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オンロード用自転車タイヤのトレッドにはどんなパターンも必要ない説

先日、自転車タイヤのトレッドパターンは何のためにあるの? 回転方向が指定されているものを反対向きに使ったらどうなりますか? という記事を書きました。この記事はその続きという感じで、「そもそもロードバイクなどで使うオンロード用タイヤのトレッドにパターンは必要なのか、意味はあるのか」という疑問を深掘りしてみます。

Continental GP5000

米国の自転車専門家・権威として多くの人に愛されているSheldon Brown氏のサイトに、トレッドについての彼の見解があり、現在の海外掲示板を眺めていても次に紹介する意見は大きく支持されているように見えます。これを手がかりに考えてみることにしましょう。

出典 Bicycle Tires and Tubes – sheldonbrown.com

Sheldon Brownによる見解

オフロードのためのトレッド

トレッドはオフロードでのトラクションを2つの方法で向上させます:

  • トレッドのノブは、固くイレギュラーな表面の突起物に引っかかり、スリップする傾向を減らします
  • 柔らかく潰れやすい表面では、ノブは表面の中に突き入っていき、グリップを向上させます
  • 80年代の後半、トレッドのデザインにおいて革命がありました。Specialized Ground Controlによって始められました。このタイヤは、また後の多くのMTBタイヤは、トレッドのサイドに背の高いノブがあり、ノブが曲がってタイヤのセンターラインから離れていかないようにするブレーシング(補強)も持っていました。これらのノブは砂や泥でのパフォーマンスを大幅に改善しました。何故ならタイヤの一部は地面と接触していくにつれ、平らに潰れます。この潰れの結果、外側のノブが内向きに曲がるようになり、その結果、ゆるい表面をプライヤーのように掴むようになったのでした

オンロードのためのトレッド

  • オンロード使用のための自転車タイヤは、どんな仕様のトレッドも必要ではありません。実際、最高のロードタイヤは完璧にスムーズで、トレッドが全くありません!

    不幸なことに、多くの人は、スムースなタイヤは滑りやすいと思い込んでいるため、このタイプのタイヤは事情に詳しくないサイクリストに売るのが難しいのです。大部分のタイヤメーカーは、非常に細かいパターンをタイヤに付けることで彼らに迎合します。見た目、マーケティング上の理由です。アスファルトやコンクリートの一部をよく観察してみれば、道路のテクスチャー自体が、高品質ロードタイヤのトレッドよりもはるかに「ノビー」であることがわかるでしょう。タイヤは柔軟性があるので、スリックタイヤでさえ舗装と接触するにつれ変形し、道路と接触しているあいだに限っては舗装のテクスチャーが持つ形状を得るようになります。

    人は「しかしスリックタイヤは濡れた道路で滑るのではないか、さらに悪いことに、エクスパンション・ジョイントのような濡れた金属や、ペイントされた線、線路などで滑るのではないか」と質問します。その答えは、はい、確かにその通りです。しかしトレッドのあるタイヤでもそうなのです。どんなタイヤもそうした状況では滑りやすいのです。トレッドに特徴があってもこのことは改善されません。

    [Jobst Brandtは、Avocetタイヤの設計に加わる時にこうした視点を推し進めました。Bicycle Quarterly MagazineのJan Heineは、トレッドサイドに軽いヤスリ状のパターン(a light file tread)があると濡れた表面でのコーナリング時のトラクションが向上すると語っています]

オンロードタイヤではどんなトレッドパターンも実は不要である、役に立たない、という意見は、極論のように聞こえてしまいますが、おもしろいですね。ただこうした意見の後に何らかの技術的進歩があって事情が変わっている可能性ももちろん、あるでしょう。

ハイドロプレーニングとの関係

ロードバイクではマンホールや白線の上で滑りやすいことが有名ですが、これはノブのあるタイヤでも同じ結果になる、というのがSheldon Brown氏の意見です。他の方の意見としては、濡れたオンロードの上であっても、ツルツルのスリックタイヤのほうがノブのあるタイヤよりもむしろグリップが良い(=単純に接地面が大きいから)というものも見かけました。

この「マンホールや白線の上で滑りやすい」ことはハイドロプレーニング現象と関係があるのだろうか、という疑問が自然と湧いてくるのですが、どうやらそうではないようです。Sheldon Brown氏のサイトにはハイドロプレーニングについての考察もあるので、興味のある方はそちらも是非お読みください(空気圧が80PSI/5.5barの場合でも、149km/hの速度にならないとハイドロプレーニング現象は発生しないという計算式が紹介されています)。

ハイドロプレーニング現象についての簡単なまとめとしては、クルマのタイヤの場合、地面に対して四角形が置かれているようなもので、すると長い底辺の下に水が入り込むと、排水が難しい。しかも速度が速い時、排水の時間が足りない。自転車の場合は、タイヤの底辺は狭く、丸いエッジで路面に接触するため、タイヤが浮くほど水が溜まることはなく、クルマより高圧で低速で排水もしやすいため、ハイドロプレーニングは起こらない、という説が有力のようですね。

クルマの場合は、タイヤに必ず溝があるのは排水をしなければいけないから。ロードバイクのタイヤは排水用の溝は必要ではないようです。グリップやトラクション性能はトレッドパターンではなく基本的にコンパウンド(素材)が決め手となるようです。オンロード用タイヤのトレッドパターンに「全く意味がない」かどうかは意見が分かれるとしても、「ほとんど重要ではない」のは間違いなさそうです。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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