そう…こいつだ! 箱に写っている「ビバンダム」。ミシュランタイヤの公式マスコット君であります。
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ミシュランマン、またの名をビバンダム
英語圏ではミシュランマン(Michelin Man)と呼ばれたりもする「ビバンダム」。ミシュランを象徴するあまりにも有名なこのキャラクターはいったいどのように誕生したのでしょうか。
はじまりは19世紀末のフランスにさかのぼります。
時は1894年、エドゥアールとアンドレのミシュラン兄弟は、積み重ねられたタイヤを眺めているうちに「腕のない男の姿」を思い描きました。
その4年後、アンドレはオ・ギャロップ(O’Galop)という名で知られていたフランスの漫画家マリウス・ロシヨン(Marius Rossillon)と出会います。
ロシヨンはアンドレに、彼がとあるドイツのビール醸造所のために描いた絵を見せます。それは大きいビールグラスを持った、でかくて貫禄たっぷりの人物が”Nunc est bibendum”というラテン語を口にしている姿を描いたものだったのですが、その作品はくだんのビール会社には拒絶され、ボツになった作品でした。
ところで”Nunc est bibendum”とはどういう意味でしょう。これは紀元前1世紀の古代ローマの詩人ホラティウスが抒情詩「カルミナ」に残した言葉です。
Nunc est bibendum, nunc pede libero pulsanda tellus.
今こそ飲む時、今こそ自由な足が大地を踏む時。
これは今という時を楽しもう、人生を楽しもう、という意味合いで使われた言葉だといいます。
アンドレ・ミシュランはすかさず、オ・ギャロップの絵の中の巨漢を、タイヤでできた人形に置き換えることを提案します。こうしてオ・ギャロップは「ボツ作品」を「初期のビバンダム」へと生まれ変わらせることになりました。 下は1898年、ビバンダム0歳です。
このポスターには”Nunc est bibendum”というラテン語のほかに、フランス語も書かれています。
Nunc est bibendum!!.. 今こそ飲むべき時!!
c’est-à-dire: すなわち
à Votre Santé あなたの健康にために(=フランス語で「乾杯」の意)
le pneu Michelin ミシュランタイヤは
boit l’obstacle! 障害物を飲み込む!
このビバンダムが手にしているワイングラスの中に入っているのは、割れたグラスであるように思われます。右側にいる人物のグラスは割れていて、皿の上にも割れたグラスがのっています。
ビバンダムはいままさにこの割れたグラスを飲み込もうとしているわけです。飲み込んでも平気。パンクなんかしない、というアピールであったように思われます。
右側にいる人物には”Pneu X”(タイヤX)という文字が見え、体中ボロボロの満身創痍状態。両隣の人物ともに、とても痩せています。空気が減っている。ビバンダム君はパンパンです。
つまり他社のタイヤよりもミシュランのタイヤは丈夫なのだ、空気も抜けないぞ、ということをこの広告で示したかったものと思われます。
あと、どうでもいいことですが、右側の競合他社タイヤの絵、ひどいですね。鼻毛長すぎw
いつから「ビバンダム」という名前に?
「ビバンダム」という愛称は遅くとも1908年までには使われていたそうです。
ホラティウスの”Nunc est bibendum”は、ラテン語では「ヌンケスト・ビベンドゥム」や「ニューン・ケスト・ビベンダム」などと発音されていたものと思われますが、”bibendum”の部分は、フランス語では「ビバンダム」が近い音であるため、そのような発音になりました。
なお英米では「バイベンダム」などとも呼ばれます。また「ビブ」という愛称もあるようです。ただ一般的には「ミシュランマン」と呼ばれているようです。
ビバンダムはなぜ白い?
私達が知っているタイヤとは、黒い物体です。しかし1912年以前、タイヤは灰色がかった白色か、明るく透明なベージュ色をしたものだったそうです。そのためビバンダムも白かった、という説がありますが、これは諸説あり、真相は定かではありません。
1912年以降、保存料及び強化剤としてカーボンが加えられたためタイヤは黒色になりました。それにあわせ、ビバンダムの外見も一時的に黒色になり、そのようなポスターも出回ったそうです。しかし主に審美的な理由などで、白に戻ったそうです。
ビバンダムの現在の姿はいつ頃できあがったの?
初期は鼻眼鏡をかけ、時に葉巻まで吸っていたビバンダムが走っている姿を見せるようになるのは1980年代になってから。1998年、ビバンダムは生誕100周年を迎え、スリムな姿に生まれ変わりました。
このラゲッジ・タグに書かれている”La qualité qui dure”(ラ・カリテ・キ・デュール)は「持続する品質・特質」の意。ビバンダムはデビュー当初から一貫して「高い耐久性」をアピールしてきてたんですね。
ビバンダム、今年で120歳なんですねぇ。