海外掲示板のMTBスレッドで、1年でSRAMのクランクが2つも折れてしまった、という投稿を見かけました。写真が2枚添付されており、へぇどんなケースなんだろう、とコメントを読みはじめたところ、そのクランクとは全く関係のないところで、スレ主さんがいきなり焼かれていました。
原因は、スレ主さんのバイクのボトルケージにBluetoothスピーカーが入っていたことです。
出典 2 sram crankfails in one year wtf
以下、地獄のようなコメント欄から少しピックアップします。
- 間違いなくBluetoothスピーカーをライド中に爆音で鳴らしていたことのカルマ(報い)だよ。(追記)まじか、プロフィール見たら、あんた仕事が借金取りなのか? 間違いなくカルマだ(910いいね)
- (上の人に)これを読んだ後、気の毒だとも思わなくなった。保証が却下されることを願います!(80いいね)
- カルマがこの男から借金を回収しているところなのさ。応援する(42いいね)
- 彼のクランクが全部折れますように(117いいね)
- たぶんトレイルでBluetoothスピーカーを爆音で鳴らしていたせいですよ。いや真面目な話、そういう人にはならないでください(796いいね)
- (上の人に)真面目な話… こういう人はみんなに嫌われています(191いいね)
- スピーカーを使う人々は最悪だ。自転車トレイルでもスキー場でも(293いいね)
- 地獄にはトレイルで音楽を流す人のための特別な場所がある(81いいね)
- 自転車の調子が悪い時は、ふつう完全に壊れる前に前兆の音が聞こえるんだけど。スピーカーの音でかき消されていないなら(66いいね)
- 音楽と周囲の音も聴きたいならイヤホン、特に骨伝導タイプのものを買おう(100いいね)
- Bluetoothスピーカーを使うなら、トレイルでパンクしているのを見かけてもチューブを貸さないぞ(118いいね)
雰囲気からするとコメントの多くは北米のMTBerからのものと思われますが、Bluetoothスピーカーをトレイルライド中に使用することについては相当なレベルの反発があるようです。クランクが折れたスレ主さんへの同情は皆無に等しく、ひたすら地獄の業火で焼かれています。海外のMTBコミュニティは元々尖ったところがあるとはいえ、この怒り具合はちょっとヤバい。
ケース・バイ・ケースで考える
私自身は、Bluetoothスピーカーは今は使わないのですが、かなり昔に都会のサイクリングロードで使った経験は、あります。いま使われている方に対しては、意見は何も持っていません。
この問題は議論が難しいところがある、と思ったのは、山歩きをはじめるようになってからです。Bluetoothスピーカーそのものの話題ではないのですが、関連するエピソードをご紹介します。
私はハイキング・山歩きをする時、自然の音を楽しみたいので音楽やラジオを聞くことは、まずありません(サイクリングでもいまは全く聴きません。自宅Zwiftは除く。あと長時間ウォーキング中にラジオをイヤホンで聞くことはたまにあります)。
ある日ある山で、ザックに吊るしたラジオから、バラエティ番組の音を結構大きめに鳴らしている方が、私を抜いていきました。
やがて見晴らしの良い山頂に着くと、その方がベンチに座って食事の用意をしています。ラジオは付けっぱなしです。私もそこで食事休憩するプランだったので、ああ、うるさいなぁ、せっかく文明から離れてきたのに… と思いながらも、我慢しながら食事。
その方が悪い人かというと、そういう話にはまったくならないでしょう。うるさいと思った私がわがままなだけ、とも言えます。というのも、その登山道で「熊が出没しているので、声を出したりラジオを流したりしてください」という看板も、確かに見ていたのです。
エンタメ目的以外にも、安全対策の意味もあってその方はあえて大きめの音でラジオを流していたのかもしれません。するとそれは常識的な行為であって、自然の音が楽しめないじゃないか、という私の不満は「そんなん知らんわ。俺は熊に襲われたくないんだ」と一蹴されてしまうでしょう。
「あと俺は自然の空気を振動させて音を聞くのが楽しみなんだ。俺の楽しみを奪うな」ということでしたら、立場は同じです。私も他人の楽しみを奪いたくはありません。こういう時は自分からそっと離れていくのが一番かなと考えています。
Bluetoothスピーカーをはじめとする音響装置を使うことの是非は、MTBトレイル・都市部のサイクリングロード・ハイキングトレイルなどの状況でも変わり、一概には決めつけられないと思います。一瞬だけすれ違うサイクリングロードなら勝手に楽しんでくれ、と許容する人もいるかもしれませんし、いや公共空間ではとにかくやめてくれ、一瞬だってイヤだという人もいるでしょう。
ただ、タイヤが異物を踏んだ・スポーク間に枝が入った・パーツが何か脱落しそうになっている、といったトラブルの予兆を察知する能力が失われがちになる、という意味においては、スピーカーを大音量で使用するのは、エチケット云々の話とは別に、安全面で大きい問題になりうるかもしれませんね(MTBでは特に、クラッシュの被害が自分以外にも大きく及ぶケースが多いでしょう)。
Bluetoothスピーカーの「是非」には個人的に全く興味はないのですが、アメリカではこれほどまでに嫌悪されているのか、と今回は驚かされたのでした(MTBコミュニティ以外でも批判はよく目にしていましたが、今回はほぼゼロ・トレランス)。煙草や副流煙問題と似たところがあるのかもしれませんね。
全員が納得できる平和のためには、Shokzのような骨伝導ヘッドフォンのほうがベターなソリューションではございましょう(山での熊対策にはならないけれども)。
▼ 参考記事:Shokzの骨伝導ヘッドフォンはどれを選べばよい?