首都直下地震や南海トラフ巨大地震。いずれも今後30年以内に70〜80%の確率で発生するとされている大地震です。
そうした大規模の、あるいは未曾有の規模の大地震が起こってしまった場合、スポーツ自転車は果たして避難の手段として活用できるのでしょうか。活用できるとしたら、どんな仕様と装備が避難時には必要とされるのか。想像力(妄想力?)を働かせて考えてみました。
大径ホイールのMTB・グラベルロード・シクロクロスが活躍する
2011年に発生した東日本大震災のマグニチュード9を超えるような地震、首都圏でも震度7以上を記録する大地震が発生した場合のことを考えてみます。
その時はあらゆるライフラインが寸断され、電車・地下鉄・バスといった公共交通機関もまったく動いていないでしょう。都市機能が壊滅してしまい、物流は停止し、商店は閉ざされ、経済活動も完全に停止している。
起こってほしくはないですが、そんな状態を想像してみます。
多くの道路にはヒビが入り、路上にはビルの壁面からの破片やガラス片が散乱しているでしょう。津波による被害も重なった場合は、水が引いた後に様々なものが流されて路上に転がっていることでしょう。泥も堆積するはずです。クルマが通れない道も多くなるでしょう。
しかしクルマが通れないような道路状況でも、自転車なら利用可能な避難所を求めて、あるいは被災を免れている地方の親戚や友人のところへ移動することができるかもしれません。スポーツ自転車ならなおさら、自力で遠くまで移動できるでしょう。
都市機能が麻痺するほどの壊滅的な地震災害の後でも、スポーツ自転車は貴重かつ有効な移動手段として活用できるはずです。オフロードタイプのモーターサイクルも良さそうですが、ガソリン供給の問題があります。
さてこの時、自転車で移動しながら生きながらえるとするなら、スポーツ自転車愛好家の私達が所有している自転車の中ではどんなタイプのものがより避難に適しているでしょうか。
小径車・ミニベロはホイール径が小さすぎて、路上に転がっている流木や大きめの障害物を乗り越えていくのは難しいでしょう。
ロードバイクのスリックタイヤも泥が堆積した濡れた路面を進み続けるのは難しそうです。700x28Cタイヤでは先に進めない道も多くなるはずです。
ぬかるんだ泥。瓦礫が散乱し、ひび割れたアスファルト。そうした道を走るのなら、ノブが高くて太いブロックタイヤをはいたマウンテンバイクや、やはり太いタイヤのグラベルロード、そしてシクロクロスバイクもこうした大災害時には機動性が高いように思われます。
平和な世界では大活躍してくれるブロンプトンのような小径車は、大地震直後の世界ではほとんど役に立たないような気がします。
チューブド・クリンチャーが活躍する
そんな状況で理想的なタイヤ・ホイールシステムを考えてみます。1度家を出たらもう戻っても意味がないくらいの大地震が起きた時、あらゆる商店も数週間から数ヶ月は営業再開できないような世界になってしまった時。
そんなことになってしまったら、いちばん活躍するのはチューブド・クリンチャーかなと想像します。
というのも、予備チューブ1〜2本とタイヤブート、枚数の多いパンクパッチセットを携帯しておけばとにかく「パンクの回数」に対応できるような気がするからです。
チューブレスの場合、シーラントが乾いたら補充できるような世界ではないでしょう。チューブラーの場合、予備タイヤを1〜2本携行してもそれがパンクしたら終わりです。
自宅から離れ、自転車店も営業していない状態で可能な限り長く自転車に乗り続けられるタイヤ・ホイールシステムはチューブド・クリンチャーではないでしょうか。
勿論、シーラントのたっぷり入ったチューブレスで出発し、度重なるパンクでシーラントもSahmurai Sword的のようなツールでの修理も効かなくなったらチューブドにして運用する、というのがさらに良いかもしれません。
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もっともチューブドの場合はリム打ちパンクのリスクが増えるので悩ましいところですが、チューブレス派もインナーチューブを携行すべきなのは間違いないでしょう。
自転車のパンクは主に3つのタイプに分類できます。
- 貫通パンク:釘やガラス、金属片がタイヤとチューブを貫通する
- リム打ちパンク:チューブが変形しリムとタイヤに挟み込まれて穴があく
- サイドカット:タイヤサイドが鋭利な物体に引き裂かれる
チューブド・クリンチャーはリム打ちパンクに弱いですが、空気圧を保持しておくことである程度回避できます
ホイールについては、スポークが破損しても交換が容易な手組みホイールや汎用スポークを使用できる完組ホイールが理想的であるように思えます。予備のスポークを普段から数本ストックしておくのが良いかもしれません。
ライトと電源の選択
ライフラインが寸断され大規模停電が長期的に発生しているような状況であれば、便利なUSB充電式のライトでも簡単には充電できません。その場合はソーラーチャージャーを用意しておく必要があるでしょう。
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CATEYEにはソーラー充電式のテールライトはありますが、フロントライトにはありません(というかそんな世界でテールライトに意味はあるのか…)。
ダイナモ式のフロントライトも良いでしょう。しかし自転車用のUSB充電式ライトなら乗車していない時でも取り外して汎用的に使えるので、やはりソーラーチャージャーがあると安心でしょう。
荷物は何を携行すべきか
最近、思うところあって下の防災バッグを買いました。2011年の東日本大震災から8年も経って、はじめてこういうものを買ってみました。先月、やや地震の回数が増えてきた時に思い立ちました。この類のものは既に持っている方のほうが多いでしょう。ずっと先延ばしにしてきました。
以下の膨大な数の避難用のアイテムが詰め込まれています。内容物的には避難所での数日間の生活を想定したものに見えますが、野営をしなくてはならない状況でも役立ちそうなものが多く含まれています。
- リュックサック、緊急用ホイッスル、2WAYドライバー、カッター、圧縮袋、予備袋、筆記用具セット、歯ブラシ×3本、綿棒×20本、マスク×3枚、携帯トイレ×3個、45Lポリ袋×3枚、紙皿×3枚、プラカップ×5個、割り箸×5膳
- スプーン・フォークセット、2WAY懐中電灯、ラバー手袋、お薬ケース、布テープ、レインポンチョ、サンダル、アルミシート、アルミブランケット、エア枕、非常用給水バッグ、ラップ、アルミホイル、ボディタオル、ティッシュ
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これらに加えて、自転車のメンテナンスに必要になる携帯ツール一式。そして生存のために最低限必要な食料や衣類、医薬品セットなどをパニアバッグに入れて出発することになると思います。上の防災バッグは背中に背負います。
キャリア付きの自転車は積載能力で活躍してくれそうです。ならママチャリでもいいのではないか、という声も聞こえてきそうですが、遠くまで逃げるのならスポーツサイクルのほうがやはり良いですし、リアタイヤのパンク修理がずっとラクです。ママチャリの整備にはスパナ等の工具も必要になってくるので大変です。
原発が破壊され、放射能が漏れた場合に備える
冗談みたいな話ですが、大地震に伴い原発事故が発生した場合、私は「とろろ昆布」を携帯することになると思います。というのも、放射性ヨウ素による甲状腺がんの発生を抑えるには、あらかじめヨウ素を摂取しておくのが大事だからです。
ヨウ素が豊富な食品は昆布・わかめ等の海藻類ですが、特に昆布が優秀です。
ヨードを含む食品は,海産物,特に昆布や昆布だし,昆布の加工品に多くみられます。文部科学省によると成人のヨード必要量は130μg/日であるのに対し,昆布1食(5g)当たりヨード含有量10 ~15 mg ,わかめ1食(5g)当たり0.5mgと圧倒的に昆布に多く含まれます。
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最寄りの原子力発電所が操業停止中でも、電源喪失で冷却機能が失われれば放射能流出につながる事故は発生するでしょう。そんな時は太いタイヤをはいたスポーツ自転車に乗り、昆布を食べながら遠くにいる知人・友人の家を目指します。
結論
かつてない規模の大地震が発生し、舗装路にはヒビが入り穴も開き、電気・水道・ガス等のライフラインも寸断され、スマホもネットも使えず、経済活動も停止した世界において、どんな仕様のスポーツ自転車で何を持ち、より安全な場所を求めて避難すれば良いのか。
総合すると、自転車は、チューブド・クリンチャーのホイール・タイヤシステムが望ましい。ライトとソーラーチャージャーを忘れないこと。いちばん参考になるのは、結局のところ日本一周・世界一周するようなツーリング車でしょうか。車種としてはツーリング車は勿論、最近人気のグラベルロードも活躍しそうです。
荷物は防災用品一式のほか、自転車の基本的なメンテナンス用品(特にパンク修理関係を充実させる)、その他生存に必要な食料・衣類・医薬品を携行する。より多くの荷物を持てる場合はキャンプ用品一式を携行できればベストでしょう。
特記事項として、原発事故に備えて昆布を用意しておくのが好ましい。
と考えますが、自転車のシステムについて異論や他の提案もたくさんあると思います。その時は是非ご意見をいただければ幸いです。