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ヘルメットにプラスする安全装備を、統計データから愚考してみる【下手な考え休むに似たり】

生命維持度ゼロの激坂に挑戦し、
自転車の明日を切り開いていく、
勇気と希望と食欲に溢れるnadokazuです。

というわけで、本日の駄文はこちら!

ヘルメットにプラスする安全装備を、統計データから愚考してみる【下手な考え休むに似たり】

事故多発!単なる偶然!?

このところ自分の身近なところで、自転車乗車中の事故が立て続けに起こっています。

聞いた話の中でいちばん酷いケースが、競技中の落車による肩甲骨の粉砕骨折。手術、入院、そしてリハビリが今も継続中。ご本人はいたって元気に振る舞われているのですが、その背景にある痛みや苦しさを思うと、1日も早い回復を心から願うとともに「もし自分だったら…」と考えずにはいられません。

痛いのはイヤです! 苦しいのもイヤです! 辛いのもイヤです!!
だから事故防止のために、できる限りの努力をしていきたい!

という気持ちが過去最高レベルにまで高まっているのですが、ヘルメットやグローブの装着以外に、できることって何かあるのでしょうか??

どこがヤバイ部位!?事故のデータを調べてみた。

そんなわけで、まずはヘルメット(頭)とグローブ(手)以外に、身体のどこを守ればいいのか、探ってみることにしました。

交通統計/公益財団法人 交通事故総合分析センター」では、「死者及び負傷者 状態別・損傷部位別死亡者数」が公開されています。直近5年(令和2年~平成28年)分のデータを合算して比較すれば、何か見えてくることがあるかも!

本稿で記載した「件数」は、すべてこのデータによるもので「5年分の合算値」です。

Excelデータは有料頒布。購入するにはちょっと…という値段だったので、無料公開されているPDFデータをプリントしてからExcelに打ち直す無駄なアナログ作業を実施しました。嫁様に読み合わせを手伝ってもらったので、転記ミスの可能性は低い…はずです…たぶん。

死者及び負傷者 状態別・損傷部位別死亡者数

ほかにも警察庁のサイトから政府統計の総合窓口(e-Stat)にアクセスすると、同様のExcelデータを無料でダウンロードできます。転記の必要ないかも!

と、期待してデータをダウンロードしたのですが、なぜか一部の年度で重傷者数と軽傷者数が欠けていて、統計データとしての一貫性が思いっきり失われています。結局、転記して読み合わせ。アナログ作業が思いっきり必須でした。デジタル庁ーー!!!

やっぱりヘルメットが重要!超重要!!

それはさておき、集計データを損傷部位別に見てみると、死亡事故では「頭部」がもう圧倒的。実に半数以上の1,332件(58.1%)と、際立って多いです。

自転車乗車中の死亡事故 損傷部位と割合

これだけの数字を突きつけられると、ヘルメットの大切さを思い知らされます。レースにブルベ、通勤通学、買い物、ゆるポタ。自転車に乗るなら、いかなる時でもヘルメット着用は必須!絶対!問答無用!!

KASKのヘルメット

改めて、そう思わずにはいられません。

「胸部」の損傷が、頭部の次にヤバい!

死亡事故件数で頭部の次に多い損傷部位は、「胸部」で277件(死亡事故全体の12.1%)。重傷でも4,953件(重傷事故全体の13.0%)と、かなりの数です。

自転車乗車中の死亡事故 損傷部位と割合(頭部の数値を除いたグラフ)

そうなると、頭部保護の次は「胸部保護」を考えていきたい!となるのが自然。「胸部プロテクターの装着を検討」というのは、手っ取り早くてわかりやすい方向性だと言えるでしょう。

サイクルロードレース

ロードバイク用の胸部プロテクターって、決して一般的ではありませんよね。しかし特に自転車競技など重篤な事故につながりやすい状況での走行においては、これから考えていくべき安全装備の筆頭格だと思っています。

参考 本稿執筆の動機のひとつ。スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ所属 石田眞大選手(@IshidaMahiro)のnote

「溺死」!?自転車で?

驚いたのが「窒息・溺死等」のデータです。頭部、胸部に次ぐ3位の件数(186件)で、死亡事故全体の8.1%を占めます。

当初、自転車で「溺死」という状況が全く理解できなかったのですが、Twitterで指摘していただきました。ありがてぇ…ありがてぇ…。

軽傷/重傷は数件程度で、割合だとほぼ0%。これはそもそも「窒息・溺死等」という、亡くなった方を中心にカウントした数値なので当たり前ではあるのでしょう。それにしたって、胸部損傷での死亡事故と同レベルの件数が発生しているのは恐怖感絶大。

「数十センチの水深でも溺死」って、ニュースなどでもよく目にします。「夜ライド中に落車して水中に転落。起き上がろうとしても、怪我して身動きとれない状況」とか、想像するだけでガクブルです。

柵の無い水辺の道路って、開放感と広々とした景観とが相まって、最高レベルの走行体験ができる場所のひとつだと思っていました。ですが、実はとんでもないリスクを秘めた場所だったなんて…。景色に気を取られて、よそ見しまくるのはダメ、ゼッタイですね。

つくば霞ヶ浦りんりんロード

参考 朝日新聞デジタル 「水深7センチでも溺死 狭い用水路、進まぬ対策」
参考 Yahoo!JAPANニュース 「春先は自転車の水路転落事故が多発 強風に注意 ハンドルをとられる例も」

そういえば、ふと「柵無し用水路が多い」と言われる県と全国で、溺死事故の割合を比較したら結構な差が付くのでは? …とか思ったのですが、県別のデータは無かったので諦めました。

実は大怪我のケースも。「軽傷」の真実!

交通事故の統計資料って、どうしても死亡事故のデータに注目しがちです。もちろん死ぬのはイヤなので、死亡事故を減らす試行錯誤が最重要だと思います。

なんですが!

「軽傷」だって「統計されちゃうレベル」の怪我です。カウントされているからには、お医者様の診療を受けるなどの背景があるはず。そこで「軽傷」の定義をググってみたところ、警察庁のサイトにこんな記述がありました。

交通事故の統計では

「軽傷」(「軽傷者」)とは、交通事故によって負傷し、1箇月(30日)未満の治療を要する場合(人)をいう。

とのこと。

わたくし、「軽傷」って「2~3日あれば治る程度の怪我でしょ?」とか、勝手に思っていました。無知な素人である自分の認識と、実際のところは大違い。もし全治1カ月近い怪我だったら、それって普通に「大怪我」ですよね?

しかも「全治」は「治療を要する日数」なので、「完治」までにはもっと多くの日数が必要。統計上は「全治1カ月以下」でも、実際は診断書の記載よりもずっと長く治療が続いてる…というケースだって、大いにありえるでしょう。

死んだら、痛みや苦しみを感じることはありません(少なくとも現世では)。しかし、怪我をしたら痛くて辛くて苦しい思いをしながら、長い長い時間を過ごすことになります。死ぬのは絶対にイヤですが、怪我をするのもイヤです!!断固拒否!!!

「重傷」はもちろん「軽傷」のデータだって、決して軽んじることはできません。

参考 警察庁 「交通事故統計における用語の解説」

件数の多い損傷部位は、「脚部」と「腕部」!

死亡・重傷・軽傷を合計したすべての事故のうち、最も件数が多い損傷部位は「脚部」で146,630件(全体の37.2%)です。内訳は「軽傷」が93%で、「重傷」は6.98%。死亡に至っているケースは、「0.01%」です。

自転車乗車中の事故 損傷部位「脚部」の状態別割合

「脚を怪我しても、死亡に至ることは滅多にない」こう言い切ってしまってよさそうです。

「脚部」の次に多かったのは「腕部」で、69,671件(全体の17.7%)。「軽傷」が89.13%で、「重傷」が10.86%。死亡に至っているケースは、「0.007%」とその割合は脚部以下。

自転車乗車中の事故 損傷部位「腕部」の状態別割合

「腕を怪我しても、死亡に至ることは滅多にない」こうも言えるでしょう。

ただし!

軽傷/重傷で済んでいると言っても、前述の通り「軽傷」って「全治1カ月以下の怪我」です。完治までに筆舌に尽くしがたい苦痛を味わうであろうことは、想像に難くありません。

件数の多さと割合の高さを考えると、対策の優先順位が高いのは「脚の怪我と、腕の怪我を防ぐこと」になるでしょう。

サイクルロードレース選手

ただ、脚にプロテクターを装着するとなると、ペダリングへの影響は甚大。レースなどのコンマ1秒を争うシビアコンディションで走行されている方にとっては、判断がかなり難しいところです。

また腕部の怪我は手や指が使えなくなったり、動きが制限されたりすることになりますから、QOLへの影響は脚部の怪我を上回ります(怪我の程度次第ではありますが)。

腕部への安全装備の装着にともなう走行への影響は、脚部よりは断然少ないはず。なので腕部プロテクターなど「グローブ以外の腕部ダメージ軽減方法」を、より積極的に考えておきたいところです。

「頸部の損傷」は、全身に影響の懸念あり!

頸部の損傷事故は、死亡173件(0.4%)、重傷1,437件(3.1%)、軽傷46,043件(96.5%)と、ほとんどが軽傷に留まります。事故全体での件数・割合も、目立って高くはありません。

しかしながら、思い起こされるのは自転車好きの政治家として知られる、谷垣元総理大臣の落車事故。今はかなり回復されているようですが、一時は半身不随という状態でした。

損傷部位だけでなく、全身に影響する懸念がある「頸部」。要注意の部位であるのは、間違いの無いところでしょう。

参考 産経ニュース「【話の肖像画】谷垣禎一(24)自転車事故…「目」で辞意伝達」

走行状況別、ヘルメットにプラスしたい安全装備!(個人の感想です)

レースに参加するぐらいのリスクをとれる方であれば、「当方に迎撃の用意あり! 軽傷重傷の覚悟完了! 怪我上等! 勝利のためなら犠牲は厭わぬ!」というレベルの気合いの入り方でしょうから(無茶苦茶な偏見)、注力すべきは最悪の事態の回避。「死亡事故低減」です。

そうなると頭部の次に死亡事故の件数が多い損傷部位である、「胸部」を保護することが最優先だと考えます。速度域の高さを鑑みると、それこそ自動二輪車用ぐらいのスペックがあってもいいですよね。あとはレースのレギュレーション次第。

そして走行速度域の低い、自分のようなゆるポタ勢は「怪我の回避と被害軽減で、QOLの低下を抑止すること」が注力ポイントになるでしょう。

事故損傷の件数/割合が多い「脚部」「腕部」を追加で保護することで、無事に帰宅できる確率を高められるはず。そうなると、まずはプロテクター付きのレッグカバー/アームカバーが欲しいところです。

これ、事故や医療や自転車の専門知識皆無な低脳野郎が愚考しただけの、雑で勝手な個人的見解なので、異論はぜひお聞かせいただきたいです。

手のひらを、いくらでもひっくり返す準備はできておりますので!

今日の慣用句「下手な考え休むに似たり」

自転車で使えそうなプロテクターを、Amazonで探してポチってみた。

ヘルメット以外の安全装備着用について、ぜひ前向きに検討していきたい!とはいえ自転車用のプロテクターって、ググってもMTB用のゴツいプロテクターばかりヒットします。

ロードバイクや、ゆるポタでの利用を想定した製品って、ちっとも見当たりません。

残念!終了!!

という現状ではありますが、これって下手をすれば生命維持に関わります。せめて可能性だけでも探って、悪あがきしておきたいところです。

というわけで無理は百どころか千も承知でAmazonを探索しまくって、「胸部」「腕部」「脚部」にプロテクターが付いた3製品をポチってみました。

もっとコスパに優れた製品はあるのかもしれませんが、探索能力と予算には限りがございます…。

ポチったのはこちら!

ポチった製品を、着用してみた。

インナープロテクターTシャツ

無駄に長い中華出品テンプレ商品名を冠した、パッド付きスポーツTシャツ。

DGYAO スポーツウェア インナープロテクター シャツ 胸部

左右の肩、胸の上部、脇腹、腰にパッドが装着されています。レーパンのパッドをさらに硬くした感じで、厚みはiPhoneぐらい。1枚モノではなく、六角形のクッション材がたくさん並んでいる形です。パッドの取り外しはできません。

DGYAO スポーツウェア インナープロテクター シャツ 胸部

胸部のパッドは上の方に小さく付いているだけで、心臓付近は完全ノーガード。自転車用としては、ちょっと気になるところです。

着用してみると、肩の部分には「何かくっついてるなー」と明確に感じますが、その他(胸の上部、脇腹、腰の辺り)については、特に大きな違和感はありません。「一部分が厚めのウェアを着用している」ぐらいの感覚で、かなり自然に着用できました。

ROCKBROS 肘サポーター付きアームカバー

無駄に長い中華出品テンプレ商品名を冠した、肘部分に取り外し可能なパッドが入ったアームカバーです。

ROCKBROS 肘サポーター付きアームカバー

パッドの素材はAmazonの商品説明パートによると、PU材(ポリウレタン)。「衝撃分散力に優れたハニカム構造」とのこと。脱着可能なので、汗と洗剤と洗濯&脱水ですぐボロボロになっちゃうようなことはなさそう。

ROCKBROS 肘サポーター付きアームカバー

腕に装着すると、肘の外側部分がガードされる形になります。肘を曲げるとパッドも動くので、そのときだけは存在を意識せざるを得ません。ですが、それ以外のシーンでは、特別意識するようなことはなかったです。

ROCKBROS 膝サポーター付きレッグカバー

無駄に長い中華以下略。

ROCKBROS 膝サポーター付きレッグカバー

膝部分に、取り外し可能なパッドが入っています。ポリウレタンで、ハニカム構造。アームカバーと同じ素材で、形状/サイズが違うだけのようです。

ROCKBROS 膝サポーター付きレッグカバー

パッドがカバーするのは、膝のお皿の下あたりまで。膝を曲げても、パッドは曲がりません。ペダリングへの影響は、思っていたよりもずっと少なそう。足首の部分に、リフレクト素材のプリントがあるのも好印象です。

ロードバイクやゆるポタ用途に、プロテクターって現実的?

ポチって届いた「インナープロテクターTシャツ」「肘サポーター付きアームカバー」「膝サポーター付きレッグカバー」を全部装着して自転車に跨がり、ペダルを回してみました。

パッド付きのレッグカバーを装用してペダルを回すと、膝を伸縮させるのと同じ回数だけ、パッドの存在を感じます。走行開始直後は「これ…無理!」と感じていましたが、30分ほど経過してペダル踏みマシーン化してくると、存在を意識しなくなってきます。

まぁ腕時計だって、普段は付けていることを意識しませんよね。そんなことを考えつつ、普段のサイクリングに使えるかどうか思いを巡らせてみました。

胸部のプロテクターは、自動二輪車用の転用が「有り」かも!

胸部のプロテクターについては、前述のとおり腕部や脚部と比較して走行感覚への影響は少なめでした。パッドに多少の厚みがあっても、かなり無視できるでしょう。そうなると自動二輪車用でイイ感じの製品があれば、そのまま流用できそうに思えます。

通気性が課題になりそうな感じはしていますが、メッシュ素材のこの製品とか、そのまま自転車用に使えるかも?

腕部、脚部のプロテクターは、自動二輪車用の転用が難しそう。

パッドの存在感は、前述のとおりペダルを回してしばらくすると感じなくなります。また、自分は夏場でもアームカバーを装着する派。なので、腕や脚が覆われることへの抵抗感はありません。

けれど、それでも「次のサイクリングからは、パッド付きのレッグカバーとアームカバーを付けて走ろう!」とは思えませんでした。

ROCKBROS 膝サポーター付きレッグカバー

身体の可動部のすぐ近くに重くて硬いパッドがあることによる、なんだかイヤな感じがどうしても拭いきれません。安全のために必要なのはわかっているけれど、心の奥底には不快感を我慢している自分がいる。ヘルメットを被って走っても、こんな気持ちにはならないのに。

今回購入した2製品を使った限りでは、レッグカバー/アームカバー共にパッド部分の素材、固さ、厚み、重さ、サイズ、形状などなどを、ほぼ全面的に自転車用途で最適化しないと普段のサイクリングで「気軽に装着して、快適に走る」というのには難しいレベルにあると感じました。

レーパンのパッドに近い素材を立体裁断で縫製するなど、存在を感じさせないプロテクターが理想的。でもそんなのって、メジャーブランドの方々が、自転車専用の事故損傷低減ウェアを本腰入れて開発!とかしてくれないと、どうにもならないですよねー。

積み重ねた安全への投資が無駄になるなら、それが最高!

いろいろ調べたり、試してみたりしてみましたが、ヘルメットとグローブ以外の保護装備について、必要性と可能性を強く感じています。自転車用品/自転車服のメジャーブランドでの、研究開発と販売開始を願ってやみません。

あと、事故回避には「運転技能を高める」というよりパッシブな方向もありますが、「ポチって買うことができない」というのが致命的。緊急時の回避能力を高めるためのトレーニングとか、ぜひ詳しい方の言及を待ちたいところです。

いくら装備を整え、努力を重ねても、結局のところ安全に「100%」はありえません。けれど、安全のための努力を怠れば、事故は間違いなく近づいてきます。それぞれができる限りのリスク最小化を、愚直に積み重ねていくしかない。

もしかすると、それは「無駄な努力」なのかもしれません。

でも事故になんて遭わずに家まで戻れて、安全のための投資が「無事」という結果によって一切合切無駄になるのなら、それって最高ですよね。

楽しいサイクリングは、安全に走れてこそ実現します。お金で買える安全は、迷わずに買っておくのが絶対正義!安全装備を、どんどんポチっていきましょう!!

Amazonのショッピングカートに入れたもの

その際はフレームやコンポ、用品、ウェア類なども、まとめてカートに入れておくことをお忘れなく!

著者
などかず

美味しくご飯を食べることをモチベーションにペダルを回し、機材の性能に頼り切って「頑張らないことを頑張る」物欲系へっぽこ自転車乗り。リアルで自転車に乗れない週末にはZWIFTで合計100km以上のバーチャルライドを欠かさないものの、脚力や走行スキルについての言及は意図的に避けている模様。愛車はLOOK675、ブロンプトンCHPT3 V2、タイレルFX(これだけとは言ってない)。

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