SRAMが米国消費者製品安全委員会とカナダ保健省と連携し、eTap AXSブリフターの大部分について「リコール」(安全性に関する通知)を発表したようです。Bikerumorが報じています。
出典 SRAM to Issue Safety Recall for Most Aftermarket SRAM eTap AXS Shift-Brake Levers
以下、記事の概要です。
- 対象は12スピードeTap AXS RED, Force, Rival, Apexのシフト兼ブレーキレバー
- 2023年以前に製造されたeTap AXSの全てがリコール対象となるが、アフターマーケットとして販売されたものだけが対象。受け渡しされる前に既に自転車に組み付けられていたもの、またはチェックされていたものは対象ではない
- 理由はクランプボルトへのスレッドロッカー(ゆるみ止め)が過剰だったこと。この結果、トルクレンチの指示通りに締めても適切に締められていないケースがある。その結果、シフターがハンドルバー上で動き、クラッシュに繋がりうる
- SRAMはリテイラー・サポート・ポータルを通じ、2本のボルトと修理完了済みを示すステッカーを配布する予定。フィクシング・ナットは交換する必要がないため、2本のボルトの交換だけで済む
- より詳細な情報は今後発表されるだろう。いまのところ対象となるモデルは次の通り(元記事をご参照のこと)
以下、同記事の読者コメントから興味深いものを抜粋してみました。
- 私は昨日Rival AXSをインストールしたばかりなのですが、これは締めるのが大変だ、と感じていました。スレッドロックが多すぎて少し取り除く必要がありました。指示通りのトルクで締めてもレバーがまだ簡単に回っていました。簡単な解決法ですが、通知してくれたのは嬉しいです
- これは自転車産業が解決すべき問題のひとつです。「適切なトルク」が漠然とした値でありうるのに、トルク値に強迫観念的にこだわりすぎです。ロックタイトやグリスはどちらもトルク値に影響しますが、自転車産業は外部から真面目にやっていると見てもらいたくて、トルク値について現実的でない精度を要求しています。私は再現性や標準化のプロセスには大賛成なのですが、最近の「適切なトルク」へのこだわりは、会社側が責任回避するためのディスクレイマー(CYA =cover your ass)にすぎないものになっているように思えます
- 問題は、ボルトのトルクを指定する他の良い方法がないことです。理想的には、メーカーはスレッドプレップの種類や量も示してくれたらいいなと思います
今回の「リコール」が対象となりうるのは、基本的に「eTap AXSのシフター・ブレーキレバーをパーツ単体で自分で購入して、自分で取り付けた人」だけになるようです。
メーカー完成車に組み付けられていた場合、あるいはショップのメカニックに取り付けてもらった場合は、レバーが通常使用時はズレないことが確認されているはずだから(スレッドロック材が過剰でも組み付け時に適切な判断・処理がなされているだろうから)対象外、という考え方のようですね。万一の訴訟時の責任の所在を明確にする目的もありそうです。
このパーツに限らず、取扱説明書に記載されているトルク値は基本的に守る・指標として参考にするのは間違ったことではないと思いますが「雨が降っても槍が降っても何がなんでも指定トルクを守るんだ」という考え方ではなく、ロックタイトがモリモリになっていたらこれはネジへの抵抗が大きすぎてトルクレンチの数字は当てにならないかもしれないな、と自分で考えることが必要ですね。
ネジとボルトに関する知識、ボルトとケミカルの関係についてはプロの自動車メカニック・kazaneさんによる詳細な記事が下にあるので、未読の方はこちらも是非ご一読ください。
▼ 今回のリコールに影響を受けたと思われる方、当該のブリフターが緩みがちだ、という方は、とりあえずネジの状態をチェックしてロックタイト的なケミカルの量が多すぎるようでしたら、自分で洗浄・再度適切なグリスなどを塗って指定トルクで締め直してみるのも手ですね。心配な方はSRAMからの追加情報を待ち、ショップでチェックしてもらいましょう。ご自身のご判断で。