コカ・コーラがサイクリストに人気があるのは疑いようのないところ。普段のライド中に飲む人もいるでしょうし、ツール・ド・フランスのようなプロ・ロードレースでも小さい缶のコーラを飲んでいる選手の姿をよく見かけます。
しかし「世間的な常識」では「身体に悪い」という印象も持たれているこのドリンクが、なぜアスリートに支持されているのか。レースの補給地点で提供されることもあるのは何故なのだろう。という質問を海外掲示板で見かけました。
XCレースをはじめた時、給水地点でソフトドリンクが提供されているという事実にいちばん驚かされました。私は炭酸飲料(soda)が健康やスポーツにはいいと思わないので、避けてきました。給水地点にはスポーツドリンクも用意されており、「コーラ」には大体同じくらいの糖分は入っていますが、スポーツドリンクよりも良いところはあるのでしょうか?
はやい・うまい それがコーラ
以下、寄せられたコメントからいくつかピックアップ。
- 炭酸が抜けたコカ・コーラはスポーツドリンクに比べるとずっと早く血流に浸透するという話を読んだことがあります。それにカフェインも含まれています。しかし前者のほうが大きい理由だと思います
- マラソンランナーやトライアスリートの多くがコーラを飲んでポテトチップを食べています。主要な糖質・カフェイン・塩分・脂質をこれらでカバーできるからです
- 俺たちがこういうスポーツをやっているのはそのため(コーラやポテチのため)ではないのか?
- 私のはじめてのレースはスプリント・トライアスロンだったのですが、頑張りすぎてボロボロになった時、コーラが吐き気や胃酸の逆流を抑えてくれると言われました。水では効果がなかったので試してみました。すると驚いたことに、一瞬で楽になって長続きもしました。ライドには携行しませんが、目の前にコーラが現れたら拒否はしないと思います
- ウルトラマラソンのエイドステーションを担当したことがあります。気の抜けたコーラはいつも用意しており、スポーツ専用ドリンクのほかポテチ、m&m(チョコレート)も用意します
- (スレ主さん)情報ありがとうございます。コーラは確かにGI値が高いですね。それでも(血糖値が)あれほどスパイクする(=急激に変動する)飲み物はレースが進むにつれて体調を悪くするのではないかと感じています
- (スレ主さんへの返答)一般的に、炭酸やジェルといったものはレース終盤の20〜90分で活用されるものです。それ以前ならライダーが普通の軽いスナックを食べているのがわかるでしょう。終盤では血流に素早く溶け込む糖質が違いを生みます。残り3時間以上ある時にジェルを使うと、お腹の調子が悪くなって脱落することになるでしょうね
- カフェイン。糖分。それに罪悪感なくコーラを飲めるというメンタル面での興奮… ライドの途中でキンキンに冷えたコーラをやるのが俺にとっては大きいモチベーションのひとつだ
- レース中にコーラを飲むアスリートとテレビでアメフトを見ながらソファでコーラを飲む一般人は、まったく違う話だからな
- コーラは理想的なドリンクではないかもしれないが、めっちゃうまい。もうひとつ考えておきたい大事なことは、経験豊富なライダーはレース中やレース前後によくわからないものは飲み食いしないということだ。コーラを飲んだことのない人はいないから、多くの(レース)参加者にとって安全な選択肢なんだ
- 「良い食べ物」と「悪い食べ物」を区別する考え方がありますが、普段の生活で食べるものは、パフォーマンスを発揮する時に食べるものとはほぼ正反対のものです。パフォーマンスのためには、身体がすばやくエネルギーに変換できるような消化しやすく、食物繊維が少なくGI値が高いものが必要です。これは一般的には「ジャンクフード」と呼ばれます。しかしその理由は、エネルギー消費量が高い時でないと脂肪として蓄積され、他の問題を生むからです。そういう食品の糖分がすぐに使用されるなら、完璧なのです
レースまたは高強度ライド中であれば糖質はすぐに燃えるから。親しんでいる飲料だから。単純にうまいから。といった意見が多いですね。またジェルの話が出ていますが、ジェルやコーラのような吸収性の高い糖質をレース・ライド直後から使っても俺は大丈夫、という人もいるようです。
私自身はのんびりライドが中心なので、コーラといえばコカ・コーラ・ゼロを選択しがちですが、長時間のライドでは普通のコーラでもやはり罪悪感なしに飲めて、元気になります。いわゆる「ジャンクフード」は高強度運動の時には理想的なものになりうる、という意見はなかなかおもしろいと思いました。
炭酸(ガス)そのものの効果についてはスレッド中で言及はありませんが、清涼感・リフレッシュ効果も大きいですね(スポーツドリンクが単調な味に思えた時のアクセントにもなる)。お腹が膨らむかもしれませんが…(コーラが炭酸抜きで提供されること、またロードレースでは150mlのようなミニ缶で少量飲む選手がいることは自転車での前傾姿勢とも関係があるようです。出典)。
プロサイクリングチームによるコカ・コーラ使用率
プロサイクリングチームによるコカ・コーラの使用率については、1997年の調査結果を発見したのであわせて少しご紹介します(オーストラリア国立スポーツ研究所などによる調査。26年前のデータですが、これより新しいまとまった調査は発見できず。以下、抜粋・抄訳です)。
出典 Coca-Cola Preferred by Top Endurance Cyclists
- 米国のプロロードレース選手権で、チームのマッサーにフィードゾーンでアンケートを行った
- 調査は特定のスポーツドリンク会社によってスポンサードされていないことは告げてある
- 19の男性チームのうち11チームが調査に協力した。チームの人数は5〜10人と様々だったが、大部分のチームはアメリカ合衆国出身のサイクリストで占められていた。オーストラリア・ベルギー・カナダ・チェコ・フランス・イギリス・ドイツ・イタリア・オランダ・ロシア・スペインのからの選手もチームには含まれていた
- 11チーム中6チームで、ライダー全員がレース中にコカ・コーラを飲んでいた。4チームでは67%のライダーが飲んでいた。残り1チームだけがレース中にコカ・コーラを飲まなかった。つまり調査対象チームの90%がコーラを飲んでいたことになる
- すべてのケースで、コカ・コーラはレースの中盤または残り4分の1の時点で、他のスポーツドリンク(炭水化物電解質ドリンク)を補助するものとして消費されていた
- 10チーム中7チームで、コカ・コーラは炭酸抜きされた状態で渡されていた
- 11チーム中8チームで、コカ・コーラはレース後、その他のスポーツドリンクやプロテインと一緒に使用されていた
レース後にも飲まれているのはプロテインの吸収効率やグリコーゲン補充を考えてのことでしょうか。
しかしコーラには、一般的なスポーツドリンクに対する栄養学的な優位性は特に見つかっていない、という話も見かけます(上で紹介した「他のものより血流への浸透が早い」を裏付ける明確なデータも、私は発見できず)。それでも飲まれるコーラ。「うまい・気持ちいい」という、科学では説明しにくい謎の魅力で支持されているところが大きいのでしょうか。