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自転車タイヤのトレッドパターンは何のためにあるの? 回転方向が指定されているものを反対向きに使ったらどうなりますか?

頑張ってタイヤをはめたのですが、回転方向が決まっているタイヤであることに気付かず反対向きにはめてしまいました。このまま乗っても良いのでしょうか? という質問を海外掲示板の複数スレッドで見かけました。そもそも自転車用タイヤのトレッドパターンは何のためにあるのでしょうか。トレッドパターンのないスリックタイヤというものもあります。回転方向は守るべきなのか…

bike tire

Photo by Rehook Bike

出典 How much does the rotation direction matter in tyres? (Reddit)
出典 So How Important is Tire Rotation/Direction? (Reddit)
出典 does the directional tread really matter? (Reddit)
出典 Tread | Schwalbe Tires North America (schwalbetires.com)

異物の排出・駆動力伝達・ブレーキングと操舵力の伝達

まず私が興味深いと思ったコメントをピックアップしてみます。この中には、上の最後のリンクで紹介したシュワルベ公式サイトでの説明をベースにした考えも含まれていました。

  • トレッドは汚れや水などを地面とのコンタクトポイントから外に出すよう設計されているので、トレッドに回転方向があるのなら逆向きにはめるとゴミがコンタクトポイント側に向けられてしまい、トラクション損失につながるでしょう
  • トレッドのタイプによっては、回転方向はそれほど重要でないかもしれません。…ロード用のスリックタイヤには、逆方向に回転すると水はけの効率が悪くなったり、転がり抵抗がわずかに高くなるものがあるかもしれません
  • トレッドが前後逆にしても同じでないのなら、限界使用時のグリップに悪影響が出る可能性は高いです
  • ノブのあるタイヤでは(シクロクロスやMTBなど)、トレッドを逆方向にして使うとトラクションが向上する状況がありえます。メーカーによっては、ハードパック向きの回転方向を示す矢印、ルースな路面やマッド向きには反対方向を示すものがあります
  • ハイドロプレーニング現象は自転車では問題にならないと多くの人が同意すると思いますが、それよりも不完全な路面、濡れた路面でのトラクションでの影響はあると考えます。タイヤのプライのラミネート方法、スレッドの角度、レイヤーの数によって、回転時に多少のヒステリシス(=変形と復元による摩擦熱によるエネルギー損失)が発生することがあります。Bontrager(Trek)は、ケーシング・プライの方向に注意を払うようにしてから転がり抵抗において10%の違いを生み出せたと主張しています
  • ロードバイクでは全く問題になりません。グラベルバイキングでは、タイヤによって特定の方向で使うとわずかに速くなり、ブレーキング・トラクションがわずかに良いことがあります。MTBでは、トレッドパターンが良いものなら大きい影響が出ます。安いタイヤや悪いタイヤを使っている場合、気付かないかもしれません。またそのタイヤの性能限界まで使わないのなら、気付かないかもしれません。…ノブはリードする側のエッジがスロープ状になっていて、ブレーキングエッジではスクエア状になっています。転がり抵抗を減らし、同時にトラクションを増やすという考えからです。良いタイヤではサイドノブも一つの方向でより良く機能するものがあります
  • オフロードでは、回転方向はロードタイヤよりもはるかに重要になります。リアホイールは駆動力を伝達し、フロントホイールはブレーキング・ステアリングの力を伝達します。駆動力とブレーキング力は違う方向に働きます。タイヤによってはフロントで使うか、リアで使うかによって回転方向が違うものがあるのはこのためです

トレッドパターンには多く分けて「異物の排出・駆動力の伝達・ブレーキング力と操舵力の伝達」という少なくとも3つの目的があるように思えますね。また、トレッド表面とは関係なく、ボントレガーの例のようにタイヤ内部の構造が特定方向での回転に最適化されているものもあるようです。

オンロードとオフロードで少し考え方が違う

多くの人が言っているのは、状態の良い舗装路で使うロードバイクの場合、タイヤの回転方向はそれほど影響がないだろうという点(シュワルベ公式サイトでもそのように説明されています)。シュワルベによるとロードタイヤで重要なのはトレッドパターンではなくラバーコンパウンドのほう。違いが出るとしたら、グリップの限界性能で使う時だろう、という意見も多いです。

また排水問題についてはクルマでは大きい問題になるものの、自転車ではハイドロプレーニング現象が問題になるのは理論的に200km/h以上で走った時のみ、とされています(シュワルベ)。

一方でオフロードで使用するタイヤでは、トレッドパターンが重要になる、と多くの人が言っています。もしタイヤの回転方向が定められているなら、泥はけ・水はけがその方向に回転した時に最適化されるように設計されている(ことがある)。また、それを理解した上で、転がり抵抗の低さよりもトラクションを優先したいライダーの場合、あえてタイヤを反対向きに装着する人もいるようです。

ノブのないロードタイヤであれば、間違って反対方向に装着しても、タイヤの限界性能までグリップさせるのでない限り、大きい影響は出ないのかもしれない。しかしオフロードでは、ロードタイヤと舗装路との関係とは違い、タイヤのノブと地面が歯車のように噛み合うのでより気を使ったほうが良い、というのが基本的な考え方になっているように見えました。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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