フレーム・完成車製品レビュー

外装10段変速の『Tyrell IVE 16』なら、長距離&坂ありルートもチョチョイのチョイですよ~【本当】

斜度スコア4!
心臓、痛い… 息、できない…
さっき食べた補給食、吐きそう…

山伏峠にハート打ち抜かれちゃった、nadokazuです。

というわけで、本日の駄文はこちら!

うどん県からやってきた、折り畳みミニベロ「Tyrell IVE」!

「Tyrell IVE(タイレル・イヴ)」うどん県(別名:香川県)のスポーツ自転車メーカー、アイヴエモーションの折り畳み自転車です。

Tyrell IVE

抜群にスポーティな折り畳みミニベロロードを複数ラインナップする同社ですが、IVEシリーズはスポーツ性に特化することなく開発されたモデル。「寄り添うための高性能」を開発キーワードとして、クロモリ製のフレームにサスペンション機構など快適性にもかなりのパラメータが割り振られています。

▼ 参考記事

Tyrell IVE(タイレル イヴ)うどん県からやって来た、「恋するフォールディング・バイク」に刮目してみた!
短い夢を重ねて 閉じ込めた物欲(いのち)の 孤独を君に捧げるnadokazuです。 というわけで、本日の駄文はこちら! 折り畳み自転車のダークホース「Tyrell IVE」。 「Tyrell IVE(タ...

「外装多段変速」の優位性を実感したい!

この「Tyrell IVE」と自分がすでに所有している「ブロンプトン(内装3段+外装2段)」「DAHON K3(外装3段)」の2台とで、最も大きく異なるのが「外装で段数の多い変速機」を装備していること。内装変速機特有の微妙な回転抵抗を感じることもなく、脚と路面の状況に応じて最も適切なギア比を選びたい放題です。

▼ IVE Sportsの外装変速機

IVE Sportsの外装変速機

ゆるポタ用途であれば、もう十分以上のポテンシャルを発揮してくれるでしょう。つくば霞ヶ浦りんりんロード(筑波鉄道コース)のような平坦路を、これまで以上に快適に走行できることは走らなくてもわかります(走ったけど)。

Tyrell IVE 16

そうなると、こんどは「長距離&坂ありのサイクリングに使えるだけの走行性能はあるだろうか?」という点が気になり始めてしまうのが、自転車乗りの悲しき習性。普段はロードバイクでしか行かないようなルートを走っても、この世のすべてを呪うような結末を迎えずに済むのでしょうか?

それを確かめるには、実際に走って確かめるほかありません。そこで我々調査隊(1名)はその謎を解き明かすべく、神奈川県相模原市の奥地へと向かった…!

と、ここまででおよそ原稿用紙2枚分の文字量なのですが、つまるところ「新しく買った自転車で、サイクリングに行きました。わーい!」の1行で済む内容。無駄な文字列を表示させてしまい、新年早々誠に申し訳ございません(焼き土下座)。

そうだ 道志、行こう。

Tyrell IVEによる長距離&坂ありルートの走行(人体)実験を行う場所として選んだのは、神奈川県相模原市と山梨県富士吉田市を結ぶ国道413号「道志みち」。東京オリンピックで自転車ロードレースのコースにもなった、山中湖に向かう人気のルートです。

道志みち

  • 横浜エリアからでも、スタート地点まで手軽に行ける。
  • そこそこの距離が走れる。
  • ゆるい登りからキツい登り、平坦や下りなどなど、バリエーションに富んだ路面状況。
  • 山中湖に着くと富士山の絶景ご褒美がある。

などなど、普通にサイクリングするのも楽しいし、自転車の性能実験と称してグダグダ走行するのにも最適なコースと言えるでしょう。

参考 NPO法人やまなしサイクルプロジェクト(YCP) 「百坂やまなし」道志みち

国道412号線と分岐する青山T字路から山中湖畔の平野交差点までは、Ride with GPSによると約43 kmで獲得票高は1,163 m。※@330k様作成の「RWGPS地理院標高 – Chrome拡張機能」を使用。

山中湖からは御殿場駅や小田原駅・三島駅といった「横浜方面に戻りやすい駅」まで、下り基調のルートで向かえるのも個人的には高ポイントです。籠坂峠を超えないといけないし、小田原着の場合は乙女峠の登坂が追加されますけどね!

実際に行ってみた。

そんなわけでTyrell IVEを詰めた輪行袋(@ab_pekoさん謹製、お手製輪行袋の「ブロンプトン用」がジャストサイズでした!)を抱えて向かったのは、JR横浜線の橋本駅。京浜東北線東神奈川駅からの乗車時間は35分程度なので、横浜エリアからだと家から1時間ほどで到着できます。手軽!

JR横浜線の橋本駅

そうそう、ウチのTyrell IVEは「IVE 16」という、バリエーションモデル。標準(18インチ)よりもひと回り小さい16インチのホイールに10速ティアグラ(標準は8速SORA)、廣瀬社長手作りのカーボンフォークとハンドルポストを装備。FXやFSXと同様に、カドワキのパウダーコーティング塗装で仕上げられています。

たまたま立ち寄ったローロサイクルワークス横浜店に展示されていて、気がついたら売買契約書にサインしていました。魅力的な商品をわんさか展示している自転車専門店では、わずかな油断によって想定外の壊滅的事象が多く発生します。皆様も、どうぞお気を付けください。

それはさておき、朝の時間帯はまだまだ冷え込みがキツいです。冬用グローブを付けて走り出しても、寒さで指先が凍りつきそうなほど。橋本駅から道志みちの起点である(と、個人的には思っていますが、ここが起点だという公式な情報は見つけられていません)青山T字路までは約12km。大した距離ではないものの、ZEBRA津久井本店を過ぎると斜度10%の地獄、通称「ZEBRA坂」が出現します。激烈ダメージで、脚のライフは早くも完全に失われました。

道志みち

青山T字路を右折してしばらくすると、「街中の道」から「山あいの田舎道」へ空気感がガラッと変わってきます。ツーリングに来た感が爆上がりで、ニヤつきが止まりません。ナルーマスクを装着せずに走っていたら、わたくし不審人物として通報されているでしょう。

それにしても、道志みちは走っていて実に気持ちがいい道です。そりゃあ登り基調ではあるし、サイコン読みで15%超の斜度が現れたりします。なのですが「どぎつい斜度の登りが延々と続く」というシーンに、あまり遭遇しません。

道志みち

それどころか平坦や下りが適度にミックスされていて、「登ってばかりでツラいだけ」という印象がかなり希薄です。へっぽこ脚の自分でも、山あいの風光明媚な景色を楽しみながら走れます。

ただし!

そんな「楽しい道志みち」は、「道の駅どうし」で終了。その先には、道志みちのラスボス「山伏峠(距離8.44km/376m UP ※Stravaの「Yamabushi-Climb」セグメント情報による)」が待ち構えています。

青山T字路から、道の駅どうしまでは約30km。とても気持ち良く走れるルートですが、確実に標高は上がっています。しかもそれなりの距離を走っていますから、知らず知らずのうちに脚力は削られまくり。

道の駅どうし

そして「道の駅どうし」で脚のライフが残っていないことにようやく気付くと、その先にはラスボスの山伏峠が待ち構えている…という寸法です。

どぎつい斜度と距離に恐れをなして逃げだそうとしても、周辺に鉄道駅などありません。引き返そうにも、ここまで楽しく下ってきた部分がこんどは登坂になって牙をむき襲いかかってきます。逃げても進んでも、手に入るのは登坂の苦悶ひとつだけ!

『ちょっとした登りはあるけど、ヒルクライムだけが延々と続くわけじゃないよ!ほーら、平坦や下りもあるし、楽しいでしょう?』

道志みち

そんな笑顔で貧脚を迎え入れた道志みちは、もう絶対に引き返せない場所まで来たところで、恐るべき本性を表すのです。

なるほど…悪魔的っ…!

そうなると、残された選択肢は「進む」だけ。山伏トンネルまでの登坂は、疲弊しきった脚を引きずりながら容赦ない斜度に立ち向かわなければならない地獄の旅路です。特に山伏オートキャンプ場の先にある2カ所の直線では、絶望的な長さの登坂をようやくクリアしたと思ったら、さらにキツい登坂に直面させられる悪夢のダブルアタックでメンタルを完全粉砕させられます。

「青山T字路→道の駅どうし」の約30kmよりも、「道の駅どうし→山伏峠」の約8.4kmのほうが明らかにツラくて苦しいです。地獄の底を這いずり回っているような感覚を味わいながら、この世のすべてを呪い、呪詛を唱え続ける時間が続きます。

いったいどうして、こんなことに…!?

永遠にも感じられる登坂の苦しみに耐え続けて、ようやく山伏トンネルに到着する頃には気力体力のすべてを失って真っ白な灰と化しました。

そこで強く感じたのは、脚はともかく両腕がボッコボコに疲れていること。ただでさえ貧弱な肉体がZWIFTばっかり続けていたことで、さらなる上半身ヨワヨワ状態になっていたのでしょう。

「ウデぇーっ いうことを… 聞…」

「なんてこった…
最後の最後で…
鍛えに鍛えた下半身に
上半身がおっつかなくなるなんて…」

と言い残して燃え尽きた、炎のマイヨ先輩の気持ちが少しだけわかりました。

Tyrell IVE 16で道志みちを走ると、どれぐらいの時間がかかる?

それでは、橋本駅を出発してから山伏トンネル手前までの所要時間を発表いたします!

4時間17分でした!(休憩や撮影の時間を含む)

Tyrell IVE 16

うわっ…私の走行速度、遅すぎ…!

というのは一旦置いておいて(涙)、時間は大量消費していますし、ステータスは「ひんし」になっちゃっていますが、それでも山伏峠まできちんと到達できています。

自分のへっぽこ脚でこれですから、ふつうの脚力をお持ちの皆様であれば1時間以上のタイムが短縮できるでしょう。いずれにしても「Tyrell IVEがバッチリ走れる自転車である」ということに、疑念を差し挟む余地はありません。

ちなみに同じルートをTyrell FXでも走っていて、そのときのタイムは4時間22分。なんとIVEよりも、多くの時間がかかっています。

Tyrell FX

え、FXってIVEより遅いの?と真っ青になったのですが、個々のセグメント通過タイムはFXのほうが速いので、これは休憩時間が長かったせいですね。

山伏トンネルを抜けると、ご褒美が待っている。

こんな感じで、散々な思いをして山伏峠を登ってトンネルを抜けたら、お待ちかねのご褒美タイム!山中湖畔では、どーん!とそびえ立つ富士山が見られます(※日頃の行いによる)。

山中湖畔から見た富士山

そのあとは籠坂峠さえ越えてしまえば、残りの全行程が下り坂パラダイス!

御殿場はもちろん、三島や沼津まで登りが一切ありません。ここまで獲得した位置エネルギーの力だけで、数十キロを走破することが可能。延々と続く下りは、もう「最高」としか言い様がないです。

今回ゴールに選んだのは、三島駅のほう。沼津に行って追加でゆるポタする時間はあったのですが、もう全身ヘロヘロ。新幹線なら途中乗り換え無しで新横浜に帰れるので、敗北者らしい選択をしました…。

そういえば、三島駅前にはとてもカラフルなバスが停まってましたよ。

三島駅前のカラフルなバス

タウンユースも、長距離も、さらに坂までも!

こんな感じで走ってみましたが、Tyrell IVEは結構な坂がある約100kmの行程を不安無く走りきれるだけの走行性能を持っていることが実証できました。

公式ブログによると「タウンユースでの取り回しの良さ」がIVEの得意としているところなのだそうなのですが、何をおっしゃるロングライドだって全然イケちゃいます。サスペンションがバッチリ効いているせいか、尻痛レベルも相当に低かったです(個人の感想です)。

Tyrell IVE

また籠坂峠からの長い下り坂では結構な速度が出てしまいましたが、すこぶる安定していて危うい感じは皆無。フロントフォークやハンドルステムの固定機構が2重化されているので、ダウンヒル走行中の安心感も絶大です(ブロンプトンで高速ダウンヒルしたとき「ハンドルやフレームの固定ネジが緩んだらやべーなー…」というヘンな想像に冷や汗をかいた思い出があります)。

というわけで!
 
乗って、安心! 動いて、安全!
走れる! 畳める! Tyrell IVE!

折り畳み自転車をご検討の際は、Tyrell IVEを検討の俎上に載せることを、激しくオススメしたいです。

そうそう、道志みちを走ったときに着用していたのは、マスターさんが激推ししていて思わずポチったミレーのドライナミック・メッシュ。

ミレーのドライナミック・メッシュの性能が異次元すぎた 吸汗速乾インナーの効果を倍増させるチートアイテム
人気の登山用品ブランド、フランスのミレー(Millet)によるアンダーウェア「ドライナミック・メッシュ」の実使用レビュー記事です。登山やハイキングに限らずサイクリングでも愛用者が多いベースレイヤーで、吸汗速乾インナーの下に着ることで汗による...

山伏峠ではあまりの斜度による走行負荷に、キャップが汗でビショ濡れになるレベルで全身からドバドバ発汗しています。

それなのに! 上半身はサラっサラ。不快感ゼロ!

籠坂峠から御殿場への下りでも、汗冷えをちっとも感じません。いったい何ですか、コレ? 魔法??

著者
などかず

美味しくご飯を食べることをモチベーションにペダルを回し、機材の性能に頼り切って「頑張らないことを頑張る」物欲系へっぽこ自転車乗り。リアルで自転車に乗れない週末にはZWIFTで合計100km以上のバーチャルライドを欠かさないものの、脚力や走行スキルについての言及は意図的に避けている模様。愛車はLOOK675、ブロンプトンCHPT3 V2、タイレルFX(これだけとは言ってない)。

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