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グラベルってどこにある? グラベルサイクリング入門

最近流行りのグラベルロード。MTBでは走れないような長距離を、ロードでは走れないような未舗装路を堪能しながら駆け抜ける、私のイメージはそんな自転車です。

気になってるけどいまいち購入に踏み切れない…そんなみなさんの主な悩みのひとつは「グラベルがどこにあるかわからない!」という点ではないでしょうか。

確かに現代の日本では、たとえ山に近い地域でもルートラボに出発地と目的地を入力するだけでは出てくるコースは舗装路ばかり。ロード乗りには喜ばしいことですが、未舗装路を愛する者にとってはたいへん生きづらい世の中です。

身も蓋もありませんが、一番手っ取り早いのはショップのイベントや身近なグラベラーのアテンドに乗っかってグループライドに参加すること。経験者のおすすめコースはハズレがないでしょうし、何より仲間と行くグラベルライドの楽しさは格別です。

でもそれだけじゃもったいない。見知った舗装路を離れ、地図を読み、地形を読み、好奇心を力に変えて山野を自由に駆け巡る勝手気ままな冒険もオフロードサイクリングの醍醐味。

グラベルってどこにある? グラベルサイクリング入門

そこでこの記事では「どうすれば未舗装路を見つけることができるのか?」をテーマにプランニング編と実走編に分けてグラベルサイクリングの始め方をご紹介したいと思います。

注) 出鼻を挫くようで申し訳ありませんが、実はわたしグラベル「ロード」を持ってません(オイ!)。信仰上の理由からリジッドマウンテンバイクに700x40cのホイールを履かせたグラベルクロス仕様で楽しんでいます。また画像にはロードバイクも登場しますが、何はともあれ未舗装路が大好きなことに変わりはないので細かいことは気にせずお楽しみくださいm(_ _)m

プランニング編

ここで使用するツールは

  • グーグルマップ(航空写真+地図)
  • ツーリングマップル
  • 地理院地図(webサービス、アプリ、紙の地図など)
  • Twitter検索

です。(個人ブログの記事なども大変参考になりますが今回は省略します)

グーグルマップ

まずはグーグルマップで大まかな行き先を決めます。ある程度の距離とアップダウンを楽しめるグラベルとなると、日本国内であれば必然的に山間部に限られるので、行きたいコース上にある山周辺を航空写真から大まかに絞り込みましょう。

都市部にお住まいであれば輪行が必須になるかもしれませんが、基本的にこの段階ではあまり深く考えず、いつものサイクリングと同じように行きたいところを選ぶだけで大丈夫です。

ツーリングマップル

ツーリングマップル

次にツーリングマップル。ご存じない方のために紹介しておくと、ツーリングマップルとはライダーが実際に全国を走り旅に役立つ情報を詰め込んだ、ツーリストによるツーリストのための地図です。オートバイがメインターゲットですが、自転車旅行にも大変重宝するため多くの自転車ツーリストに愛用されています。

ツーリングマップル

ツーリングマップルでは、未舗装路は「ダート」と呼ばれオレンジの点線で表記されます。林道名、距離、路面状況などが記載されていることもあり、目当ての場所にこのオレンジ線があれば儲けもの。是非コースに組み込んでみましょう。

ここでいうフラットダートというのは、轍が踏み固められた比較的走りやすい未舗装路で初心者の方におすすめ。逆に粗めの岩や砂利がゴロゴロしているような、所謂グラベル!然としている道は「ガレたダート」と表現されます。

ただ残念ながらツーリングマップルに記載されているグラベル(ダート)はごく一部だけ。そこで次に使用するのが地図の王様、地理院地図(地形図)です。

地理院地図

国土地理院が作成する地形図は電子国土webで一般に公開されている他、大手の書店で紙の地図も一枚350円で購入できます。

等高線や地図記号が満載なので苦手な方には迷路に見えるかもしれませんが、グラベル&トレイルハンターにとってはまさに宝の地図。これを眺めてるだけで一日潰せます。

地理院地図

まずはこの地形図で目当ての地域をこのような表示になるまでズームしていきましょう。

ここで注目するのは黒の実線で示された「軽車道」です。凡例によると

軽車道(けいしゃどう)とは、道路はば1.5メートル以上3メートル未満の道路を記号化した記号道路であらわしています。ただし、地域(ちいき)の状況(じょうきょう)を考えて、必要性(ひつようせい)の低い道は表示(ひょうじ)しないことがあります。

地図記号:軽車道|国土地理院

とのこと。道幅1.5m以上3m未満というのは、およそ車一台が通れる程度の道幅。ダブルトラック(轍が2本=4輪車が通れる道)の林道がこれに当たり、未舗装路である可能性が高いので要チェックです。

未舗装路

ただ、あくまでこの軽車道の規準は道幅だけなので、場所によっては全面舗装されていることもあり過信は禁物。基本的には行ってみてのお楽しみですが、開けた尾根筋など場所によっては航空写真から路面状況が確認できる場合もあります。

またさらに上級者向けの補足として、地形図上の破線で示された道も一考の余地があります。

この破線は「徒歩道」を表します。

徒歩道とは、道路のはばが1.5メートル未満の道路を記号化した記号道路であらわし、次のいずれかにあてはまるものです。

  1. 登山、観光、レクリエーションなどのためによく利用される道路
  2. 集落を結ぶ必要な交通路となっている道路
  3. 主要な場所につうじている道路

地図記号:徒歩道|国土地理院

山間部においては登山道であることが多く、MTBのトレイルライドであればメインとなる部分ですが基本的にグラベルロードでの走行に適した道とは言えません。…が、中には走行可能な場所もあります。(さらに厄介なことにそういう道こそが一番楽しかったりします。)

徒歩道

これくらいならなんとか乗れる…かな?

その目安のひとつとなるのが等高線です。

一例としてこちらをご覧ください。

等高線

この中央を走る道、南の軽車道から来ると途中から徒歩道になっていますが実はグラベルロードでも走行が可能なとても楽しい未舗装路です。

道の周辺をよく見ると等高線が丸く閉じた場所があり、さらにその間隔が広い(白い部分が大きい)部分を等高線に沿って道が通過していることから、傾斜の緩やかな広い尾根筋に沿って進んでいることがわかります。

このような地形であれば、運が良ければ乗ったまま突破できるかもしれないし、最悪押し歩きになったとしてもそれほど危険はないだろう…ということが読み取れます。

等高線

逆に危ないのがこういうところ。密な等高線に対して道が垂直に引かれています。位置的に一般道から軽車道へのアプローチorエスケープとして最適なので、「最悪担げばいいや」と迂闊に行くと、自転車を押すことすらままならないほどの急斜面(直線距離にしてわずか100m弱で標高差が70m以上)を突破するハメになり大変危険です。

このように破線部分はあくまで徒歩道(登山道)なので、一定以上の経験と知識と装備がないと(あっても)危険な場合もあります。くれぐれも慎重に、迷ったら行かないくらいがちょうどいいでしょう。安全第一。

ちなみに地形図はスマホのwebブラウザからも確認できますが、山奥の林道は圏外のことも多いため私はFieldAccess2というアプリを使用しています。

840円と高めですが、事前キャッシュはもちろん地形図上に写真を紐づけたピン打ちができたりととても便利で重宝しています。

FieldAccess2というアプリ

地形図上に写真とメモを残せるのはとてもありがたい

無料版もあり、広告や多少の機能制限はありますが事前キャッシュと地図の閲覧は可能なのでそちらでも十分かも。

Twitterでの情報収集

次に考えなければならないのはその道が通行可能かどうかです。県道や基幹林道であれば都道府県の道路情報ページから確認できるのですが、マイナーな林道などは公式の情報が見つからない場合も多々あります。そんな時役に立つのがTwitterの検索機能。

通りたい道の名前(林道〇〇線)などのキーワードで検索すると直近にそこを訪れた方のつぶやきや、運が良ければ画像で路面状況まで確認できます。

実はTwitterには特定の場所周辺のツイートを指定して検索できるgeocode検索という機能があるのですが、残念ながら精度が低くあまり実用的とは言えません。

また有名な道であれば検索結果も膨大になるので、期間指定ができるsinceやuntilといったコマンドを組み合わせるとより正確な検索が可能です。

個人ブログ等も参考になりますが、台風通過直後などの通行可否の判断に必要なリアルタイムな情報はやはりTwitterに分があります。

プランニングの注意点

以上のような方法でグラベル候補の道を盛り込みつつルートを組み立てていきますが、大切なのは計画段階から常に数通りのエスケープルートを想定しておくこと。通れると思っていた道が土砂崩れで通れなかった…なんてことはよくあることで、むしろ計画通り走れるほうが稀。

特に慣れないグラベルは心身ともに予想以上に消耗が激しくなるため、距離はなるべく控えめにしておいたほうが安心です。

プランニングの注意点

キッツい峠を登った先で唐突に現れる非情な現実

また時期や標高によっては舗装未舗装以前に雪の心配もあります。特に春先などは峠の入口は南向きの斜面で普通に通れたのに北側に回り込んだ途端に膝まで埋まるような積雪が突如現れるなんてこともザラです。

膝まで埋まるような積雪

わたしもこの春東北で大変な目にあいました。とてもたのしかったです。

また未舗装路ではメカトラブルも多発します。木の枝を巻き込んでディレイラーがもげる、盛大にサイドカットして修理不能のパンク、ガレた岩場に高速で突っ込んでリムを曲げる、凍結した路面でSTIを叩き割る、鬼斜度の坂で踏み抜いてチェーンリングが曲がる…

中にはアプローチの舗装路でのものもありますが、これらは全て実際にわたしの周りでこの一年以内に起こった事象です。

メカトラブル

気の合う仲間とのライド中ならトラブルも思い出になりますが、誰もいない山で唯一の相棒のメカトラは精神的にもかなり応えますし、時間や場所によっては冗談では済まない場合もあります。どこでどんなトラブルが起きても対応できるように余裕を持った計画を心がけましょう。

実走編

ある程度まとまったグラベルをしっかり楽しもうと思ったら前述のような下調べが必須ですが、もっと気軽に普段のちょっとしたポタリングでもグラベルを楽しみたい! という方も大丈夫。

実は身近なところにも面白い未舗装路がたくさん隠れているものです。ここでは普段のサイクリングでちょこっと寄り道できる小さなグラベルが見つかる場所をいくつか紹介します。

河川敷

河川敷

新潟県阿賀野川沿い

山間部を除けば最も可能性が高いのが平野部を流れる大きな川沿いの河川敷。アップダウンはありませんが、ある程度人通りがあるため路面状態は良く比較的長距離のグラベルを楽しめます。

高速道路(バイパス)横の管理道

高速道路(バイパス)横の管理道

高速道路に沿って続く細い管理道も狙い目。特に近くに幹線道路が並走していたりすると、わざわざ高速横の細道を通る車も少なく、必然的に舗装が荒れていたりそもそも未舗装である可能性が高まります。

とくに山沿いの高速などは細かなアップダウンをキャンセルするため高架道路になっていますが、その横には元の地形通りにアップダウンが際限なく繰り返される冗談みたいなグラベルがあったりします。

峠の旧道

登山道だったり、最近まで使われていた舗装路だったりと様々ですが、トンネルが古ければ古いほど、旧道が未舗装である可能性は高まります。また、入り口は舗装されていても少し進むとグラベルが始まったり、きっつい舗装路を登った先で突然の通行止めだったりとパターンは様々。

峠の旧道

トンネルの旧道の先に更に古い廃トンネルがあるなんてことも

先述の地形図などと合わせての判断となりますが、ある程度数をこなすと旧道の入り口を見ただけで、なんとなく行けそうかな…、無理そうかな…という嗅覚が身につくので、ある種の博打と思って楽しんでみるのも一興。

水辺の旧道 (川・湖・海沿いのトンネル横)

水辺の旧道 (川・湖・海沿いのトンネル横)

水辺に突き出た小さな半島の外周や谷沿いを行く高架の脇道などです。未舗装というよりは古い舗装が剥がれたような廃道が多い印象。このタイプの道は野生動物を見かける率も高い気がする。

あぜ道

あぜ道

見つけやすい上にどこにでもあるのがこれ。トラックだらけの幹線道路を一本離れて広い田んぼの中をのんびり行きましょう。用水路の行き止まりに注意。

湖岸

湖岸

硬めの砂質なら40c前後のタイヤでもなんとか走れる。海辺と違って塩害を気にする必要もありません。水際を走る開放感ときたら。

海岸沿いの防風林

海岸沿いの防風林

海沿いに整備されている防風林の中にちょっとした未舗装路があることも。写真は岸壁沿いの低木帯ですが、基本的には松などの針葉樹林帯が多く柔らかい土の歩道を楽しめます。

以上のような道はどれもそれ自体を目当てに行くほどのグラベルではないかもしれませんが、選択肢の一つとして頭の片隅においておくとちょっとしたポタリングでも思わぬグラベルに出会えたりしてサイクリングの幅がぐっと広がります。

おわりに

地図と格闘しネットで情報を集め、徐々にその輪郭が明らかになる尾根沿いの基幹林道。何気ないポタリングの途中、ふいに見つけた川沿いの砂利道やトンネルの横に消えていく暗い廃道。サイクリングに未舗装路という選択肢が加われば、走り飽きたはずのいつもの山が宝の山に変わるかもしれません。

グラベルサイクリングの世界

これから自転車に乗りたい、ロードバイクでは刺激が足りない、MTBでは走り足りない… この記事がそんなみなさんの背中をグラベルサイクリングの世界に蹴飛ばせていたら幸いです。グラベルはいいぞ!!

著者
やくも

源流は自転車野宿旅。最近はロングライドとグラベル。自転車が好きな人の自転車が好き。ブログ『やくもの自転車図鑑』をぼちぼち更新中です。

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