TRPのHY/RDというディスクブレーキキャリパーを愛用しています。メカニカルワイヤーで油圧シリンダーを作動させるというハイブリッドなブレーキで、油圧ディスクブレーキ並みの優れた性能をお手軽に導入できるのが魅力です。
しかしこのブレーキ、一点だけマイナーな弱点があります。それは引き代の調整幅が狭いこと。最近のロード系シフターなら概ね問題ないのですが、旧式のカンパニョーロやSRAMのレバーで引くとややスカスカ目になるようです。私が使っているTRPのブレーキレバーでもケーブルをペンチでしっかり引っ張って調整しないといけなかったりします。
この問題に対応するための改造方法を以前、下の記事で紹介しました。今回、実際に改造してみたのでこの記事ではその過程と結果について書いてみたいと思います。
ブレーキは安全に関わる最も重要なパーツのひとつであり、安易に改造すべきものではありません。読者の方はこの改造は絶対になさらないで下さい。本記事は研究と考察及び情報共有のみを目的としており、この改造を推奨するものではありません。
作業は意外に簡単だった
作業は予想していたよりもずっと簡単でした。上の記事で紹介したTPRメカニックによる動画ではキャリパーをタオルで包んだ上で万力に挟んで金ノコで作業していましたが、私はキャリパーを片手で素手で持ち、幅5mm・厚さ1.5mmほどのダイヤモンドヤスリで作業しました。
動画を参考にカットする場所に目星を付け、ブレーキのインナーケーブルが十分に通る幅の溝を切っていきました。狭すぎるとワイヤーがうまく通りませんし、広すぎると(削りすぎると)アームの強度に影響が出そうです。
下の写真は、左側がカット後、右側がカット前の状態です。本来は右側からワイヤーを通すわけですが、新しく切ったこの溝に通すことで引き代を短くできるわけです。
実際にワイヤーを張った状態がこちらです。ワイヤーは純正状態と同じく、ボルト下のプレートの下に来ます。注意深く見るとわかると思いますが、プレートとワイヤーの接触面は、ノーマル状態よりも明らかに少なくなっています。ワイヤーがなるべくプレートの内側を通るように工夫しましたが、それでも見た目は若干心配な感じです。
インナーワイヤーが溝やプレートから外れる心配はないように思いますが、純正状態のワイヤーの通し方に比べるとやや不安な感じになるのは間違いないです。
引き代はどのくらい変わる?
この改造の結果、ブレーキレバーの引き代は期待通り、ワイヤーをギリギリと張ってキャリパー側のバレルアジャスターを限界まで外に出す、という面倒な作業をしなくともラクに調整できるようになりました。引き代が劇的に増えるわけではありませんが、必要十分なレベルにまで増える、という感じです。
ところで例のTRPメカニックによるYouTube動画にはこんなコメントが寄せられています。
この改造をやったばかりだ – Campagnolo Potenzaのレバーで。うまくいった。作業前にUSのTRPにメールしたらこれは正当な改造だという返事をもらえた。私はハックソーを使うのでなくドレメルで穴を開けたんだけど、そのほうがよりきちんとしている思う。
これは雑な改造であるように見える。TRPがポン付けできる交換用の溝付きアームを出してくれたほうが良い。喜んで代金を支払うよ。この改造をしてもマスターシリンダーを作動させるための十分な量のテコが少ないから何も起こらない可能性も高いし、私はブレーキについては運試しはしたくない。
この動画はTRPのアカウントでは公開されていないが、確かにTRP制作の動画であるように見える(デモバイクが同じだ)。彼らがこの作業を推奨していることに驚いている。この新しいケーブル・ルーティングだとケーブル・ピンチが同じくらいグリップできているようには見えない。うまく行くかもしれないし、私もやってみるかもしれないが、確かにハックという感じだね。
実際に作業してみて、上の3つのコメントはどれも同意できるところがありました。
縦に溝を切るよりも、インナーワイヤーが通るだけの穴をドリルで開けたほうが安全性は確かに高いだろうと思います。また、上でも書いたように引き代が「劇的に」増えるわけではありません(かなり「助かる」レベルには増えますが)。プレートのグリップ面積の少なさについても同意です。
こういう改造をせずにTRP HY/RDのワイヤーの引き代を短くしたいという方は、サードパーティ製(個人制作)ではありますが、アメリカのamazonから交換用のアームが手に入るので、それを使ってみるのも手かもしれません(詳細は下の記事をご参照下さい)。
でも、こういう面倒な改造をしないで済むに越したことはないですね。
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