Bianchiが先日、新型のOltreを発表して大きい話題になりました(これについての海外サイクリストの反応はこちらの記事で紹介しています)。新型OltreはBikerumor, Bikeradar, Road.cc等々の海外サイクルメディア大手で同じ日に一斉に詳細が紹介されていましたが、なぜか最大手のCyclingtipsでは紹介記事が出なかったのでした。何故でしょう?
本当は書きたかったのだが
なぜOltreの記事がないのですか? とCyclingtipsの愛読者がフォーラムで疑問を呈していました。同サイトは月間3記事までは無料で読めるのですが、以降は課金が必要になるサブスクモデルのメディア。有料購読者からすれば、各所で話題の重要新製品であるOltre RCについて、切れ味良い批評的考察やレビューが読めないのは、不満だったことでしょう。
中には「SpecializedやTrekの新製品については、微に入り細を穿った徹底的な批評記事、実使用レビュー記事を出すのに、Bianchiの新モデルについて何も書かないのは、お金やスポンサーといった不都合な事情のせいなのだろう」という意見を述べる人がいました。実際、同サイトは有償と思われるSpecializedやTrek関連の記事を多数出してはいます。
しかしこれに対し、同サイトの名物ライターJames Huang氏がSpecalized Diverge STRの紹介記事にて、次のような興味深いコメントを残しています。
不都合なことなど起きていませんよ。私達は、あの新型バイクについての情報を下さいとBianchiに何度もお願いしたのですが、何の情報ももらえなかったのです
つまりCyclingtipsとしては、新型Oltreの紹介記事を書きたかった。しかし他のサイトと違い、メディアキットさえ渡してもらえなかった。誰にでも手に入るようなプレスリリースをベースに、薄っぺらい紹介記事を書くわけにもいかない(※読者がCyclingtipsの記事に要求する品質水準は極めて高い)、という判断があったものと思われます。
Arcadexの酷評記事が原因か
では、なぜBianchiはCyclingtipsを完全無視することになったのでしょうか。その理由は1年前の今日、2021年10月22日に公開された同サイトの記事「BIANCHI ARCADEX REVIEW: STIFF AND SHORT(Arcadexは硬くて短い)」に原因があるのではないか、とする推測が見られます。その記事で執筆者のCaley Fretz氏は次のように書いています。
Bianchi Arcadexはアグレッシブなバイクになりたがっているように見えるし、速く走りたがっているようなライド感がある。しかし他のブランドの同じようなバイクに比べるとフロントセンターが2〜3センチ短く、フィットは驚くほど短い。その結果全体的には、頭から壁に突っ込んでいったとんがったスーパーカーのような仕上がりになっている。
私はBianchi Arcadexが好きではない。あなたはたぶん理解できるだろう。これは個人的には少し悲しいことだ、というのも、Bianchiはこれまで私にとってのトップテン・ベストバイクを数多く作ってきたからだ。Specialissimaはほぼ無敵の良さであり、グラベルのImpulsoにも不満はほとんどない。
(中略)
Arcadexはよりロードバイクに近い感じがするし、メローなダートを走る限りは、普通に良い。しかし高度な競争が行われているこの市場において、普通に良い、では困るのだ。
なるほど、このレビュー記事が原因で新型Oltreの情報をもらえなかった可能性は、十分にありそうですね。しかしCaley Fretz氏の記事は「酷評」ではあるものの、「よりアップライトなポジションの、体重が重いライダーには好まれる可能性がある」といった「自分以外の人間はどう思うだろうか」という視点もちゃんと盛り込まれてはいます。
しかしBianchiとしては、満を持して(?)投入した新型Oltreについて、少しでも短所を書かれることは避けたかったのかもしれませんね。同社にとってはそれだけ重要な新製品であり、出鼻を挫かれることは避けたかったのでしょうか。