チューブレスタイヤにシーラントを注入する方法は2つあります。インジェクター(注射器)を使ってバルブ穴から入れる方法と(チューブラータイヤの場合はこれ一択ですね)、タイヤサイドに隙間を作ってそこにドバッと流し込む方法です。
以前どちらが主流かCBN Twitterでお聞きしたところ「バルブ側から入れる派が81%」という結果が出ました。
チューブレスでシーラントを使用中の方にお聞きします。シーラントを入れる方法はどちら派ですか?
— CBN (@cbnanashi) 2019年1月2日
タイヤサイドから入れるのは失敗した時に液体がこぼれて床が大変なことになるというイメージがあり(そのため英語圏では注射器を使う”Dry Fit”に対して”Wet Fit”などと呼ばれてもいます)一般に敬遠されている感じがします。
実際、タイヤサイドからシーラントを入れるのは大変なのか。注射器を使った方法とどちらが簡単なのか。実際に何度か試してみたので、そこで掴んだコツをご紹介しつつ、考えていきたいと思います。
サイドの一部区間を開く
まず大前提なのですが、「タイヤのビードが上がった状態」から作業を開始します。
新品のタイヤでビードが上がる前からタイヤの底にシーラントを入れて、一発勝負で空気注入する方法もあるようですが、そもそもビードがちゃんと上がってくれるのかを確認したほうが良いですし、入れたシーラントを「タイヤの閉じた部分」で保持できないので液が飛び散るリスクが高く、私はおすすめしません。
というわけで新品で用意したタイヤであっても一度きちんとビードを上げてから、その上でタイヤサイドの一部区間を開いていきます。が、タイヤによってはビードが外れにくいのが難点です。
なんとか片方のビードに隙間が見えたら、そこにタイヤレバーを差し込みます。私が愛用しているのはIRCのチューブレスタイヤ専用タイヤレバー。ほんの少ししか隙間ができない場合はレバーのエッジ側を入れて、少しづつ全面を入れるようにします。
1本が入ったらもう1本を入れます。下の写真は撮影の関係上、2本のレバーが隣り合っていますが(左手で2本押さえて右手でカメラを持っているので)、2本の距離はなるべく離れていたほうが良いです。で、2本入ったら2本ともレバーを上にグイッと持ち上げて、片側のビードを開いていきます。このあたりはチューブドクリンチャータイヤの外し方と同じ手順です。
どうしてもタイヤレバーを突っ込めるくらいの隙間を作れない場合は、バルブ側からビードを外してみると上手くいくことが多かったです。バルブの頭がうまい具合にテコになってくれるのかもしれません。
こうやってシーラントを入れるためのセクションを(大体20cmくらいかと思います)開くのですが、タイヤによってはビードの両サイドを外さないと開いてくれないと思います。その場合、それでも大丈夫です。両方のビードを外してから20cmほど片方を開きます。
↓チューブレスではお世話になっているタイヤレバー。分厚くて使いやすいのでオススメ。
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開いたほうを下にしてシーラントを入れたら上にする
ビードをうまく外せたら、開いたセクションを下側に持ってきます。作業時は、タイヤの下にビニールシートを敷くのが良いでしょう(私はゴミ袋1枚を裂いて敷いています。便利ですよ!)。他に、注入するシーラントの量を計測できるものを用意しておきましょう。シーラント注入量は使うタイヤの太さによって変わるのでメーカー情報を参考に。
この写真では700x40CのタイヤにNotubesのシーラントを約60cc入れています(入れすぎるとタイヤが重くなりますが、私は最近「重くなっても気持ち多めのほうがいい」と考えるようになりました。だってパンクした時に噴出してくれる十分な量が残っていなかったら何の意味もないんだもの…)。
注射器は目盛りがあって便利なので使ってみました。ここは簡単です。ジャーッと入れるだけ。
こうしてシーラントを入れたら、下側の開いたビードを「簡単にやれる範囲で」閉じます。完全にきっちり閉じる必要はなく、大まかに閉じればOK。
次にタイヤをゆっくり回転させ、ビードが開いている部分を上に持ってくるようにします。すると下側には「ビードが外れていない部分」が来ることになります。シーラントの液体はそこに貯まることになります。すると今後の作業中にこぼれることがなくなります。
ここまでシーラントをこぼさずに作業できたらもうこっちのもの、もう優勝したも同然です。上側で開いているビードを完全に閉じ、あとはいつものようにブースター付きのフロアポンプやコンプレッサー的なものでエアを送り、ビードを上げるだけです。
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注意点としては、ホイールを床に接触させた状態でシーラントを入れると、ホイールの重みでタイヤが変形して、開いたビードの隙間からシーラントが漏れることがあるので少し気をつけましょう。ホイールをワークスタンドにひっかけるなどして宙吊りするとより安全に作業できるかもしれません(私の場合はそこまでやらなくてもうまくできています)。
注射器とどちらがラク?
こんなふうにタイヤサイドを開いてシーラントを注入する方法と、注射器を使ってバルブから注入する方法と、どちらがラクでしょうか?
私個人の感想ですが、「ビードを外す作業」がラクにできるタイヤであれば、今回紹介したタイヤサイドからの注入のほうが圧倒的にラクだと思います。
でもタイヤによってはビードが全然外れてくれないものもありますし、なんとか外れてくれるものでも体力を消耗することがあります。ここが唯一のネックでしょう。
逆に、ビードを外すのが面倒で体力も使うからこそ注射器を使った注入を好まれている方も多いのかもしれませんね。
私も基本的にずっと注射器派だったのですが、最近どうも失敗することが増えてきました。きっちりタイヤからもインジェクターからも空気を抜いてホースの角度を工夫してもシーラントがスムーズに入っていかず、結局床にこぼれてしまうことがあります。
原因はたぶんバルブが目詰まりしているのかな、と思いました。そこで今回の作業にあたって何本かのホイールを観察したところ、バルブのホイール側の穴が完全に塞がっているものが確認されました。
下の写真は、撮影前に爪楊枝でほとんどきれいにしてしまった後のものなのですが、右上にシーラントの塊が見えますよね。掃除前はこういう塊が穴全体をびっしり覆っていたのです。それを見て「ああ、これじゃ注射器でやっても入っていかないわけだ…」と思いました。
注射器を使用した「ドライフィット」は、一度上げたビードを外すという面倒な作業がなく、シーラントがうまく入りさえすればこんなにラクなものはありません。
しかし十分に空気を抜いて、バルブ位置やホース位置を考えて入れていかないとシーラントがこぼれたりしますし、うまくやってもバルブが目詰まりしていればなかなか入っていってくれません。
タイヤサイドからドバッと入れる今回紹介した方法の最大の難関は「ビードを外してタイヤサイドを開く」ところです。これは、場合によっては無理なこともあるかもしれません。しかしこの作業だけクリアできれば、むしろこっちのほうが断然ラクだと思います。
気をつければ床に大量のシーラントがこぼれるということもありませんし、さらに良いことに「注ぎ足し」時にこの方法でやるとタイヤの中の状態、シーラントがどれくらい残っているかがわかるんですね。
その意味でも、ビードさえ外せるのならこっちの方法のほうがベターではないか、というのが個人的な考えです。最近どうも注射器でうまく行かないんだよな…という方、一度試してみてはどうでしょうか。ビードが簡単に外れてくれるタイヤを使っている方には特にオススメです。