スマートウォッチ・Amazfit GTR 3 Proの実使用レビュー記事です。昨年秋に発売された新製品で、本記事作成にあたりZepp Health Corporationからレビューサンプルを提供していただきました。いつものように製品の長所・短所、どちらも忖度なく公平に言及して下さい、とのことで、筆者が実際に3週間使ってみた印象をご紹介します。
特にサイクリスト向けの製品ではないのですが、健康・アクティビティ管理とGPSトラッキングが可能、かつ様々なユーティリティアプリを備えたプレミアムデザインの多機能ウォッチです。
GTR 3 Proで何ができるかを整理してみる
まずこのAmazfit GTR 3 Proでは何ができるのか、をまとめてみました。大きく5つのジャンルに分類できると思います。
- ヘルストラッキング関連(睡眠・心拍・ストレス・血中酸素・歩数・消費カロリー・PAI等)
- アクティビティ・ワークアウト関連(150種類以上のスポーツモードに対応、うち屋外サイクリングやランニングを含む8種類については「スマート認識」で自動記録させることも可能)
- GPS(上のワークアウトともかぶる部分。サイクリングやラン等で各種現在情報をウォッチに表示しつつ、移動ルートを保存できる。StravaやReliveとの同期可)
- 天気・天候関連(スマホから取得した数日間天気・日の入りと日の出時刻・気圧高度計・コンパス・温度等。下の「ユーティリティ」に分類しても良いかもしれません)
- ユーティリティ関連(通話・スマホからの各種通知・ウォッチへの音楽転送と再生・ボイスメモ・Alexaコントロール・各種タイマー・アラーム・カレンダー・世界時計・懐中電灯・スマホのリモート撮影・スマホを探す、等々)
機能が多岐に及ぶため使用開始直後は当惑しましたが、概ね上のようなカテゴリーになると思います(ただ本体上でそのような分類がなされているわけではありません)。使用頻度の少ないアプリ(機能)はウォッチメニューに表示させないといったカスタマイズもできます。
GTR 3 Proのスペック上の特徴・仕様
次にこのGTR 3 Proの主なスペック上の特徴・仕様を見ていきましょう。
- ウォッチフェイス(文字盤)が数多く用意されており、自分好みのものを複数ダウンロードして切り替えられる
- 画面はULTRA HDの大型ディスプレイ(480×480 / 331ppi)で高精細かつ明るい
- 長時間駆動バッテリー(標準的な使用で最大12日間・ハードな使用で6日間・GPS連続稼働は35時間)
- メカニカル風のクラウン(リューズ)がある(本体右上)
- GPS・Galileo・Glonass・BDS・みちびきの5衛星に対応(組み合わせを制限することでバッテリー駆動時間を伸ばせたりもする)
- ウォッチに音楽を保存・再生できる(最大470曲。転送時はWiFiを使う。本体はスピーカー内蔵。Bluetoothイヤホン使用可。スマホ内音楽の再生も可 ※筆者のiPhoneでは音楽転送できず)
- 5ATM防水(水深50メートルで最大10分間の水圧に耐えられる)
- 心拍・血中酸素・ストレス・呼吸の「ワンタップ計測」が可能
- 通信はBluetooth 5.0 BLE(スマホとの通信)、WLAN 2.4GHz(音楽転送時のみ)
これらのうちのいくつかについて、使ってみた感想を次のセクションから紹介していきます。
実際に使ってみて良かった点
Amazfit GTR 3 Proを約3週間、ほぼ毎日使ってみた感想です(充電時以外はずっと付けっぱなし)。ただし筆者はスマホ通知や音楽機能は使わないので、日常生活における健康データの記録、サイクリング・ハイキング時の使用感に絞ってご紹介しますのでその点ご了承下さい。
まず画面ですが、これはかなり美しく視認性も高いです。輝度の設定などは初期設定のまま使い続けていますが、精細度が高くこの点での満足感は非常に高いです。これは普通に「おお〜きれい!」と感じます。
ウォッチフェイスが多数選べるのも良い…のですが、最終的に頻用するフェイスはある程度限られてくるとは思います。用意されているいくつかのフェイスでは表示項目を編集できるものもありますが、データフィールドが多いのでどこに何が表示されているか、使いはじめは戸惑うかもしれません。
▼ こういうシンプルなアナログタイプのウォッチフェイスもあります(左から時計回りにバッテリー残量・その日の記録済み移動距離・曜日と日・心拍数、という構成。このフェイスについては曜日と日以外の部分に他のパラメーターを割り当てられます)。画面の長押しでインストール済みのウォッチフェイスを切り替えられます
バッテリー持続時間については、健康モニタリングで心拍計測を最短の「1分」間隔にし、すべての項目を「ON」に設定しても約5日は持つ感じです(いわゆる「ハードな」使用)。省エネモードなら12日間保つそうですが、5日に1度の充電でも個人的には全く気にならないですね。充電もかなり速い(フル充電で2時間。残量がある場合は当然もっと速い)。
健康モニタリング機能は、かなり使い勝手が良いと思います。心拍・血中酸素・ストレスレベル・呼吸を同時に測定できる「ワンタップ計測」は、静止状態で45秒待つ必要はあるものの1回で済むので気に入っています。
また記録される睡眠の質(深い眠り・浅い眠り・REM睡眠・覚醒状態)も実際の感覚に近い。時間帯ごとに棒グラフでも表示可能。スマホアプリでも勿論見られます。これは個人的に毎日見る、超重要な機能となりました。運動量が適切だった時は深い睡眠の量が増え、アルコールが入った夜などは減るのがわかります。次の日の体調とデータを比較すると気付きが多いですね。
GPS性能、これも大きい不満はない、というか、かなり良い印象。5衛星対応のせいか、ビルに囲まれた場所でも10秒のカウントダウンで衛星が捕捉できなかったことはありません。感度はすごく良いと思います。専用アプリ「ZEPP」で連携させているStravaの表示を見ても、サイクリングでの走行ルートはブレが少なく、精度はかなり高い印象を受けます。
ちなみにGPS計測には複数のモードがあり、筆者は最も精密とされる「精度」モード(全ての衛星を使う)で使っています。このモードで約8時間のGPS記録を行った場合で、バッテリーの消費量は35%という感じです。「精度」モードでも日中に使い切ってしまうことはないでしょう。
ところでサイクリストの場合、走行データはGPSサイコンで記録することでしょうし、走りながらウォッチを見ることも稀でしょう。
しかし自転車以外にハイキングもよく行う私にとって、これが活躍する機会は多いです。私はハイキング中にスマホの電源をOFFにするので、ウォッチ単体でGPS記録できるのがまず便利。測定の開始・終了を忘れることもまずありません(自転車から外したGPSサイコンを持っていって使う場合に、よく起動を忘れることがあります)。
GPS記録中に他のアプリ、たとえば「天気」や「音声メモ」にアクセスしたいといった場合は「後で再開」という選択肢があります(GPS記録は右下ボタンから運動タイプを選び、右上ボタンで開始・一時停止などを行う)。
ちなみに高度表示は、開けた山頂でも多くの場合、10m前後の誤差が出るようです(補正機能を使わない初期状態の場合)。地形図を眺めながら現在位置を想像する場合、大きい支障はないレベルです(おおむね3m〜15mの範囲)。実際に記録されるデータも同様です。下の写真はとある山頂にて。この時は16mの誤差が出ていました。
装着感について。試用している「インフィニットブラック(他にブラウンレザーもあり)」のラバーストラップは装着感も良く、58g(実測重量)という重さは小型のフィットネス・トラッカーに比べると超軽量とは言えませんが、アウトドア活動で使っていても重さで疲れたり気になることはありません。寝る時も当然付けていますが、就寝中に邪魔に感じることもないです。
あとは本体右上のクラシッククラウン、これは秀逸です。指先の状態によって画面タップがうまく行かなかったり、上下に長いリストからなる設定項目では、このクラウンを巻き上げるとリストがザーッと動いて、その動きに合わせて「ククククク…」と手首に振動が伝わります。タップするよりこちらを使ったほうが快適な場合が多いですね。
使いにくいと思ったところ
さて、今度はGTR 3 Proの「ここはイマイチ」と思った点を見ていきます。
まず「天気」について。「ZEPP」アプリとウォッチの同期は簡単(アプリを起動させるだけ)なのですが、天気についてはアプリ内の「天気」をタップしないと現在地の天気は取得されないようです。例えば東京都内から都外の町に移動しても、天気は都内のまま(現地でアプリを起動しても、それだけでは同期されない)。
ただ、これはファームウェアで改善できそうな点ではあります。ちなみに複数地点の天気を事前に登録しておけるのはかなり便利です。よく遠征に行く地点の数日間天気をチェックしています。
GPS記録中の一時停止について。本体を右にスワイプすると「一時停止」と「終了」の2つしか選択肢が出てきませんが、右上のクラウンを押すと下のほうに「後で再開」という項目があります。これを見つけるまでGPS使用中は他のアプリにアクセスできないのかと悩みました。類似した機能が複数の場所に割り当てられていて、しかも表示形式や内容が違うということがままあります。
日常的なアクティビティの検出精度について。台所に立って料理しているような場合でも「この時間は起立していません」という表示がよく出ます(立ってるってば!)。このあたりのアルゴリズムも今後の改善に期待したいところ(個人的にはあまり関心がない機能ですが)。
クラシッククラウンの動作は先にも書いたように気持ち良く便利なのですが、選択した項目を決定するには画面をタップする必要があるので、ここはハイライトした項目をクラウンのプッシュ動作で決定(パソコンにおけるEnterキーのように)できるようになったらさらに良いですね。素人考えではソフトウェア的にできそうな気もします。
あとはインターフェース全般の問題でしょうか。機能がかなり多いこともあり、使いはじめはどこに何があるのかを把握するのが難しい。各種アプリやショートカットの配置などは個人的にあまり直観的とは思えず、慣れるまで少し時間がかかりました。
やや特殊なたとえですが、わかりにくさという点ではオリンパスのデジタルカメラのメニューに似ています。慣れれば問題ないですが、最初はどこに何が隠れているのか見つけにくい。右スワイプの「ショートカットカード(レジデント・アプリケーション)」や左スワイプの「クイックアクセスアプリ」といった呼称も個人的にはわかりにくく、例えば天気などは複数箇所からアクセスできても、それぞれ表示形式が違うので戸惑います。
おすすめの使い方としては、まずは出荷状態のまま数日〜1週間程度使ってみて、その間にウォッチ表面を左右上下にスワイプしてアプリの配置を理解し、画面の要素をタップすると他にもデータが表示されないか、クラウンを動かすと何が表示されるかなどを確認しつつ、自分に必要のないアプリは表示しないようチューニングしていくのが良いと思います。
▼ 心拍計をスワイプアップすると表示を切り替えられます(こんなところに違う表示形式が隠れていたのか!と驚きます)
全てのアプリを使う人はいないでしょう。例えば「コンパス」や「月経の履歴」や「ポモドーロタイマー」は自分には必要ないと思ったら、「アプリ一覧の管理(スマホアプリ内)」にて、それらを「その他」にまとめてしまい、頻繁に使う項目を上位表示する、という使いこなしが必要になるでしょう。
スマホアプリについても、インターフェースはやや複雑な印象を受けます。先にも書いたように呼称がわかりにくいこと以外に、ウォッチフェイスをうまく同期できないといった不具合も何度か経験し、ペアリングを解除してみたり、初期化する必要もありました。全体的に、慣れるまでに試行錯誤が必要な感じではあります。日本語のマニュアルについても全てが網羅されているわけではありません。
また参考までに、過去にXiaomi Mibandを使うために「Mi Fit」でアカウント登録している場合、ZEPPアプリとアカウントが共有されるようです。しかしMi Fitから引き継がれた身体データをZEPPアプリ側で更新してもMi Fit側には反映されない等、動作は若干のクセがあります(新規で使いはじめる方には問題にはならないと思います)。
誰に向いているか
さてAmazfit GTR 3 Proの以上の使用感を踏まえた上で、これがどんな人におすすめできるか、あるいはできないかを考えると、まずは視認性とデザイン性を優先したい方には向いていると思います。画面の精細度・美しさは特筆すべきものがあり、使っていて気持ちの良さはあります。プレミアムデザインだけあって安っぽさがありません。
またGPS機能を内蔵していてバッテリー駆動時間も必要十分以上と考えると、私のようにサイクリング以外でのシーンでGPS記録を残したい人にとってはいつでも記録開始できて便利。
健康モニタリング機能を重視する方で、ビジネスシーンから軽度なフィットネス活動でもシームレスに使える1台を探している方には良い選択肢になると思います。会社から家まで走って帰る、という場合でも、同じ時計でデータを取れるのは便利でしょう。
Bluetoothイヤホンとも接続できるのでウォッチに転送した音楽を聴きながら仕事をしたりもできるでしょう(スマホ内音楽のコントロールも可)。しかし筆者のiPhoneでは、iPhoneで再生中の音楽のコントロールはできるのですが、ライブラリの楽曲が検索できず転送できていません(「ダウンロード」フォルダ内なら可能なのかもしれない。権利関係の問題でしょうか)。
逆に、スポーツワークアウトや本格的なアウトドア活動に重きを置く方は、他の製品もあわせて検討したほうが良いと思います。ガチのスポーツ系スマートウォッチというより、日常生活での活動記録をベースとしつつ、スポーツ系にも少し踏み込んだというコンセプトの製品かなと気がします(しかし対応しているスポーツ数は非常に多い)。
とにかく多機能。内蔵スピーカーの音声も明瞭で、ボイスメモは重宝します(結構大きい音が出る)。特定の機能で先鋭的な何かを目指しているというよりも、より一般的な利用シーンで平均点以上を狙う、という感じのスマートウォッチではないかと思いました。基本的なフィットネストラッカーとしては優秀で、今後の進化のポテンシャルも高いと感じます。
下位グレードの「GTR 3」や「GTS 3」は、通話や音楽の本体保存ができません。逆にそれ以外の機能では大きい違いはないようです(ディスプレイはそれぞれちょっと違う)。他にスポーツ系のモデルでは「T-Rex Pro」というタフネスウォッチ(10ATM 防水)もあるのでチェックしてみてください。
▼ 本記事で紹介したGTR 3 Pro
▼ 下位グレードのGTR 3とGTS
▼ スポーツモードに特化したT-Rex Pro。しかし各機能の動作(高度計の使用可否や通知に対応するアプリなど)はモデル毎に若干違うようなので、購入時はスペックや各種レビューを十分読み込んだほうが良いでしょう(T-Rex Proについてはハイキング中の高度表示ができないそうです。またLINEの通知はできる人とできない人がいたりします)。