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ロードバイクは過去15年でどのように進化したか? 昔の人に説明するとしたら…

ロードバイクは過去15年でどう変わったか? 2008年以降、新車の情報には触れていない、という、いわば浦島太郎状態の人に「モダン・(ロード)バイク」を説明するとしたら、私達はどのような話をすることになるでしょうか? そんなスレッドを海外掲示板で見かけたのでご紹介します。

2008年にSpecialized Tarmacを買ったのですが、それ以降、新しい自転車はあまりチェックしていません。この古いバイクから買い替えようと思っているのですが、15年経った今でも重量がほとんど同じであることに驚いています(価格は倍になりましたが)。新しいバイクでは電動シフトの他に何か良いことがあるでしょうか?

出典 Has bikes advanced at all in the last 15 years? – Reddit

同じ重量でよりエアロになった

まず重量とエアロ性能についての意見が寄せられていました。

「重量がほとんど同じ」これはナンセンスですよ。あなたの2008年式Tarmacのほうが恐らくもっと軽い。

自転車界は、高性能バイクの主な指標としての「重量」から離れて行きました。今では、上り坂以外にも色々な場所で乗る人が増えたので、エアロダイナミクスとペダリング効率の増強に力が注がれています。新型Tarmacのチューブはエアロな形状で、少しだけ多くのしなりがフレームデザインに組み込まれていると思います。

ディスクブレーキのおかげでワイドリム・ワイドタイヤを使えるようになり、エアロ性能・転がり抵抗・快適性のあいだのスイートスポットを狙えるようになっています。

同じ重量なら、エアロ面でかなり有利になった。その上で言うと、フレーム以外で空気抵抗がかなり増えた部分もある

自転車にもよりますが、よりモダンなバイクでは次のようなものを目にするでしょう。

  • ディスクブレーキとスルーアクスル
  • ベターでスムーズな変速
  • ワイド(でよりロー)なギアレンジ
  • 広いタイヤクリアランス。今日では大部分のロードが32-38cに対応しているが(※ロードなら28-32cが上限のものが多いだろう、それに28c標準のものが多い、という異論が他投稿者からあり)、あなたのTarmacはたぶん25cが上限でしょう
  • エンデュランスモデルではIsoSpeedやFutureShockといった快適性に振った仕様が増えた
  • STIレバーはよりエルゴノミックなデザインになった
  • ハンドルバーがコンパクトになった
  • エアロでないバイクでもエアロを志向した設計になった

車体がより軽量になったわけではないのはUCIの規制も原因ですが、性能面での最重要指標が重量ではなく、エアロ性能になった、という意見が多く見られました。

フレームの進化

テクノロジーはあまり進歩していないという意見も多いのですが、カーボンフレームもアルミフレームもそれぞれ進化したという意見も見られます。

カーボンフレームから不快な硬さが減った

カーボンの設計製造は大幅に改善された。値段も手頃になり、ミッドレンジ・ロードバイクではほぼ標準になりつつある

アルミフレームに進化があった。僕のCanyon Endurace ALが良い例だ

ほとんどカーボンと同じくらい良いと思えるアルミフレームが出るようになった

これらは「快適性」という数値化が難しい領域での進歩が確実にあったことを意味するでしょう(その背後には小さく地味な技術革新の積み重ねはあったのではないかと思います)。

変速性能

電動シフトはやはり素晴らしい、という声が多いです。2008年に限って言うとシマノコンポの評判が良くない時期は確かにありましたね。

2008年は過去数十年間で変速性能が最も悪くなった時だった。Dura-Ace 7900とUltegra 6700だ。シマノは初めてシフトケーブルをバーテープの下に這わせるようになり、変速性能が貧弱だった。その後の8000シリーズ・9100シリーズでは大きく改良され、ほとんど完璧なものになった

ジオメトリの変化

グラベルロードの隆盛に伴ってジオメトリも変化した…が、変化したのではなく名前が変わっただけだ、という意見。

エンデュランス・ジオメトリーが増えた

(上の人に)「エンデュランス」なジオメトリーは80年代の「スポーツツーリング」ジオメトリと同じだ。同じコンセプトが違う名前で呼ばれているだけだ

テクノロジーは進歩せず、優先順位が変わった

個人的にいちばん面白かった説明がこちら。

こうした変化は実はテクノロジーの進歩とは関係がなく、自転車界の中での優先順位が変わったことと関係がある。人々は、よりワイドなギアレンジが重要だと考えるようになった。勿論、11スピードカセットのおかげで、ギア間の跳躍を少なくしつつワイドレンジにできるようにはなったのだが、それ以前にワイドレンジが不可能だったわけではない。

11スピードは少なくとも10年は存在しているし、これは進化とは言えない。タイヤクリアランスもまた優先順位における変化だった。ディスクブレーキはそのための役には立ったが、ワイドタイヤでも使えるリムブレーキキャリパーを設計できないわけではない。コンパクトバーでも同じ話であり、テクノロジーが進化したわけではないと思う

個人的にはテクノロジー面での進歩・進化もかなりあったとは思いますが、テクノロジーそのものよりもの「何を重要視するかが変わったのだ」という意見には説得力を感じました。

過去15年間で、ロードバイクの世界には新しい革新的なアイデア・技術が投入されてきたというより、「新しい価値観に対応するための最適化」が行われてきた、ということになるでしょうか。また、快適性をはじめとする数値化・定量化できない領域での進化のほうが大きかったようにも見えます。そしてそれは、決して悪いことではないですよね。

◯gの軽量化!時速◯km/hで◯ワットの削減!変速性能が従来より◯ミリセコンド高速化!といった方向性のマーケティングも、今後は減っていくのではないかという気がします。サイクリスト自体がそういった宣伝をあまり信用しなくなっていることもありますが、そもそもそうした性能に重きを置かなくなってきたようにも思えます(個人の意見です)。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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