米国Fuji BikesがInstagramでこんな面白い画像を投稿していました。いずれもフジの1960年代のヘッドバッヂらしいのですが、みんなこの中でどれが好き? とフォロワーに質問していたのでした。
コメント欄を見ると3人の方々が右上の「羽」がいい、と回答しています。フジには現在もシングルスピードのFeather(「羽」の意)や、グラベル寄りのFeather CX+やFeather CX Flatといったモデルがあります(このCX系は本国サイトには掲載されていないので日本向けモデルなのかもしれません)。
Wikipedia日本語版によると、Featherの初号機は1935年に遡ることができるようです。そう、フェザーは由緒正しいモデルなのです…!
現在はアメリカの会社
FUJIは、現在はアメリカを本拠地とする会社です。創業は1899年の日本に遡るのですが、1988年頃に倒産してしまってからはアメリカの会社に買われ、そのアメリカの会社は台湾の資本に買収されたりとかなりややこしい歴史を辿っています。
参考 Fuji Bikes – Wikipedia
参考 日米富士自転車 – Wikipedia
参考 Fuji Bikes | Building the best bikes for 120 years
資本関係がやや入り組んでいて、米国とアジアとでFUJIブランドを管理している会社が完全に同じではないようです。Feather CX+がアメリカで売られていないのは多分そういう理由でしょう。シングルスピードのTRACK ARCV(トラック・アーカイブ)も米国での扱いはなし。台湾や中国のほか、一部モデルは東欧のポーランドでも製造されているようです。
倒産する前の1960年代から1970年代にかけては米国でも大人気だったそうです。しかし80年代のMTBブームに乗ることができず徐々に衰退…という流れが上で紹介したWikipedia英語版を読むと想像できます。
下は70年代にヒップだったという「Dynamic 10」の広告。この頃はまだ日本の会社でした。
こちらは1976年の「SPORTS 10」の広告。”Only the price is not Fuji”は「性能とかデザインはフジの他のバイクのように最高峰だけど値段だけはフジじゃないぞ(高くない)」という、なかなかうまいコピーです。
FUJIが富士自轉車だった頃
FUJIは最初、「大日本自転車」という名前だったようですがその後に「日米富士自転車」になったそうです。下の画像はいずれもパブリック・ドメインで、時期は不明ですが1945年以前のものらしいです。一般には「富士自轉車」という名前で認知されていたのかなと想像します。製造が「大日本自転車株式会社」で販売が「株式会社日米商店」になっていますね。
それよりも上の広告の「最高標準車 覇王號・宣傳號」というネーミングが気になります。下のケント號・ホドソン號・リーフ號・スポーツ號・鬼號などもどんな自転車だったのでしょうか(「鬼タイヤ」や「鬼印部分品」というものメッチャ気になるw)。
「組立車にご使用になって利益多くして販賣出来る各種附属品」という文言も見えますが、これはB2B(業者向け)の広告だったのでしょうか。謎です。ちなみに台湾オフィスは「台北市本町一ノ三」にあったようですね。
と、ここまで書いていて気になったのであらためてこの2つの広告の起源を調べてみたところ、「台灣歷史評論」という台湾の方のブログに辿り着きました。それによるとこれらの広告は1933年6月3日に台湾の「台灣新民報」という新聞に掲載されていたもののようです。
参考 日治台灣的「自轉車」小史 – 台灣歷史評論 – 新浪部落
なるほど確かに1枚目には「非常時日本所産的强力自轉車」と、繁体字中国語で併記されていますね。
1933年(昭和8年)、日本は国際連盟に満洲撤退勧告案を突きつけられ、その結果国連を脱退しています。
ちなみに台湾では自転車のことを「自行車」(中国本土では「自行车」、香港では「單車」)と呼びますが、日本統治下の台湾では日本式に「自轉車」と呼ばれていたようです(出典・Wikipedia)。
それから何十年も経って、台湾が世界の自転車製造の中心地になったり、Fujiブランドが米国企業に移動したりと、フジのことを考えるといろいろとややこしい世界史が見えてくるのがまた面白いです。
会社の中身はもう同じではないのかもしれませんが、なんとなく連続性が維持されているような感じがするのも面白いですよね。会社のDNAが残っている気がします。
米国のFuji Bikesは2018年、親会社が破産。その親会社はまたまた他の会社に買収… と、今でもかなりややこしいことになっていますが、インスタ投稿などを見ているとかなり活発で元気が良い感じで、会社本体はうまく行っているような印象を受けます。
と、ここまで書いていて発見したのですが、FUJIの日本サイト(日本総代理店のAKIBOが運営)にメッチャ充実したコンテンツがありました。「本国」の米国サイトよりもはるかに読み応えのある「FUJIの歴史」について読めるので、興味のある方は覗いてみてはどうでしょうか。
FUJIの自転車については2回くらい記事を書きました。個人的に気になっているモデルは下で紹介したHELIONの他にクロモリのJARI 2.3, TRACK ARCV, Feather, Feather CX+など。STROLLもカッコいい!
書いてたら欲しくなってきた。¥69,000は安いぞw
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