ENVEがディーラーと登録ユーザーに対し、同社のカーボンリムにはChallengeとVittoriaの特定のタイヤを使わないように、という注意喚起を出したようです。3月9日のCyclingtipsの記事が伝えています(Enve Composites sounds alarm on open tubular and cotton clincher failures)。
ENVEによる使用非推奨・推奨タイヤのリスト
同サイトが入手した注意喚起メールによると、使用を推奨しないタイヤと推奨するタイヤのリストは次のとおり。
使用を推奨しないタイヤ
- Challengeのハンドメイド・クリンチャー(すべてのモデル)
- Vittoria Corsaのチューブレスでないモデル
使用を推奨するタイヤ
- Bontrager
- Continental
- Hutchinson
- IRC
- Mavic
- Maxxis
- Panaracer
- Pirelli
- Schwalbe
- Specialized (28mm幅のS-Works 2BlissモデルのみSES AR 4.5 Discリムでは使用不可)
- Tufo
- Vittoria (上で述べたCorsaモデルをのぞく)
ChallengeとVittoriaの対象製品の使用を推奨しない理由としては、ENVEによるとビード付近のサイドウォールが薄く裂けやすいため、ということのようです。
ChallengeとVittoriaによる反論
このENVEによる注意喚起に対しChallengeとVittoriaが反論していることをBicycle Retailerが伝えています(Tire makers react to Enve warning)。
両社の反論の内容は一言で言うと「お前のリムが悪い」です(笑)。
ChallengeによるとENVEのリムフックには「半径0.2mm以下の2つのシャープなエッジ」があり、それが原因で同社のタイヤ、また他の会社のタイヤにも「ビードの3-4mm上に0.5mm離れた2つの平行のカット」が入ってしまうのだそうです。
さらにChallengeは
ENVE SESリムのフック半径は現行の国際基準に適合していない。そのことはENVEにも伝達した。またChallengeのタイヤは「2019 ETRTO・過去のETRTO・まもなくリリース予定のISO 5775タイヤ・ホイール嵌合基準」に適合しないリムでは使わないように、とユーザーに警告した。
とも言っています。
つまりChallenge側によると「悪いのは規格外のリムをつくっているENVE」ということのようです。
ENVEは自社のウェブサイトで「MシリーズのM60 PlusとSES 4.5 ARディスクリム以外」のすべての同社のリムはETRTO規格に適合している、と述べています。しかし例外となっている2製品がなぜETRTO規格に適合していないのかについては理由を述べていません。
このことについてENVEの責任者は「現段階ではコメントできない」とのこと。
使用非推奨と名指しされたもう一方のVittoriaですが、ENVEによるテスト結果を見せてほしい、と言っているようです。
同社は
1996年以降何百万本ものオープン・コルサを販売してきており、鉄リム、アルミリム、カーボンリムでも世界中のレースで使われてきたし、過去に特定のパターンでのタイヤ損傷報告はない
と主張しています。
さらにVittoriaは同社のタイヤ使用者には「タイヤの寿命を早めるようなシャープなエッジが使用ホイールにないかどうかをチェックするように」提案もしているようです。
つまりVitoriaも「ENVE何言ってんだお前」という感じです。
いずれにしてもENVEのホイールでは「天然繊維を用いた、ヴァルカナイズ製法でない(=生ゴムに硫黄を化合して硬化させていない)オープン・チューブラー構造」のタイヤサイドがビード付近で早い段階で破れてしまうという事象がある。
同社がそれを公表しているので、これは事実でしょう。よってENVEホイールを愛用されている方は注意したほうが良いと思います。
ただそういう事象が発生しているのは、果たして昨今のChallengeやVittoriaのタイヤが性能追求の結果、ビード付近のサイドウォールが薄くなってしまっているからなのか。それともENVEのリムエッジがシャープすぎるからなのか。そもそも両社の主張は事実なのか。
まあ「どっちが悪い」かはエンドユーザーにはどうでもいい話ではありますが、いまボールを持っているENVEがどう反応するか、そして他のリム・ホイールメーカーではChallengeやVittoriaのタイヤでこういう問題が発生していないのかどうか、気になるところではあります。
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