COOSPOという中華ブランドの「BC107」というGPSサイコンを試用しています。後述するように人気のXOSS G+(レビュー記事)に非常に良く似たスペックとコンセプトを持つ製品で、今後同製品と人気を二分しそうな勢いの注目製品です。
本記事ではCOOSPO社に提供されたレビュー用サンプルの使用感を忖度ゼロでご紹介します。果たしてこの製品の実力は如何に!?
XOSS G+への露骨な挑戦状
まず付属品から。COOSPO BC107にはノーマルマウントと各種ラバーバンドの他、アウトフロントマウントが同梱されていました(※本記事時点。期間限定という話もあります)。これはお得。なおマウントはGarmin互換のクォーターターン式です。
充電はmicro-USBで防塵防滴性能はIP67。この「IP67」の「6」は最高の耐塵型を意味し、続く「7」は「水中への浸漬に対する保護」を意味します。XOSS G+は「IPX7」で、耐塵性能はテストしていないという意味です。ただ、このあたりは同じようなスペックではないかと推察します。
次にXOSS G+と大きさを比べてみましょう。何故XOSS G+と比較するかというと、スペックシートを眺めるとCOOSPO BC107は「露骨にXOSS G+にぶつけてきた刺客」であることが明白だからです。そして最大の差別化の1つがディスプレイの大きさ。XOSS G+は1.8インチ、COOSPO BC107は2.3インチとなっています。ベゼル部の面積が小さいのは好印象。
ここで両者の主要スペックを横並び比較してみましょう。BC107はディスプレイ・公称ランタイム・防塵防滴性能の面で秀でていますが、一方で衛星がGPSとBEIDOUの2つのみ、バックライトの設定がオートのみ。センサーとの通信はANT+でスマホとの通信がBluetoothという点は共通です。BC107はパワーメーター表示に対応している点は大きいでしょうか。
CooSpo BC107 | XOSS G+ | |
---|---|---|
GPS | GPS, BEIDOU(北斗) | GPS, GLONAS, Galileo |
駆動時間 | 28時間 | 25時間 |
防水性能 | IP67 | IPX7 |
バックライト | AUTOのみ | ON, OFF, AUTO |
Strava連携 | ◯ | ◯ |
センサーとの通信 | ANT+ | ANT+ |
パワーメーター | 対応 | 非対応 |
ディスプレイ | 2.3インチ | 1.8インチ |
データページ数 | 3 | 3 |
データフィールド | 6+2(後述) | 5 |
表示カスタマイズ | 不可 | 不可 |
実測重量 | 68g | 50g |
保証期間 | 12ヶ月 | 不明 |
価格(記事公開時) | ¥4,599 | ¥4,650 |
「BC107 vs. XOSS G+」は一長一短、スペックシート上ではほぼ互角な勝負と言って良いでしょう(逆に言うと少しの工夫でお互いを殲滅できるかもしれない!?)。
そして実際に使用してみた感想も最後まで両者とも「負けず劣らず」の印象が強かったです。以下、詳しく見ていきましょう。
屋外での視認性
まず屋外での視認性比較から。筆者所有のLEZYNE Super GPSとXOSS G+の3つを持ち出して何度かポタリングに出かけました。設置箇所を時々変更して眺めてみましたが、それぞれ「見え方の傾向」があるだけで、いずれかが特に秀でているとか、劣っているという印象はありませんでした。
強いて言うならBC107はコントラスト(色の濃淡)がやや薄い印象ですが、フォントの太さがあるためデータは見やすい。XOSS G+はフォントが細いけれども高いコントラストでカバーしている感じ。参考までにLEZYNE Super GPSはやや暗めですが、極太フォントで見やすい。視認性はどれも似たような感じです。
BC107はXOSS G+同様、表示できるページ数は3つです(リアルタイム・平均・最大)。しかしBC107では「斜度」が常に表示されている点(※)、加えて画面右上に「外気温」と「現在時刻」が表示されている点が大きい違いです。サイコンの気温計は直射日光が当たるとほぼ使い物にならないことが多いですが、曇天化ではBC107とLEZYNE Super GPSの気温表示はほぼ同じでした。
データの配置も良く似ています。下のXOSS G+のディスプレイでは心拍数とケイデンスが表示されていませんが、BC107ではそれらのレイアウトが左右逆になっています。あと「平均」画面では「獲得標高(AST)」が、「最大」画面では「消費カロリー」も表示されます(どちらもXOSS G+では本体表示されない)。
一点気になったのは、肉眼で見ている時は全く気付かないのですが、こうやって写真に撮ってみるとBC107の数値表示だけが一部、青っぽい色になっているところです。特定の部分が常にこのような色になっているわけではなく、他の写真では別の部分が青っぽくなっています。
画面のリフレッシュレートと関係がありそうですが、実際のところ理由はよくわかりません。また、XOSS G+とLEZYNE Super GPSはデジタルカメラのファインダーを覗いていてもこうした現象は見られません。しかしこれが視認性に影響しているようにも感じられません。ちょっと変わった点として紹介しておきます。
ケイデンス表示まわりは要改善かも
一点、明らかに改善を要する点として、ケイデンスまわりの表示があります。
まずケイデンスセンサーとのペアリングが成功していても、画面ではわからないのです。ライドの記録開始後に初めてケイデンスが表示されますが、それ以前は無表示(停車中も「0」などは表示されない)。
もしペアリングに成功しているなら「0」という数字が出てくれると分かりやすいのですが、何も表示されないので戸惑います(センサーとのペアリング自体は本体の右ボタンを長押しして「P1」ページで設定します)。
またケイデンス表示のタイムラグがやや大きめで、このあたりが気になる方はいるかもしれません。特にペアリング直後の表示は時間がかかります。しかしこれはXOSS G+でもほぼ同様の結果でした。
操作性について
本体のボタン操作は全く難しくはありません。電源ONは左側ボタンを短押し、OFFは長押しです(このボタンはラップも兼ねています)。XOSS G+の場合はON/OFFどちらも長押し。またBC107では設定モードに入る際は右側のボタンを長押し(XOSS G+は2つのボタンを同時に押す)。このあたり、親切設計かミニマル設計かの違いで、どちらが良いかは好みの問題。
しかし特筆すべき点として、COOSPO BC107は起動がXOSS G+よりもかなり早いです。1秒程度で起動します。これは明らかにBC107の勝ち(そしてその後のGPS補足までの時間は大体同じ)。
BC107ではライドを記録する際、中央のボタンを押します。ライド中断・終了時も中央ボタンで、電源を強制的にOFFにしてもデータは保存される仕組みでした。このあたりもXOSS G+と同じ。
BC107の衛星の補足時間は、初回起動時はやや時間がかかった印象ですが、2回目からは早い気がしました(初回で何らかの予備データが保存されるのかどうかは不明)。ただ、これも他社製GPSサイコンに比べて特に速いとか遅いという感じではなく、ほぼほぼ互角です。
本体での各種設定ですが、P1〜P5まで5つのページがあります。右ボタンで各ページを選んだあと、中央ボタンを押すと設定変更できます。エスケープは左ボタン。
- P1: センサーとのペアリング(右ボタン押しで発見したセンサーの保存)
- P2: ホイールサイズ手動入力(スピードセンサー使用時)
- P3: タイムゾーン設定
- P4: 単位設定
- P5: パワーキャリブレーション
取扱説明書は英語のみなので、ここは対応してもらえると嬉しいですね。
GPSの精度
次に目玉のGPS機能を見ていきましょう。開けた場所では概ね何の問題もなく使える、実用的なGPSサイコンです。しかし上空が遮蔽されていたり、電波状況の悪い立地ではどのような振る舞いを見せるでしょうか?
このテストにうってつけなのが東京のレインボーブリッジ。ここは自転車は走行できないのですが、リアタイヤに専用の台車を付けて押し歩くことはできるのでBC107・XOSS G+と共に歩いてみました。
その結果が下の画像。レインボーブリッジでは時々、頭上にある高速道路から離れた場所に広めの展望スポットがあるのですが、それらの場所以外では恐らく衛星を全く補足できない状況だと思います。そうした場合にデータを補正するアルゴリズムがあると思うのですが、これはCOOSPOもXOSSも一長一短あるようです。
この時は道路の南側の歩道を歩いていたのですが、大きいデータ補正はXOSSが、小さいデータ補正はCOOSPOが勝っているように見えます。これだけではどちらが勝ちというのは難しく、こうした悪条件でより精密な結果を求めるには軍事利用もされているGarmin一択しかなく、それ以外は「傾向の違い」こそあれ、どれも似たようなレベルではないか、というのが正直なところです。
しかし一般道のデータを比較してみると、全体的にはXOSS G+のほうが良好なデータであるように見えました。これは衛星がGPSとBEIDOUのみというところが関係しているのでしょうか。
夜間の視認性
次にディスプレイの夜間の視認性を見ていきましょう。BC107のナイトモードは写真に撮ると、なぜか昼間に見られたあの青色の部分がありません。これが肉眼での視認性にどのように影響しているかは不明ですが、バックライト点灯時はXOSS G+よりも少し明るい印象。しかしこれは「色味の違い」にすぎない感じもあり、どちらも視認性は同じように良好である、という印象でした。
しかしB107ではバックライトの設定を選ぶことはできず、オートのみです(日没時間に合わせて点灯)。XOSS G+は「常時ON・常時OFF・オート」の3つから選べます。個人的には夜間は点灯してくれれば良いので問題ないですが、ブルベなどで長時間駆動させたい場合はB107にこの設定を求めたい人もいるかもしれません。ファームウェアで対応してもらえると嬉しいですね。
アプリの使い勝手
COOSPO BC107はXOSS G+同様、スマホアプリ「CoospoRide」が用意されています。現時点では英語版のみで、このアプリから操作音の有無、本体の言語設定(※日本語非対応)、メトリック・インペリアルの切り替え、タイムゾーン等が設定できます。日本での初回使用時はタイムゾーンをGMT+9にする必要があります(主要な設定箇所を赤で囲ってあります。なおいくつかは本体でも設定可)。
BC107とスマホを同期させ、ライドデータをStravaに飛ばしたい場合は認証設定しておく必要があります。このあたりの動作はXOSSアプリとほぼ同じ。実際に使ってみるとXOSSアプリのほうが若干直感的に使えるような気はしますが、大きくは変わらない感じです。Stravaとはこれまで問題なく同期できています。あとバイクは3台まで設定できます。
このアプリ自体がGPSトラッカーとしても機能しますが、そのあたりは私は使用していないので詳細は割愛。
ケイデンス・ハートレートセンサーとのマッチング
さてCOOSPO BC107と一緒に、 ケイデンスセンサー(BK467)とハートレートモニター(HW807)も試用しています。ケイデンスセンサーについてはXOSS X1とほぼ同じ仕様で、バッテリーの入れ直しでケイデンスとスピードの切り替えが可能です。入れ直し直後に青LEDが点灯したらケイデンス、赤LEDならスピード計測モードです。特に大きい問題は感じません。
ハートレートモニター(HW807)は心拍ゾーンのLED表示があるモデルですが(ゾーン表示のないシンプルなモデルもあり)、光学式で上腕に巻き付けるため屋外で長袖を着ている時は見えません。これはランの時に活躍しそうな機能ではあります。BC107での使用中は、データが途切れたりすることもなく、これも問題なく使えています。
ペアリングは一瞬で何の問題もなし。ちなみにCOOSPOセンサーとXOSSサイコン、あるいはその逆の組み合わせでも普通に使えています。基本的な機能は十分に満たされているものと感じました。
コストパフォーマンスは非常に高い
さてCOOSPO BC107の初期使用感をご紹介してきましたが、私の印象は先にも書いたように、XOSS G+と比較した場合、特に秀でているところもなければ、逆に劣っているところもない。この価格帯のGPSサイコンを検討しているのであれば、どちらを選んでも大きくガッカリすることはないであろうコストパフォーマンスの高い製品だ、というものです。
個人的にはライド中にスマホを取り出すのは時刻の確認のためなので、それがなくなる点でCOOSPO BC107は便利。しかしXOSS G+も2ページ目でクロックは読めます。また気温表示は、個人的には別になくても良いかな、という感じではあります。
大きい画面が好み、という場合はCOOSPO BC107の勝ち。しかしXOSS G系も小さい画面・細いフォントながら視認性の高さを確保しているところには感心させられます。非常に良い勝負で、優劣が付け難いです。
となると最終的には好みの問題となりそうです。しかし価格的には両者ともほぼ同じで、COOSPO BC107にはアウトフロントマウントが付属するというメリットもあります(※いつまで付属するのかは不明ではありますが)。またパワー表示が必要な人にはBC107となるでしょう。パワーメーターを使わない場合の斜度表示は山を走る時に便利。
精密なGPSデータや科学的なトレーニングを必要としている方なら、Garmin一択です。しかしCOOSPO BC107のターゲットはそうしたガチ勢ではありません。低価格で一通りのGPSサイコン機能を使ってみたい、という人向け。本記事時点での価格は約4,000円なので、それを考えるとやはり圧倒的にコスパの良い製品であると思いました。
あとデザインはすごくいいと思います。ディスプレイが大きくベゼルも小さいせいもありますが、垢抜けている印象です。今後の製品展開が気になるブランドではないでしょうか。