか。その過程で、周辺の毛細血管に圧力が加わり、赤血球の破壊が発生してもおかしくないはない、と思えるのですが、どうでしょうか。サイクリングでも貧血になりうる、ことは十分あるのではないでしょうか。

赤血球を増やすには

鶏レバー

いずれにしても赤血球が破壊された場合、その主要成分であるヘモグロビンを製造するための鉄分が必要になります。足裏への衝撃が少ない場合でも、多量の発汗によって鉄を含むミネラルが体外に流出する。筋量が増加すれば、酸素運搬量も増えるだろうから必要な赤血球量も増える。あるいは食事でそもそも必要十分な量の鉄分が摂取できていないこともある…

では鉄分はどう採るか。その鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」という2種類があるらしい。「ヘム鉄」は豚や鶏のレバー・かつお・しじみといった動物性のものに多く、「非ヘム鉄」はほうれん草・小松菜・ひじき・大豆等に含まれる。吸収率が良いのは「ヘム鉄」のほう。

というわけで、旅先でおいしそうなほうれん草を見つけては買ってきて、おひたしを作って毎日食べるようになりましたが、劇的な改善はなし。吸収率が低いのか。家でレバー料理を作るのは少し難しい(串焼き屋さんに行けば良いんですけどね)。仕方なく、時々ですが、サプリでヘム鉄を補っています(これでだいぶ改善された…のですが、あくまで私の場合。爪の凹みも治ってきた)。

が、サプリで安易にヘム鉄を補って良いのか、という問題があります。そもそも、貧血「様」の症状があるからといって、本当に貧血かどうかは、血液検査でヘモグロビンとヘマトクリットの値を調べなければ、わからない。鉄分が十分に足りているのに鉄を摂取すると、今度は鉄過剰症といって、別の病気になる恐れがあります。

そのため「何か貧血っぽいかな」と感じたからといって、サプリで鉄分を長期摂取するようなことはやってはいけないようです(医師の指示がある場合は別)。

サイクリングでは陸上選手等に比べて赤血球の破壊は少ないと仮定しても、発汗量は非常に多い。ヘモグロビンの製造に必要な鉄分が大量に失われる可能性がないとは言えないでしょう。すると真夏のロングライドなどで貧血様症状を覚える人がいても、不思議ではないかもしれません。症状が長引いた場合、まずはお医者さんに相談ですね。

酸素運搬に着目した成分を含むとされる「エキストラ・オキシドライブ」を飲んだとしても、酸素を運ぶヘモグロビン・赤血球が足りなければ十分な効果は得られないのかもしれないですね。

たまに居酒屋に行ったら、あるいは高強度ライドの後などは、豚レバーやほうれん草など、鉄を含む料理を注文する良いのかもしれません(採りすぎは勿論ダメ)。

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鉄不足にならないためのアイデア

この記事について「日常的に鉄不足にならないためのアイデア」をTwitterで読者の皆様からいくつかいただいたのでご紹介します。有益なご意見、ありがとうございます!

鉄器を使う

  • 「南部鉄器で緑茶」自分はこれです。
  • 鉄は食べ物土日だけでなく吸収されやすいイオンで考えると言われ、それが鉄板調理。テフロンフライパンは便利だけど貧血対策考えると鉄の調理器具。それからビタミンCと言われて鮮度を考えなくていい柿の葉茶も摂ったりしてます。
  • 鉄茄子(というものが売ってます)をヤカンに入れて沸かした水を、水差し(空いた酒瓶とも言う)に移して飲用にしてます。

共通しているのは「鉄の調理器具を使う」という点。南部鉄器は水や食材中に鉄が染み出して身体に良い、という話は有名ですよね。鉄板でバーベキューするのも良さそうです。なお先に書いた「非ヘム鉄(3価鉄イオン)」はビタミンCや動物性タンパク質と同時接種することで、吸収性の高い2価の鉄イオンになるのだそうです。

また、CBN本館レビューで、亜鉛不足由来の貧血に関する情報もお寄せいただきました(亜鉛の過剰は逆に鉄の吸収を阻害する場合もあるらしいので注意が必要とのこと)。

ところで「鉄茄子」とはなんだろう、鉄分を多く含む茄子の品種があるなんて知らなかった… と調べてみたところ、なんと茄子シェイプの南部鉄器のようなものなんですね! これをヤカンに入れて湯を沸かす、と。見た目も可愛らしくて良いですね。

鉄器の効果をさらに上げる方法

また「調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化」という研究論文も教えていただきました。短くて面白い内容なので是非読んでいただきたいのですが、まとめてみると

  • 鉄器から食材には確かに鉄分が溶出する(しかも大部分が吸収性の良い2価鉄であった)
  • 加熱時間が長いほど鉄が溶け出す量が多くなる(煮込んだ後の放置時間が長いほど良い)
  • 食材を鉄鍋にて油で炒めると、鍋表面が油で覆われるせいか鉄の溶出量は少なくなる
  • 食酢・味噌・醤油を使って鉄鍋で調理すると、鉄の溶出量は激増する。その理由は食酢・味噌・醤油が低pH(酸性寄り)であることが考えられる(=鉄が溶けやすくなる)

ことが示唆されていました。すると、南部鉄器のような鉄瓶でお湯を沸かすのは勿論のこと、鉄鍋で味噌汁や煮物を作ると貧血予防にはかなり効果的なのかもしれないですね。味噌汁の味噌は調理の最終段階で入れることも多いかもしれませんが、健康を考えると少し煮込んで煮物側に寄せたほうがより多くの鉄を吸収できそうです。

というわけで、最近味噌汁作りにハマっている私は鉄鍋の物色を開始したのでした…

最後に、食事に気を使っている方向けに個人的にかなりおすすめの本を1冊ご紹介。料理研究家・土井善晴氏による「一汁一菜でよいという提案」という本です。和食というシステムの高い完成度や、「ハレ」ではなく「ケ」とも言える日々の食事を大事にすることによって力を蓄えること、そこには儀式性があること、等々、私にとって革命的な本でした。

自炊の習慣がない方で、食事によって健康を保ちたいと考えている方は是非読んでみてください。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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