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“S**t happens.”:海外通販でのトラブルではどのようなコミュニケーションを取るべきか

注文品が届かない、届きはしたが自分が注文した品物ではなかった、不良品だった… 等々、海外通販(海外に限定しなくとも良いですが)で様々なトラブルを経験された方は多いと思います。私自身、最近注文したものが非常に珍しい不良品だった、ということがあったので、こういうトラブルの際は「どのようなコミュニケーションを取るべきか?」という点について書いてみます。

“Shit happens.”を受け入れる

どのようなコミュニケーションを相手と取るべきか? を考える前に、まず「”Shit happens.”を受け入れる」という大原則(と私は考える)について確認しましょう。

“Shit happens.”とは、ちょっと品のない表現ではあるのですが、アメリカでは日常的に使われる英語表現で、

ク◯みたいなことが、実際に起ってしまうんだ。しょうもないことが起こるんだよ…

というニュアンスです。その「しょうもないこと」とは、品質検査がされていなかったとか、誰かが発送を忘れたとか、発送した荷物が何処かに消えてしまったとか、そういう様々な事故のことです。自分には手に負えない何か。コントロールできないもの。故に、まずそれを受け入れる。

通販に限らず、不慮の事故は避けようがありません。もし不良品が届いた時は「不良品を送ったお前が悪い」と言ってしまいたくなっても、品質管理を行ったのはカスタマーサポートの担当者ではないでしょうし、その担当者にとってはやはり”Shit happens.”です。

何らかの事故は、いつか確実に発生する。その時、ちゃんとした品物を受け取れるようになるまで「予想していたより日数がかかった」としても、それはひとえに運が悪かったとして、まずはその運命を受け入れる。”Shit happens.”の結果、自分が被った何らかの損害については、相手を責めない。というのはとても大切なことだと私は思います。

自分が望む「落としどころ」にフォーカスする

さて、こうして「しょうがねぇなぁ」という諦観に至ってから、コミュニケーションを開始します。

如意輪観音

イメージは柔和な表情の如意輪観音

交信の「初手」で私が個人的にいちばん大切に考えているのは「落としどころをどこに設定するか」です。別の言い方をするなら「自分は相手から何を得たいのか」を明確にする、ということです。

例えば、

  • 注文したものが一向に届かない → なるべく早く送ってもらうことにフォーカスする
  • 自分が注文したものとは違うものが届いた → 注文通りのものを送ってもらうことにフォーカスする
  • 届いたものが不良品だった → 代替品を送ってもらいたければそれにフォーカスする。返品・返金を求めるのならそれにフォーカスする

といったことです。

「え、それって当たり前のことだろう」と思われるかもしれません。

それは、その通りでございまして、確かにこれらは当たり前のことです。

私が言いたいのは、こうしたフォーカスを妨げるような「ノイズ」を盛り込まない、ということです。

私達は人間なので、しかも世界でも類を見ないほど「お客様」を大事にするカスタマーサポートに慣れているため、こうした想定外の事態そのものに、まず感情的な対応をしてしまいがちです。

その結果、

あんたは何をやっているんだ。それでもちゃんとした会社か。品質管理はできているのか。誠意はあるのか。いったいどうしてくれるんだ。

といった、感情的なコミュニケーションを取ってしまう傾向が、どうしてもあると思います。

しかし、ここで考えてみましょう。この感情の発散の結果、何を得られるでしょうか?

気持ちがスッキリする、という結果は、もしかしたら得られるかもしれません。でも、よくよく考えてみると、気持ちが完全にスッキリすることは、あるんでしょうか。個人的には、ないんじゃないかという気がします。残るのは、お互いの消耗だけではないか。荒廃。廃墟。虚しい。

廃墟

自分が求めているものは廃墟だろうか? photo:Suliman Sallehi

そもそもが「負け戦」ではじまっているわけです。予定していた休日でそのパーツが使えなくなったなら、その時点で損をしています。これに加えて、もしカスタマーサポートと不毛な言い争いをしても、それは損に損を重ねることにしかならないと思うんですね。

ここでやるべきことは、あくまで私の考えではありますが、「それ以上損を重ねないこと」です。

自分がこれから行おうとしているコミュニケーションを通じて、自分は最終的に何を得たいのか。何を成果として手に入れたいのか。落としどころはどこなのか。

さらに別の言い方をすると、「問題の解決にフォーカスする」とも言えます。

何らかの問題を解決するにあたって、ネガティブな感情が有利に働くことは、まずありません。

仮に相手の担当者がとんでもない怠け者で、会社自体もちょっとヤバいとしか思えない、という場合であっても、相手を責めたい気持ちをグッと堪え、

  • 調査の上、お返事をいただけますか
  • 1週間お返事をお待ちしましたが、その後進展はありましたでしょうか。教えてください
  • 50%の返金はどうかとのことですが、その提案は受け入れられません。明らかに不良品であると思うので、あくまで代替品の送付か、全額返金を希望いたします。不良品は返送いたします
  • 私がこれを不良品であると思う根拠として、写真をご送付いたします

などと、常に「自分が得たい結果」にフォーカスして、コミュニケーションを取ったほうが、最終的には得なのです(得、というか、損害をそれ以上増やさないで済む。初期の損害については、”Shit happens.”で書いたように、受け入れるしかない)。

勿論、相手側が物を送ってくれないとか、不良品であることを認めてくれないといった場合もあると思います。そういう場合も考えると、実績のないマイナーなショップを利用する場合は特にそうですが、まずは「買い手保護」制度のあるPayPalで支払う、といった予防線を張り、相手との交渉が暗礁に乗り上げたら、あとは粛々とPayPalとのコミュニケーションに取り組むしかありません。

それまた時間がかかるプロセスですが(PayPalでも決着まで数週間かかるのは珍しくない)、それしか方法がないとしたら、それをやる以外にない。それ以外のところでどんなにエネルギーを使ったとしても「さらに損をする」ことにしかならないと思うんですね。

とはいえ、これは私の個人的な考え方です。人によっては、相手を責めてとにかくスッキリしたい、復讐したい。そして、それこそが自分が求める結果だ、ということも、あるかもしれません。それは、個々人の価値観ですから、他人が口を挟む問題ではないでしょう(あまり得はないと思いますが、「損得の問題じゃないんだよ」と言われたら、それまでです)。

今回、はじめて利用したアメリカのショップとやり取りをするとき、私は上で書いたようなことを考えながら、コミュニケーションに取り組みました。他の人の評判が非常に良いショップだったのに、なぜ自分が受け取ったものは宝くじ1等レベルの不良品だったのだろう、と嘆きましたが、やはり相手を責めても、意味がない(私にとっては)。

最終的に、不良品であることを証明するための写真を撮ってくれないかという連絡があったので、撮影が非常に難しいパーツであり、面倒ではありましたが、超接写できるマクロレンズで精密な写真を撮って送りました。メールのやり取りの最中、私は一度も「失望した」とか「残念だった」といった、心情や感情に関わる表現は、一切使わないように心がけました。

果たしてこの手法はやはりうまく行き、短期間で交渉は完了。相手側は速攻で代替品を発送してくれました。まぁ、いつもこんなふうにうまくいくとも限りませんが、正攻法はこれ以外にないでしょう。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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