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どんなショップなら自転車やスポーツ用品を買いたくなる? 海外の事例から

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人はどんなお店なら自転車を買いたくなるのか。逆にどんなお店だと買う気が失せてしまうのか。そんなことを考えさせられる興味深い体験談を海外掲示板で見かけたので、ご紹介します。スレ主さんは次のように質問しています。

まもなく自転車の会社で働きはじめるのですが、お客さんが気持ち良く自転車を買ってくれるために必要なものは、何でしょうか。買う時は楽しくないといけないですよね? どんなことをされたら嫌ですか? ショップにはどんなことをして欲しいですか?

sales rep

photo: Antoni Shkraba

出典 What makes a good bike store experience? (自転車店での良い経験は何によって生まれるか)

決めつけずに話を聞く

まず、こんな回答が寄せられていました。

大事なのは、決めつける(※1)のではなく、耳を傾けることです。うちの近所には、私や女性のことを大事に思っていないショップが二軒あります。たとえば、私がセンチュリーライドを計画しているのでGIANT TCR用のサドルを探しているんです、と言っても、そこの店員さんはビーチクルーザーのサドルを示して「大部分の女性はこういうのが好きですよ」と言ったりします。そのお店はセールスの機会を逃しましたし、将来も明るくないでしょう

(※1)は、原文では”assume”という単語が使われています。「推測する・仮定する」と訳されることが多い単語ですが、特に根拠もなく、先入観を持って「こうだろう」と思い込んで決めつける、というニュアンスでよく使われます。

確かにこんな言われ方をしたらガッカリしますね。「大部分の女性は…」という言い方は「あなたも同じでしょ?」という決めつけがまずあるわけです。私は大部分の女性でもないし、大部分の女性の平均値でも中央値でもなく、GIANT TCRで160km走るという特定の目的があるのだ、ということですよね。そういう人にビーチクルーザーのサドルを指差すのは、普通にアウトですね。

次の回答は、長いのですが、かなり説得力のある体験談で、多くの賛同を得ています。

少し長くなるので、あらかじめお詫びしておきます。

今年の冬、私の夫はクロスカントリー・スキーを買おうとしていました。私達は、職場から1kmもないところにあるショップが便利だったので、そこに行きました。夫は販売員の人に、クロスカントリー・スキーをやったことは一度もないけれど、これからやってみたいのだと説明しました。手入れされたトレイルを滑るつもりだが、私達の私有地でバックカントリー・トレイルも少し作りたいと伝えました。その販売員は、バックカントリーはおすすめしません、手入れされたトレイルだけにすべきですよ。と夫に言い、あるスキーを指差して「これがあなたにいいと思いますよ」と述べました。

数日後、私達は別のショップに出向き、夫は同じ内容を説明しました。すると今度の販売担当者は、私有地に自分でトレイルを掘る方法を教えてくれて、スキー・ブーツ・ストック用に夫の身体の寸法を測り、体重と身長に合わせてビンディングを調整してくれました。これらは、私達がそこで何かを買うと約束する前に行われました。その店員さんは夫に、販売フロアでちょっとしたレッスンも行ってくれました。ストックの持ち方や、足の繰り出し方、スタンスなどです。私達はその日、そこでスキーを購入しました。

買ったスキーは、最初のショップで見たものと同じブランドで、同じサイズでした。しかし最初のショップでのエクスペリエンス(経験の質)は低く、次のショップでのそれは、期待を上回っていたのです。

その2ヶ月後、私は良い自転車が欲しくなりました。あるお店で、私は通勤とフィットネス用に自転車が欲しいこと、住んでいるのはグラベルロードのそばだけれども、ほとんどは舗装路で乗ること、たまに娘を乗せたトレイラーを牽いて走りたいことなどを説明しました。すると店員さんは、私には大きすぎる重いMTBを持ってきて、あなたが欲しいのはこれですよ、と言いました。それではないことは、私はわかっていました。

私達は別の自転車店に行きました。今度は、あなたは小さすぎるから子供をトレイラーで牽くような大変なライドはできない、あなたに必要なのはE-Bikeであり、他の何を買っても後悔するでしょう、と言われました。

そこで私達は、夫がスキーを買ったお店に行きました。彼らは私の寸法を測った上で、坂の多い道を登れないわけがない、トレイラーを牽くのは最初の数回は難しく感じるが、乗るたびに簡単になってきますよ、と言いました。また彼らは、私には大きすぎるフィットネス・通勤用自転車を見せてくれた上で、その自転車のXSサイズはあまりないので在庫していないけれども、喜んで注文しますよと言いました。私はワクワクしながら3ヶ月待ち、10日ほど前に引き取りに行ったばかりです! それは私が思い描いていたとおりの自転車で、丘も簡単に走れますし、娘を牽くのは力が要りますが、100%可能です。

もし私がMTBを買っていたら、後悔していたでしょう。E-Bikeを買う予算はありませんし、言われたことを鵜呑みにして、私には普通の自転車で通勤する体力がないのだと考えたら、悲しい思いをしたことでしょう。最後のお店は私に自信を与えてくれ、私が求めているものに耳を傾けてくれ、まさに必要としていた自転車を見せてくれました。

簡単に言うと:顧客が必要としているものは何か、耳を傾けてサービスを提供することがものすごく大事であり、購入体験だけでなくその後の自転車体験をも左右します

これも個人的に共感できる内容でした。夫がスキーを買わなかったショップ、コメント主さんが自転車を買わなかったショップに共通しているのは「それはやめたほうがいいですよ、あなたにはできないですよ」という否定からスタートしているところでしょうか(バックカントリーはやめたほうがいい、トレイラーはあなたには無理、等)。

2人がスキーや自転車を買ったショップは、お客さんに言われたようにするというわけでもなく、サイジングをしたり話を聞いてくれた上で、これはどうですかと提案し、難しそうな内容ならやり方を教えてくれる、というところが違っていますね。

カスタマーが望んでいる方向において、最適解を提供する、というアプローチでしょうか。上の例で言うと、ビーチクルーザー用サドルやMTBやE-Bikeを勧めるのは、カスタマーが望む方向性とは無関係に何か提案してきている感じはします。

assumeではなくassessを意識する

他の方では「assumeではなくassessしてほしい」という意見もありました。「assume」は先にも書いたように、あなたはこうだよね、これが欲しいに違いないよね、と決めつけることですが、「査定する・評価する・見極める」などとも訳される「assess」は、あなたに必要なものは何だろうか、それを一緒に考えましょう、ということですね。

接客経験を積むことで、お客さんに共通する需要を理解し、大体こういうものが欲しいんじゃないか、望まれているのではないか、と仮定する能力は、それはそれで必要かつ大事なスキルではないかとも思うのですが、逆にそれが落とし穴になってしまい、お客さんの話をちゃんと聞かない癖ができてしまう、ということなのかもしれませんね。

私自身も去年、登山用品店で、上の方がスキーを買った時のように接客してくださった店員さんに遭遇し、下調べのつもりで入ったつもりがお店を出る時には装備を買っていました。

逆に、数年前にはじめて訪れた歯科医院では「こことここに虫歯がありますね、まずここから治療しましょう」と言われたのですが、虫歯と言われたそれらの歯は痛くはなく、別の歯が痛いから訪問したのでした。しかし「そんなことはない」と話は聞いてもらえませんでした。たくさん患者を診てきているのだから、言う通りにしなさい、という感じでした(assessなきassume)。

幸いその後、最初に話を聞いてくれる良い歯医者さんを見つけて、歯は完全に治しました。行きたくなるショップと病院、少し似ているような気もしませんか。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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