自転車は楽しい。ずっと自転車に乗って遊んでいたい。会社なんか行きたくない。あぁ自転車で遊んでいるだけでお金も入ってきたらなぁ… という、誰もが一度は考えたことがあるに違いない件について、アドバイスを求める投稿を海外掲示板で見かけました。
出典 How do I quit my job and make a living from playing with my bikes?(どうすれば仕事をやめて自転車で遊ぶことから生計を立てられるでしょうか?)
自転車で遊びながら生きていきたい
以下、スレ主さんによる質問です。
自転車ショップで働いているわけでもなく、プロレーサーでもなく、ただ自転車と遊んで暮らしています。ライドは一人で出かけます。地下室に座って、自転車を眺めています。ケージやラックを付け替えたりしています。違う種類のタイヤを試したりもします。ライド中、私が数日前に納品を約束した品質管理のスプレッドシートについてメールで問い合わせを受けるのではなく、こういうことをやって生きていきたい。どうすれば良いか名案を思いついた人は、ぜひ教えてください。
寄せられたコメントから個人的におもしろかったものをピックアップします(以下、どれも冗談まじりなのでまともに読まないようにしましょう)。
資産家の家に生まれればいいだけだよ。何が大変なんだい?
俺は文字通りそれをやってみた。まぁ文字通りではないのだが。
俺はシリコンバレーで育ち、テック企業に35年間勤めた。そのせいで人生の一部が嫌いになったが、充分な収入を得て2009年頃の住宅危機で家を買えた。それからも頑張って働き続けた。その間、自転車に乗るのは一度もやめなかった。最近になって、俺はコロラド州を発見した。1月1日にここに引っ越してきた。サンノゼの家は、買値の3倍で売りに出している。コロラドでは広大な土地を買おうと思っている。定年はまだこれからだ。俺はいまリモートで働いている(リモートがなくなるまでは働くつもりだ)。生活費は概算で30%安くなるし、住んでいるところは空気がきれいで交通もなく、みんないい人達で犯罪も基本的にないし、夜は星が見える。それにこの町の人はみんな自転車に乗る。いまは8時間働いているが、残りの時間は友達や家族とライドして過ごしながら、それについてのYouTube動画を作っている。こうやればいいんだよ。
(上の人に)これメモしておこう。
- 裕福な両親のもと、シリコンバレーで育つこと
- テック企業に就職し、キャッシュと株で大金を持っておくこと
- 生活コストが非常に高いエリアで、最高のタイミングで家を買えるくらいラッキーであること
- 富を利用して生活コストが非常に低いエリアに引っ越すこと
- 生活コストが低いエリアで、生活コストが高いエリアの給料をもらったままリモートワークできる特権を得ること
簡単な5つの方法だね? スレ主さん、これをやってみよう!
自分でコントロールできないものには取り組まない
「好きなことで生きていく」ことを考える場合、ここ数年は職業YouTuberが脚光を浴びてきたように思います(最近はすごく難しくなっているだろうけど)。YouTuberになることについては、下のようなコメントが見られました。
- 成功しているYouTuber 1人につき、ベストを尽くしたのにうまく行かなかった人は100人いるのではないかと私は感じています。YouTuberが普通の仕事より楽なのかどうかはわからないけれども、かなり運次第というところはある。それに加えて、自分の経験から言うと、趣味を職業にかえてしまうと趣味としてのそれに興味を持てなくなってしまう。結局は以前のような仕事となりながら、そこから逃避できる趣味を失ってしまうことになってしまいます
- (上の人に・YouTuber 1人について成功しなかった人は)1000人かそれ以上いるんじゃないか
- 1:10000だと思う
YouTubeチャンネルは、私も数年前にいくつか挑戦したことがあります。かなり力を入れてやっていた頃、成功するために必要なものは何だろうと考え続け、いくつかわかってきたことはあります。例えば…
- 視聴者を一瞬たりとも退屈させない動画、見たら絶対に何か役立つ情報、深い満足感(=価値)を得られる動画をつくる。品質が良い動画だけを作る
- 徹底的にオリジナルな存在・ユニークな存在でなければならない
- ストーリーまたはメッセージが他の全てに優先する(撮影・編集技術は二の次である)
- 品質を維持したまま、一定の周期で動画をアップしなくてはならない(毎日・1週間に1度・1ヶ月に1度など)
- クリエイターとしての人柄に基本的な魅力がなければ、YouTuberとして生活し続けられるだけの登録者数や再生回数は得られない(逆張りやトラッシュトーキングで目立とうとしても結局は頭打ちになる)
- 片手間で成功できるほど甘い世界ではない
等々です。もちろん、私はYouTubeに挑戦するのは諦めました。「最低限これはクリアする必要がある」という要件がなんとなく見えてきた段階で、仕事やこのブログを継続することに加えてYouTubeをやる時間はない、ということがわかりました(趣味での動画作成は続けています。楽しいから)。
しかし、YouTubeで成功するためにはさらに大きいハードルがあります。それは「運」です。これは絶対にあるだろうと(私は)思っています。
私が好きで見ている成功したYouTuberたちを観察していると、視聴者が退屈しない高品質な動画を作り続け、自分のブランドにあぐらをかくことなく改良や改善を加えていって、一定の周期性で動画をアップし続けている、という共通点は見られます。
だがしかし。それは「スタート地点に立つための必要最小限のもの」にすぎないのではないかと思いました。おもしろかったり役に立ったりする高品質な動画を作り、定期的にアップすれば誰でも大成功するかというと、そんなことはないらしいことにも気付いたのです。
あなたはYouTuberとして成功するための必要条件は満たしている。しかしそういう人が10000人いるから、その中で誰を「当たり」にするかは、くじ引きで決める必要がある。そういうアルゴリズムになっているのではないかな、というのが私の感想です(そしてこの当選アルゴリズム自体も周期的に変わる)。
YouTube側にとっても、たまにそういう「ランダムな成功者」を出したほうが良いはずです。自分もそういう成功者になりたい、と考え、挑戦する人が増える。コンテンツが増え、YouTubeは盛り上がる。宝くじに似たところがあります。
成功した人は、もちろんものすごく努力してきた・努力し続けているのは当然として、大爆発するかどうかはパチンコみたいなもので、高設定の台に当たる人もいれば、地獄モードの台に当たる人もいる(パチンコは詳しくないので間違った表現でしたらすみません)。
結局のところ「運まかせ・運次第」のところがYouTubeにはあるんじゃないでしょうか。これは最初に挙げられていた「資産家の家に生まれる」や「住宅危機の時に家を買う」のと同様、自分ではコントロールの及ばないものを相手にすることに似ています。収益もいきなり5分の1、10分の1になったりします。
最後に何かまとめ的な個人の感想を書きますと、自分の運の悪さを嘆いても仕方ないですし(過去について)、運をあてにしても不幸になる(未来について)。そして「確実に成功する方法」は絶対にない(成功確率を上げる方法はある。なのでそれはやる価値はあるとしても)。
「働かずに自転車で遊んでいたい」というスレ主さんにとっては、やりたくないエクセルの仕事をやめてしまう(転職する)のも一つの手だとは思いますが、他のどんな仕事もやりたくないものになりうるわけで、結局のところ「制御不能な外界」ではなく「自分の内側」、心のあり方を変える努力をしたほうが、はやく幸せになれるのではないか、という気がします。
挑戦すること自体はおもしろいし、学ぶところも多いのでガンガンやってみるのは良いことだと思います。それで成功したらそれはそれで、いいじゃないですか! 動画をつくること自体は、めっちゃ楽しいですしね。
古代ギリシャのストア派の哲学者・エピクテトスという人がこういう方面の話をしていると思います。自分の外側は変えられない、変えられるのは内側だけ、という話です。これは方丈記とも通じる話かもしれません。興味のある方はぜひどうぞ。