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錦絵の時代からドロップハンドルは存在していた! ~自転車歴史学~

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コロナウイルス緊急事態宣言の対象地域にお住まいの皆様、いかがお過ごしでしょうか。インドアトレーナーを持たざる私は早速ヒマです。

だがしかし! 自転車は脚だけで楽しむものに非ず! というわけで、頭で自転車を楽しもう企画第1弾・自転車歴史学をお届けします(なお第2弾以降は未定)。自転車の誕生・日本への上陸と発展・「コロナ後」の自転車ライフ考察が主な内容です。

本稿は「自転車の世紀」展図録、および「BCC自転車友の会だより」に主に依拠していますが、都度出典を表記すると読みにくくなるため、省いている箇所が複数あります。

それは約200年前に生まれた

まずは黎明編。

ドライジーネ

ドライジーネ(wikipediaより)

自転車の原型とされるこの「ドライジーネ」は今から約200年前の1817年、ドイツのカール・フォン・ドライス男爵が特許申請して誕生しました。

チェーン駆動ではなく、足で地面を蹴って進むため(乗っているシーンのイラストははっきり言ってダサい)、「自転」車とは言えません。しかしハンドルで前輪を操舵し、ブレーキも装備。37kmを2時間半で走った記録もあるそうです。

その後、自転車は現代に通じるスタイルを確立し、日本には幕末に伝来。1870年、東京の竹内寅次郎という職人が本格的な製造・販売を始めました。実はそれまで、自転車は「自輪車」「壱人車」「自在車」「乗切車」などさまざまな呼ばれ方をしていて、「自転車」は竹内が考案した商品名だそうです。

明治時代の錦絵にドロップハンドル!

明治44年(1911年)の錦絵には、ドロップハンドルを備えた自転車が描かれています。

東都新築日本橋之図

東都新築日本橋之図(自転車文化センターwebサイトより)

その理由・背景として自転車文化センター(BCC)学芸員・谷田貝一男氏は、この頃すでに上野や横浜、大阪などでトラックやロードの大会が開かれるなど、自転車競技が人気を博していたからだと考察しています。

レースとドロハンは切っても切れない関係、ということでしょうか。

他方、明治36年(1903年)には読売新聞の連載小説の主人公として、自転車通学する女学生・萩野初野が登場。いわゆる「はいからさんが通る」スタイルで自転車に乗る挿絵が人気を博したそうです。

当時から萌え~の概念があったとは明治人恐るべし…じゃなくて、市民の足としても認識されていたということですね(女性の自転車乗りはまだ少なかったそうですが)。

パリの宝石「ルネ・エルス」

海外に目を向けると、ツール・ド・フランスの第1回が1903年、ジロが1909年、ツールに初めて日本人が参加したのが1926年(当時は個人参加が可能だったとのこと)です。初参加者の名前は川室競(かわむろ・きそう)。ジャンプの主人公みたいな名前でカッコいい。

1933年(昭和8年)にはカンパニョーロ社が創立。1936年には「パリの宝石」と呼ばれるほどの美しい自転車を数多く手掛けた名工、ルネ・エルスがビルダーを創業します。

このルネ・エルスのツーリング車、博物館で見たんですがめちゃめちゃ美しい…。「言葉を失う」とはまさにあの瞬間だった、と今でも思い出せます。

パリの宝石「ルネ・エルス」

ルネ・エルスと並び賞される自転車工房「アレックス・サンジェ」は大判のガイド本(「パリの手作り自転車、アレックスサンジェ」)が出ています。2011年刊行で、アマゾンで定価(ただし6千円)で買えます。

パリの手作り自転車、アレックスサンジェ
ランデヴー・アレックス・サンジェ
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こういう本をさりげなくリビングのローテーブルに並べて、サイクリストな彼女にドヤ顔したいなあ…とかよく妄想します。なお彼女はいません。

時代を進めます。

1948年、九州・小倉で競輪が始まりました。

1956年には女性をターゲットとした買い物用自転車が発売されます。ただ、当時自転車に乗ることができる(スキルがある)女性は東京で45%、愛知で57%、福岡では23%と低めです。

5月5日は自転車の日

1960年代以降は歴史というより現代史、生活史の範疇でしょう。雑誌「サイクルスポーツ」の創刊は1970年でした。創刊50周年記念の5月号、往年の名車の写真が満載でおすすめです。これまたリビングのローテーブルに(以下略)。

CYCLE SPORTS (サイクルスポーツ) 2020年5月号
CYCLE SPORTS編集部
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おもいっきり近年まで時間を飛ばして恐縮ですが、やはり90年代末~00年代初頭の「ランス・アームストロングのツール“7連覇”」は絶対に外せない出来事でしょう。

といっても当時の私は「アームストロング? 宇宙に行った人? それともジャズプレイヤー?」状態でした。ランス本を読み始めたのもここ2,3年のことですが…いや~、何を読んでも(誤解を恐れずに言えば)おもしろい! しかも、本人がドーピングを認めたのは2013年と、割と最近のことだったんですよね…。

ドーピングが許されないことは大前提ですが、ドーピングに手を出してしまう人間の“エゴ”や“弱さ”を巡るドラマは心を惹きつけられるものがあります。

そんなにわかランス学入門者が物を言うのは恐縮ですが、ランス本で一番印象に残ったのは、ランスの元アシスト(自身もドーパー)がジャーナリストと共著出版した「シークレット・レース」(小学館文庫)でした。以前にプチ書評(下のリンクからどうぞ)も書いたのでご覧いただければ幸いです。

映画「栄光のマイヨジョーヌ」公開に便乗してオススメするロードレース・ストーリーズ10選
オーストラリア初のトップチーム「グリーンエッジ」(現ミッチェルトン・スコット)の5年間に密着したドキュメンタリー映画「栄光のマイヨジョーヌ」が、2/28から東京と大阪の2館(少なっ!!)で上映がたぶん始まりました。3/12まで。 なんで「た...

そして2010年代後半に差し掛かった16年、日本では「自転車活用推進法」が公布され、5月5日が「自転車の日」になったことはご存じでしょうか。

自転車は環境に優しい交通手段であり,災害時の移動・輸送や国民の健康の増進,交通の混雑の緩和に資するものであることから(中略)、

自転車専用道路,自転車専用車両通行帯等の整備をはじめとする15 の項目を基本方針として示し,重点的に検討・実施すべきとしている(内閣府)

いちサイクリストとしては、日本の道路行政には物申したいこともまだまだありますが、法律というこれ以上ない明確な形で自転車の活用がうたわれるようになったことはうれしく思います。

コロナ後の自転車ライフ

そして目下、コロナショックが真っ盛りです。観光やイベント関連業の方々の心中を思うと胸が痛くなります。私も親戚が飲食店経営、親は高齢、と人ごとではなく、個人的にも残念な目にいくつか遭っています。

しかし平和がいつかは破れるように、混乱もまた永遠には続きません。

日本では1973年のオイルショックを機に、シェアサイクルの取り組みが広まったとされています。

であるならば、コロナショックを機に自転車通勤が本格的に浸透していくことも十分考えられます。サイクリストの裾野が広がっていけば、コロナ後のまちづくりやサイクルツーリズムにもプラスに働くことでしょう。

自転車文化の躍進に期待し、日々を耐えていきたいと思います。

1点ご注意ですが、東京では4月から条例で自転車保険加入が義務化されました。コロナショックであまり報道されていませんが、自転車通勤を始める方はご留意ください。

といっても保険料は月額数百円程度ですみます(私はau保険に入っています)。また、自動車の任意保険や火災保険に入っている方はそちらで既にカバーされている可能性もありますので、ご確認を。

謝辞

本稿を書くに当たっては、2017年に 郡山市立美術館/茅ヶ崎市美術館/佐倉市立美術館で開催された巡回企画展「自転車の世紀」の図録を大いに参考にしました。当図録は写真も解説も見応え十分です。

2017年に 郡山市立美術館/茅ヶ崎市美術館/佐倉市立美術館で開催された巡回企画展「自転車の世紀」

ご興味のある方は、シマノが青山で運営している超オシャレカフェ「OVE」にて閲覧できるので、コロナが終息したらぜひお越しを。

公式 OVE オフィシャルサイト

また、東京・目黒にある「自転車文化センター(BCC)」が会員向けに発行している「友の会だより」もありがたく参照いたしました。BCCは都民サイクリストのオアシスのような場所で、いずれ紹介記事を書きたいなと思っています(コロナ終息後に)。

「友の会だより」の一部バックナンバーは会員でなくともネットで閲覧可能です。

参考 友の会|自転車文化センター

読み応えのあるコラム、自転車関連のおすすめ書籍などが掲載されているため、巣ごもりの時間つぶしにはもってこいです。

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著者
KPA

永遠のソロライダー。脚と財布に無理はさせないのがポリシー。スポーツバイク歴はベテランを自称するが、その大半をクロス、ミニベロ、フラットバーロードが占める(ロードを持ってないとは言ってない)。今年ブルベ(200km)を完走。

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