「普通に走れる走行性能を持っていること」そして「折り畳み時に、ホイールの着脱なしでもホイールサイズのレベルでコンパクトになること」を両立できる自転車は、「ブロンプトン」「カラクルS」そして「Tern BYB」が代表格だと言えるでしょう。
自分はカラクルに行くほど尖った選択ができなかった(&売り切れてるはずの限定車を店頭で見て気絶した)ので、ブロンプトンを思わず衝動買いしてしま…もとい熟考を重ねた上で購入に至りました。キリッ!
なんですが、Tern BYBのリリースが開始された今となっては「どっちにする/どれにする」というのは本当に頭を抱える難題だと思います。
そんなわけで、Tern BYB P8を試乗してみて「ブロンプトンと比べてどうか?」を取りまとめてみました。ただしブロンプトン側の評価には、オーナーの贔屓目が大きく混入しているので、その辺は差し引いて見ていただけますと幸いでございます。
ブロンプトン VS Tern BYB 比較ポイント1:走行性能
走行性能は、明らかに「Tern BYB」が上です。そもそもタイヤサイズに差がありますし、外装変速機構による回転抵抗の少なさ、変速段数の多さ、ポジションの調整幅などなど、走行に関わるほとんどの部分で着実な優位性を持っています。
税込約4万円かけてチューンした6段変速のブロンプトンよりも、吊るしのTern BYB P8の方が走行性能はハッキリ上だと感じてしまいました。認めたくない…認めたくないけど、自分にウソはつけません。こ…これで勝ったと思うなよー!!(号泣しながら驀走)
Tern BYBの走行性能に関わるネガは、ブロンプトンに比べてkg単位で車重が増すこと。ですが平坦を走っている分には、「重い…」と感じることは無かったです。また、坂道でも車重のことは全然気にならず、むしろ選べるギアのレンジがどえらく広いこと(6速ブロンプトン比で)の有り難みしか感じませんでした。
ブロンプトン VS Tern BYB 比較ポイント2:見栄え
ブロンプトンは複雑な折り畳み機構を持っているにもかかわらず、その外観は思いのほかシンプルさを感じさせます。太いメインフレームとハンドルステムの描く、柔らかなカーブ。それと対照的に、細くて真っ直ぐな複数本のパイプで構成されるリア三角という組み合わせの妙。「造形美」という言葉が、ぴったり当てはまるブロンプトン。リリンの生み出した文化の極みです。
対して「Tern BYB」は、パーツ数も多くかなり複雑な造形です。「ゴチャついてる」とも言えてしまうし、「凝縮感があってたまらん!」とも言えます。ここは、完全に個人個人の好みですね。
自分の場合、カクカクでメカメカしいスタイルは大好物なので、圧倒的に後者。BYBを舐めるように眺め尽くしたあとで自分のブロンプトンを見ると、むしろ物足りなさを感じてしまい…ません。どっちもイイです!
目指す方向性が全然違うので、それぞれの良さがあります。どちらも魅力的なデザインに仕上がっている、と感じます。片方に決めきれない、コウモリ野郎だと笑ってください…。
ブロンプトン VS Tern BYB 比較ポイント3:折り畳み手順
ブロンプトンもTern BYBも、折り畳みは普通の折り畳み自転車より手順が多いし、複雑であると言えます。
どっちも面倒!ではあるのですが、少なくともブロンプトンのほうは、慣れてしまえば楽勝。折り畳みも展開も、ぜんぜん苦になりません。
ブロンプトンの折り畳み手順は
- ストッパーを操作して、リア三角を前方向に回転させる。
- メインフレームの固定ネジを緩めて折り畳み、固定用のフックを引っ掛ける。
- シートポストのクイックリリースを緩めてサドルを下げて、クイックを締め直して固定。
- ハンドルポストの固定ネジを緩め、折り畳んでロック。
- 左ペダルを折り畳む。
以上。
対してTern BYBの折り畳み手順ですが、
- ハンドルのクイックを緩めて、ブレーキレバーを上方向に向けて固定する。
- シートポストのクイック(上側)を緩め、サドルを逆方向に回転させてから下げてクイックを締め直す。
- シートポストのクイック(下側)を緩めて、サドルを下げる(クイックは締め直さないらしい)
- メインフレームのロックレバー(2箇所)を解放し、フレームをN字型に折り畳んでロック。
- 車体を持ち上げて、後輪とキャスターの車輪を使って自立させる。
- ハンドルステムのロックレバーを解放してハンドルステムを折り畳み、ベルト状の器具で固定する。
- ワイヤーの調整機構を操作する。
- ペダルを外してフレームの固定穴に差し込む。
という流れになります。
「慣れれば大したことない」という感じですが、ブロンプトンに比べて手順は明らかに多いです。また、2カ所のヒンジとステアリングという、3カ所の回転軸を持ったTern BYBのフレームをスムーズに折り畳むには、コツを掴む必要がありそう。
それと「ハンドルをベルト状の器具で固定」「ワイヤーの調整機構を操作」という2つの操作が、ちょっとイケてない感じ。
ベルト状の固定具は固定・解放を繰り返していたら穴が拡がっちゃって固定力が弱まったりしないか?という不安がつきまといますし、キチンと収納しないとフレームからびろーんとハミ出します。
▼レバーの下で、ベルトがびろーん。
それにワイヤー調整機構の操作は「折り畳みに必要ないところで、わざわざ追加の作業をさせられている」という印象が否めません。
どちらも別にクリティカルなネガでは全然なくて、重箱の隅をガツガツと突いてるだけではありますが。
その反面で、Tern BYBのフレームやハンドルステムの固定がレバー式である、というのは固定力と操作性の両面で非常に洗練されています。フレームのレバーにはしっかりロック機構もあるので、安全面も抜かりありません。この辺は流石に最新型!という感じです。
ただし、それを差し引いても折り畳み・組み立てについては、やっぱりブロンプトンの方が作業手順が少なく面倒な感じは薄いです。輪行ライド後のヘロヘロ状態で感じる折り畳みストレスの差は、結構な大きさになるでしょう。
とはいえ、ブロンプトンもTern BYBも、ロードバイクを輪行状態にすることに比べれば「圧倒的にラクチン」だと言い切れます。
ブロンプトン VS Tern BYB 比較ポイント4:輪行時の取り回し
折り畳みやすさ・運びやすさを含め「輪行しやすさ」は、ブロンプトンに軍配が上がります。
Tern BYBで実際に輪行してみたわけではないのですが、そこを差し引いてもこう断言して構わないだろうと考え得るだけのスペック差です。
ブロンプトン M6R | ブロンプトン CHPT3 V2 | Tern BYB P8 | Tern BYB S11 | |
---|---|---|---|---|
折り畳み時のサイズ | W59cm × H58cm × D27cm | 同左 | W52cm × H81cm × D35cm | W51cm × H81cm × D33cm |
カタログ記載重量 | 12.2kg | 10.48kg | 14.3 kg | 12.7kg |
※各メーカー公式サイト及び認定ショップサイトの情報を基に作成
ブロンプトンとTern BYBのサイズ・重量・価格の差はこんな感じ。数字としてはそこまで大きな差ではない…という印象があるかもしれません。なんですが、折り畳んだ状態の実車を見て、持ち上げてみての印象では、Tern BYBのサイズと重量はブロンプトンで感じているような「超輪行しやすい!」と思える閾値を超えてしまっている感じがあります。
ブロンプトンは「ちょっと大きな普通の荷物」という印象に留まりますが、Tern BYBは「大きな荷物」になってしまう。ロードで輪行するときのように、最前・最後尾車両で端っこに置きたいサイズ感です(異論は認めます)。
町田駅でJRから小田急線にコンコースを歩いて乗り換える時、ブロンプトンなら耐えられていますが、Tern BYBだとちょっと自信ないです。
またブロンプトンは折り畳んであれば、そのまま抱えてタクシーの座席に乗り込めます(経験者談)。Tern BYBのサイズだと、トランクを開けてもらう必要がありそうです。
ブロンプトン VS Tern BYB 比較ポイント5:オプションなどなど
登場直後だけに「サードパーティーの製品群が整い切っていない」というところは、Tern BYBの現時点での弱点と言えるでしょう。輪行袋ひとつとってみても、ラインナップ数や入手性に大きな差があることは否定できません。もちろん、時間が解決してくれるとは思いますが。
また、ブロンプトンはBWCをはじめとするイベントが開催されていたり、いろんなコミュニティがあったりします。現段階で、リア充っぽく楽しめるのはブロンプトンの方でしょう(私?常にぼっちですが何か?泣)。
あ、あとブロンプトンは人気アニメのOPに登場していたり、折り畳み自転車マンガに登場していたりもしますね。
ブロンプトン VS Tern BYB 比較ポイント6:お値段
ブロンプトン M6R(通常カラー) | ブロンプトン M3L(通常カラー) | ブロンプトン CHPT3 V2 | Tern BYB P8 | Tern BYB S11 | |
---|---|---|---|---|---|
お値段(税別) | ¥200,000 | ¥180,000 | ¥336,000 | ¥138,000 | ¥248,000 |
※ミズタニ自転車及びTern公式サイトの情報を基に作成
わかっていました…わかっていましたがブロンプトン、結構なお値段です。Tern BYB P8が、とても極めてすごく大変ウルトラ超リーズナブルなモデルに見えてしまいます。待て あわてるな これは孔明の罠だ!
とはいえ、高い方のTern BYB S11はブロンプトンのキャリア付き6段変速モデル、M6Rを上回る価格。装備と走行性能の差に、価格差に見合っただけのものがあるかは乗り比べてみての慎重な検討が必要でしょう。
それと…ブロンプトン CHPT3 V2のお値段については執筆者の生命と家庭内の平穏維持を鑑み、触れずにいただけますと幸いでございます…。
まとめ
比較ポイントをまとめてみると、こんな感じです。
●個人の主観入りまくりの星取表
比較項目 | ブロンプトン | Tern BYB | 判定 |
---|---|---|---|
走行・駆動系のスペック | 16インチ 2〜6段変速 | 20インチ 8〜11段変速 | Tern BYBの勝ち |
工具不使用でのポジション調整幅 | サドルの高さだけ | サドルの高さ・ハンドルの高さと角度 | Tern BYBの勝ち |
見栄え | シンプル・柔らかい | 硬質・複雑・メカっぽい | 引き分け (ただしカラーバリエーションの多さはブロンプトン優位) |
畳みやすさ | およそ5ステップ | およそ8ステップ | ブロンプトンの勝ち |
重さ | 10.48kg〜12.2kg | 12.7kg〜14.3kg | ブロンプトンの勝ち |
折り畳み時の大きさ | W59cm × H58cm × D27cm | W51~52cm × H81cm × D33~35cm | ブロンプトンの勝ち |
オプションの充実度(執筆時点) | 選び放題 | 限られる | ブロンプトンの勝ち |
ひと言で言うと走行性能はTern BYB、輪行しやすさはブロンプトンが優位です(ふたつ言った…というツッコミ不可)。
ブロンプトンのデザインが気に入っていて比較試乗しても走行性能に不満を感じないようなら、Tern BYBを選ぶ必然性は低いでしょう。Tern BYBはブロンプトンに比較して、ハッキリと大きく、重く、折り畳みの手間が大きいです。輪行でのストレスや気の使い方には、明確な差がつきます。ブロンプトンでの輪行で得られる「アッハー!なにこれ超ラクチン!」という感覚は、Tern BYBではそこまで感じられないでしょう。
ブロンプトンの「超」をつけたいほどの輪行のしやすさは、自転車の楽しみを確実に大きく広げてくれます。輪行して、自転車で走って、また輪行してから自転車で走って…。そんなライドをする気になれるのは、輪行ストレスが極めて低いブロンプトンならではと言えます。
とはいえ、輪行しやすさで差がついている部分は
- 重さ (最大で4kg程度。ただし、ブロンプトンの重いモデルとTern BYBの軽いモデルの重量差は0.5kgに留まります)
- 大きさ (Tern BYBは高さで20cm以上、厚みも5cm以上の差。ただし幅は7cm程度短い)
- 折り畳み手順の多さ (およそ3ステップ差)
ぐらいでしかありません。そこさえ許容できてしまうのであれば、選ぶべきは「Tern BYB」だと考えます。
ブロンプトンオーナーとしては直視したくないところではありますが、ブロンプトンをかなりカスタマイズしないと得られないであろう走行性能が、Tern BYBなら吊るしの状態で手に入ってしまいます。輪行で自転車を抱えて移動する時間と、輪行先で走っている時間はどちらが長いでしょうか。やっぱり自転車は、走ってナンボですよね(異論は認めます)。
そしてP8なら、税別約14万円。ブロンプトンの3速モデル比で、約4万円お安いです。4万円あればラブカスターを7,000個買って、10連ガチャを14回もまわせるじゃないですか!これは破壊力あるなぁ…。
で、最後に、自身の脚力と走行スキルの大幅な欠如を恥ずかしげも無く棚に上げて「ブロンプトンは走行性能が…」とかCBN Blogの記事に書いてしまう、どこかの誰かさんは、どうすればいいか考えてみました。
選択肢①:買い換えない
軽快に走るTern BYBを、指を加えて横目で見ながら泣くことになります。
選択肢②:買い換える
高い走行性能で、輪行先でのライドをより楽しめるようになるでしょう。ですが、それと引き換えに、輪行時の運搬負荷や折り畳みでストレスは確実に増加。駅や車内では失ったものの大きさに思いを馳せて、涙に暮れることになります。
つまり、どっちを選んでも選択肢の先に幸せな未来がありません。不幸だー!
…Tern BYB、なんという罪つくりで素晴らしい自転車でしょう。というわけで、あとは超コスパのP8にするか装備充実のS11にするかを悩むだけですね!(違)