最新のフラットバー・グラベルバイク(2600ドル)と27年前の中古マウンテンバイク(175ドル)は何がどう違うのか。見た目はよく似ているけれど、価格差は10倍以上。中古のクロスカントリーMTBはフラットバー・グラベルの代わりになるんですかね? 乗り比べてみたら面白いんじゃないの? というテーマの動画をCyclingTipsがYouTubeにアップしています。
プレゼンターは編集長のCaley Fretz氏と名物ライターのJames Huang氏(月刊サイクルスポーツ誌で言うと吉本氏と安井氏、的なコンビかな!?)。
最も楽しいフラットバー・グラベルはMTBに最も近いモデルだ
比較されているのはSpecialized Diverge Evoと1994年製のCannondale M400 CAAD2。彼等はちょうどフラットバー・グラベルをはじめとする最新グラベルバイクのフィールドテスト中とのことで、まずは次のように語っています。
私達はかなりの数のフラットバー・グラベルを試しているのですが、一般的に言って「フラットバー・グラベルはとても楽しいバイクである、少なくとも楽しく乗れる可能性があるバイクだ」との結論に達しました。
そしてもう一点気付いたことは「乗っていて最も楽しいフラットバー・グラベルはマウンテンバイクに最も近いタイプである」ということです
しかし唐突に次のような正直かつ悪意のないディスが入り、ああCyclingTipsのノリは面白いな、と思わせます。
フラットバー・グラベルはかなりMTBのようではあるが、それでも基本的にはひどいマウンテンバイクのようなものである
(フラットバー・グラベルは)かなりひどいマウンテンバイクなので、175ドルのこの中古MTBと比較してみようと思ったわけです。オンボロでひどいMTBだと思われるかもしれませんが、果たして本当にそうでしょうか?
この時点ではフラットバー・グラベルに対してダメ出しして古いMTBが大勝利する動画なのかどうかがわからず、続きを見てみようという気持ちになります。こういう比較動画はYouTubeに星の数ほどありますが、これは少しだけ両義的で面白い話が続きます。
クロスカントリーMTBとフラットバー・グラベルの最大の違い
この2台の最大の違いとして挙げられているのは「ジオメトリ」です。MTBのCannondale M400 CAAD2に乗っているCaley Fretz氏は、確かにライド中の様子を見てもフラットバー・グラベルに乗るJames Huang氏よりもやや前のめりで、小刻みなハンドルコントロールを要求されているのが見て取れます。
ジオメトリについてHuang氏は次のように語っています。
私はいつも「フレームのジオメトリというのは、これから買おうとしている家の立地みたいなものだ」と考えています。内装や外装は好きなだけ変更できますが、立地だけは変えられません。それは自転車でも同じ。この新しいバイク(Specialized)で間違いなく良いのはジオメトリで、フロントホイールがずっと前にあるのがいい。ケイリーはハンドルの前に落っこちそうになっていたけど、私はかなり安定していましたよ。
一般的に言って(ケイリーが乗っているようなMTBは)フロントにより重心があるためにナーバスなフィーリングで、ハンドリングがかなりクイックになります(前輪に60%の荷重があるFWDのクルマのようだ、とも)。林の中をうねうねと続いているシングルトラックで常に歩くようなペースで走っているのでない限り、(Diverge Evoのような)モダンなセットアップには遠く及びません
さて、これらの内容を踏まえた上で「中古MTBはフラットバー・グラベルバイクの代わりになるのか?」という問いに対し、2人は「なる」と答えています。
ジオメトリ自体は変えられないものの、ステム長等のフィット面を工夫すれば、フラットバー・グラベルに近付けることはできるだろう。また、Specialized Diverge Evoと250ドルの中古MTBは価格差が10倍あるが、前者が10倍良いバイクかというとそうとは言えない、とのことです。
2人とも共通して「俺達は大昔になんでフロントハブのすぐ上にハンドルが来るような、あんなにクイックなハンドリングのMTBに乗っていたんだろうな…」という感想を述べています(同時にそのヒドい体験こそが楽しさの本質であったらしい点にも触れられており、価値観の変遷が感じられて興味深い。1990〜2000年代にかけては「機敏さ」が至上の価値だったように思われます)。
「フラットバー・グラベルバイクは基本的にはひどいマウンテンバイクだ」という感想も面白いですが(言い方w)、かつてのMTBとは違うヘッドアングルやフロントセンター、ホイールベースといったジオメトリの違いは「グラベル的なライドスタイル」にはやはり大きい意味がありそうです。
というわけで「最新のグラベルバイク」も「中古MTB」もそれぞれの特性と良さがあり、どちらも推しです、という動画で、古いXC MTBのジオメトリでも工夫すれば全然楽しめるんじゃないの、という結論なのでした(ちなみに20年以上前のシマノ製コンポは完全に動作しているらしい。カセットやチェーンリングのスペアパーツは入手が難しそうだけど…とのこと)。
CyclingTipsがこういう動画を作っているのも、新車が容易に入手できない、あるいは非常に高価である状況に配慮しているような気がします。同メディアのスポンサーと思われるSpecializedも旧車ファンも金欠のオーディエンスも、みんなハッピーになる内容になっているな、と感じましたがどうでしょうか。