輪行で普段とは違う土地でのサイクリングを楽しみたい…ちょうど明日はいい天気! そんな時はただただ出かけてしまえば良いのですが、出発当日や前日ではなく「普段から」輪行や旅行の準備をしておくと、出発時の心理的なハードルが下がり、忘れ物も少なく済みます。この記事では筆者おすすめの「普段からの輪行準備法」をご紹介します。
複数の目的地を検討しておく
まずは「タイプや地方の異なる複数の目的地」を選定・検討しておきましょう。「次は、絶対ここに行くんだ!」という目的地が決まっている場合は、勿論そこに行けば良いのですが、予定日に現地が雨だったとしたら。あるいは当日の体調が100%でないとしたら? そういう場合に備えて、例えば次のようなバラエティに富んだプランを用意しておきます。
- 目的地A、地獄山ヒルクライム。体力は100%使い切ると思われるので、疲れている場合・翌日休めない場合はやめる。現地が雨だったら、別の地方のコースに変更する
- 目的地B、平和湖ポタリング。距離こそ長いが平地メインで強度も強くないため、のんびり走れる。前日に仕事が長引いて帰宅が遅くなっても大丈夫だろう。多少の雨でも決行可
- 目的地C、大東京島(離島)一周。船で渡り、現地に一泊して島内めぐり。午後に出発。初日は郷土料理と地酒を楽しみ、サイクリングは翌日の早朝から。夕方に帰る
- 目的地D、広山湖グラベル。短距離で体力的にキツくはないが、電車移動を考えると平日のほうが良さそうだ。平日で晴れそうなら有給休暇を取ってここに行こう
といった具合です(※地名はどれも架空のものです)。
こんなふうに「走りたい場所」を普段から複数リストアップしておくと、当日に北のA県が雨模様でも、南のB県が晴れなら目的地を変更できる場合があります。使用予定の自転車のタイプや当日の体力度も考慮しつつ、タイプの違うルートを考えておくと良いと思います。
駅構内図や乗り換えを下調べしておく
各目的地について、利用する駅の構内図や乗り換えにかかる時間や労力をあらかじめて調べておきます。
例えばJR東京駅から新幹線を利用する場合、東海道新幹線なら「日本橋口」が近くて便利ですが、同じ日本橋口から東北・上越・北陸新幹線のホームに向かおうとすると大変です。なぜならエレベーターもエスカレーターもなく、長い階段を登ったあとにだいぶ歩かないと行けないからです。
新幹線や特急の指定席を利用する場合は、「自転車のような大型荷物を置けそうな席は何号車のどのあたりか、エレベーターやエスカレーターから近いのは何号車か」を調べておくのも大切です。また交通機関によっては大型荷物の積み込みには事前予約が必要なことも多いので、それも忘れずにチェック。
快適な輪行体験のためには、ライド以外での体力消耗を可能な限り減らすことが大事です(特にライド開始前)。直前にこうしたことを調べるのは正直面倒ですが、数日〜数週間先を見据えて普段からチェックしておくと当日に大きい差が出ます。
東京では地下鉄の乗り換えで1駅分歩かされるようなこともあるので要注意(例:飯田橋駅で有楽町線〜東西線を乗り換えようとすると10分ほど歩きます)。
携帯品のリストを作る
次に「輪行当日に携帯するもののリスト」を作成しておきます。日帰りのライドなら輪行袋一式・普段の工具類と財布とスマホがあればそのまま出かけていっても問題ありませんが、カメラを持っていきたい・宿に泊まりたい、といった場合は普段からこういうリストを作っておくと便利です。
- 輪行セット(輪行袋・エンド金具・パッドスペーサー・スプロケットカバー・ローターカバー・りんりんバンド等)
- パンク修理セット(予備チューブ・ポンプ・パッチキット・一般的なツールキット等)
- スキンケア・トイレタリー(日焼け止め・ハンドタオル・歯ブラシ等)
- 常備薬(宿泊する人で必要な方。筆者は花粉症と喘息の薬を常用していますが、1日くらい飲まなくても問題ないので持っていきません!)
- GPSサイコン(バイクに付いていると思いますがどれを持っていくかを含めて)
- 現金(キャッシュレス非対応のお店や自販機に備えて小銭500円ほど・札を数枚)
- 自転車のカギ・ライト
- その他(必要に応じてカメラ・ノートパソコン・モバイルバッテリー等)
- 当日に使うバッグ(バックパック・サドルバッグ・パニアバッグ・フロントバッグ等)
必要なものは人それぞれなので、自分は何を忘れたくないのか、まずは実際にメモを作ってみましょう。「宿泊に必要なもの」や「カメラ・デジタル関連」といった「大カテゴリー」を作成し、その中を埋めていくか、あるいはランダムにリストアップしたものを後でカテゴリーにまとめると、自分でもチェックしやすくなると思います。
バッテリーを必要とするアイテムについては、前日ではなく数日前から満充電しておいたほうが良いでしょう。モバイルバッテリーは日帰りや1泊なら軽量タイプ、数泊のエピックな旅ならラージタイプ等、使い分けるのもおすすめ。荷物はなるべく軽量化したほうが良いのは言うまでもなし。
その日に着るウェアを準備しておく
輪行当日に着る予定のウェアをあらかじめ引っ張り出しておき、一箇所にまとめておく、というのも筆者のオススメです。普段のサイクリングで着るもの・使うものと内容がかぶるのですが、部屋の一角に「輪行の朝、ここにあるものを全部着ていけばなんとかなるセット」を用意しておくと、効率的に出発できます。
寒い地方に出かける場合は防寒具も忘れずに。また高所でのヒルクライムでは季節を問わずウィンドブレーカーが必須です(下りでは冷えます)。基本セットはヘルメット・サングラス・上下インナーとアウター・グローブ・ソックス・シューズといったところ。ウェアはレイヤードで体温調節できる組み合わせがベスト。
天気予報をチェックする
当たり前のことですみませんが、天気予報をチェックします。しかし単に晴れか雨かをチェックするのでなく、複数の目的地の当日の天気と最低気温・最高気温も追っていきます。また「風向き」についても、数日前からチェックしておくと当日の傾向をつかみやすくなります。
出発直前にはSNSで現地の地名を検索すると、直近の雰囲気がわかるので便利です。
自転車本体のチェック
例えば輪行当日に普段のミニベロではなく、あまり使っていないロードバイクで行こう、ということもあるでしょう。そんな時は、数日前からメカのチェック。空気圧は前日夜にはチェックを終えておくのが良いでしょう(チューブレスやラテックスチューブなら当日朝に要再確認)。
空気入れ自体は5分もかかりませんが、当日朝にやるのはやはり億劫です。出発時の手数を減らしておきましょう。しかし普段のバイクなら結構適当なセットアップでも1日乗るだけなら何とかなるものです。あまり神経質にならないのも大事。輪行先で自転車を組み立ててからでも何とかなります。万一チェーンの油が切れていても気にせず乗りましょう。他に方法はないのですから。
完璧を目指さない
他にも宿泊するのであればホテルや宿の検索・手配を行うといった準備もありますが、事前に色々と準備しておくといいですよ、とお伝えしてきたこの記事の最後で書いておきたいことは、「やれるだけの準備をやっておいたら、あとは悩まずとにかく出かける」ということです。
多くの場合、100%の準備は不可能です。大体何かを忘れたり、何かが不十分だったりすることが多いでしょう。準備自体が完璧だったとしても、旅先では通行止め等の不測の事態も発生します。それも含めて楽しむのが輪行・旅であると考えるのが良いと思います。
筆者の場合、最近の輪行では複数台のバイクで使いまわしているロックを置いてきてしまいました(幸い自転車が盗まれる確率がほぼゼロに近い地域でのライドだったので良かったのですが)。他にはモバイルバッテリーが空になっていた、とか、CO2カートリッジのヘッドだけ忘れた、といったトホホ事例が多数。
しかし当日に「行く」と決めたら、あとはもう悩まず行ってみる、というのが良いです。仮にエンド金具を忘れ、現地でリアディレイラーが壊れていてうまく走れなくとも、それはそれで受け入れる。不足の物があれば現地調達。最初の駅にペダルを置き忘れてしまって走行できなかったとしたら、徒歩観光に切り替える。
というふうに、トラブルが発生してもその日を最大限に楽しむ、というつもりで大きく構えていると、輪行や宿泊旅行のハードルを下げることができます。輪行のハードルを下げ、サイクリング遠征を存分に楽しみましょう。