シマノ製クランク、具体的にはHOLLOWTECH II(ホローテック II)と呼ばれるタイプのクランクの外し方を紹介します。同時に取り付け方もわかるように解説します。
用意する工具は次の2つだけ。5mmのヘックスレンチは家に必ずあると思いますが、2つめのTL-FC16については、持っていない方は買っておきましょう。
- 5mm ヘックスレンチ
- Shimano TL-FC16
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なおTL-FC16のかわりにTL-FC18という別の工具を使っても良いですし(後述します)、私のようにPark Tool BBT-9に付属の互換工具を使っても構いません。
おすすめは300円以下で買えるTL-FC16ですが、クランクキャップが固着してしまっている方はTL-FC18が必要になる場合もあります。
2本のボルトをゆるめる
STEP 1。左クランクを固定している2本のボルトをゆるめます。左右に1本づつあるボルトで、5mmのヘックスレンチでゆるめられます。
取り付け時は、このボルトを12-14Nmのトルクで締めます。徐々に交互に均等に締めていってから最終的に目標トルクで締めましょう(トルクレンチを使いましょう)。
ネジの回転方向は、普通に順ネジです。左クランクを固定しているのは、実質的にこの2本のボルトのみです。
キャップを外す
STEP 2は左クランクのキャップ外しです。このキャップ、ベアリングの「プリロード調整」のために存在しています。クランクアームの「面」がどのくらいの力でベアリングに接触するか、その力を加減します。日本語で「与圧」と言いますが、このキャップの締め付けトルクはシマノのマニュアルでは0.7-1.5Nmとなっています。これはごく軽い力での締め込みです。
そのため下のような工具をはめこみ、指で回すだけで着脱ができます。この作業では普通、先にも紹介したShimano TL-FC16という工具を使用しますが、私が持っているPark ToolのBB工具、BBT-9の反対側にはたまたまこのキャップ回しが付いているので、これを使ってみます。
キャップの窪みに樹脂製のこの工具をあて、あとは指で反時計回りに回します。普通はこれでスルスルとキャップが回って取れてくれるはずです。
もし何らかの理由でキャップが固く締まっていてTL-FC16では回らない、という場合はTL-FC18という工具(下にリンクを貼っておきます)を使うと取れるでしょう。ただ、高いですし、よほどのことがなければ必要ないとは思います(カッコいいけどね!)。
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脱落防止ピンを解除する
STEP 3ではクランクの脱落防止ピンを解除します。このピンは万一に備えた保険のようなものです。
もし取り付け方法が間違っていないのなら、写真で示した左クランクの外側にある切れ込みの下に、何か薄い工具を押し込むだけでプレートの先端が持ち上がってくれます。極細のマイナスドライバーや、1.5mmのアーレンキーでも持ち上げられます。
中に入っているのはこういうパーツです(下のリンク参照)。真ん中の銀色の小さいピンが噛み込むことで左クランクが容易に抜け落ちないようになる仕組みです。
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注意点としては、持ち上げすぎないこと。このプレートは樹脂製で折れやすくなっています。この方法でうまく外せない場合は、STEP 1でゆるめたボルトを、2本とも完全に抜いてしまっても良いでしょう。するとこの脱落防止ピン付きの樹脂プレートが落ちてきます(なくさないようにしましょう)。
このプレートは取り付け方向に決まりがあり、クランク外側に開いた側(オープンエンド)が来るようになっています。
クランクを取り外す
これでクランクを抜くことができます。左クランクは難なくスッと外れてくれるでしょう。右のクランクアームも簡単に抜けるはずです。
万一抜けない場合はショックレスハンマーをウェスなどで養生した上でやさしくコンコンと少しづつ叩いて押し出します。なるべく工具を使わないのがベターです(特に圧入式BBの場合はベアリングの内側にダメージを与えないよう要注意)。
以上、シマノ・ホローテック IIクランクの外し方でしたが、取り付け方の順番は
- 右クランクアームを挿入する
- 左クランクアームを挿入する
- 脱落防止ピンを下ろす
- クランクキャップを0.7-1.5Nmで締める(なおネジ山にはグリスを塗りましょう。ガタが取れる程度に「いい加減」で締めます。締めすぎる必要はありません)
- 左クランクの2本のボルトを交互に締めていき最終的に12-14Nmで締結(ここはトルクレンチを使いましょう)
という感じです。
作業性の良いシマノのクランク
ホローテックII、5mmのヘックスレンチ1本とTL-FC16という小さなプラスチック製の工具だけで脱着できてしまう、驚くほど簡単なシステムですね。これは素晴らしいなと思います。
カンパニョーロのコンポを自分で組んだことのある方はおわかりのように、ウルトラトルク・クランクなどは巨大なトルクレンチで42 Nm – 60 Nmの大きい力でクランク・フィクシング・ボルトを「ガッコン!!」と締める必要がありますよね。それに比べるとシマノ製クランクの作業性の良さには脱帽してしまいます。