センスがない。お金もない。脚力もない。友達と呼べる人も将来の目標もない。「ないないづくし」の中年男子、nadokazu。そんな彼がたまたま立ち寄った場所、「cbn」。そこで出逢ったのは、後に自転車生活を一変させる「フロントバッグ」だった。
というわけで、本日の駄文はこちら!
カメラ好きの自転車乗りには、フロントバッグが最適解かも。
センスは…ない。脚力も…ない。けれど、自転車に乗って写真を撮ることだけは好き。そんな意識低い系ゆるポタ野郎のお気に入りは、「大容量のフロントバッグ」です。
その理由は「レンズ交換式カメラを安全に持ち運ぶ」そして「スピーディに撮る」という相反する条件を、極めて高いレベルで両立できるから。
たとえば「スピーディに撮る」という点だけを見ると、いわゆる速写ストラップを使ってカメラを斜めがけするスタイルに到底かないません。
だがしかし!
それだと、運搬中のカメラ機材は丸裸。走行中に遭遇する埃や汗や虫や雨などに対して、完全ノーガードになります。
そしてなにより、万一の転倒時に危険すぎると思うのです。カメラやレンズへの大ダメージは言うに及ばず、転倒した身体の下にカメラがあったら被害はさらに上乗せされます。リスクが大きくなりこそすれ、軽減されることはありません。
フロントバッグに収納していれば、走行中の機材保護はまぁ無問題。転倒時だってバッグから飛び出しでもしない限り、カメラ本体への直接ダメージは最小限。身体の方にも、カメラ機材による追加ダメージはほぼないでしょう。
キキッと自転車を停めて、パッとトップカバーを開けて、サッとカメラを取り出して、パシャッと撮る。この一連の動作が、ストレスなくスピーディに行える。そしてカメラとレンズを、最小リスクで持ち運べるソリューション。それこそが、「フロントバッグ」だと思うのです。
「カメラを運ぶ・写真を撮る」用途のフロントバッグ選びで、譲れない条件って?
じゃあ、フロントバッグなら何でもオッケーかというと、そういうわけでもありません。カメラの運搬/写真の撮影を快適に行うためには、いくつもの条件をクリアしてもらう必要があります。これだけは絶対に譲れない!という条件を列挙してみると、こんな感じです。
条件1:トップカバーの開閉がジッパーではないこと。
ジッパーだと、開閉に時間がかかってストレス高まりまくりです。しかも、その操作が撮影のたびに、となると撮影回数とストレスレベルが思いっきり正比例するので、撮る意欲の阻害要因になりかねません。ジッパーとカメラが擦れてしまうかも…というのも不安要素になります。
条件2:開口部がライダーの方向であること。
自転車に跨がったままカメラを出したいのに、開口部がフロント側にある。これだと取り出しも収納も、いちいちやりにくいったらありません。「いい景色だ!撮ろう!」という衝動を阻害されまくって、撮れ高が下がります。
条件3:車体への固定がベルクロではなく、アタッチメント式であること。
レンズ交換式のカメラ機材は、それなりの重量物。ベルクロ固定だとダンシングで車体を振ったときなど、固定状態の保持にどうしても不安が残ります。着脱のスピーディさや固定の確実性も含めて、アタッチメント装着式であることは譲れない条件です。
条件4:一定の防水性があること。
「天気予報は快晴で、降水確率ゼロ。それなのに、突然の雨でズブ濡れ!」「トンネルの中で、天井からしたたる水滴が、なぜか絶妙のタイミングで自分に!」「ボトルから身体に水をかけようとしたら、手元が狂って!」などなど、カメラ絶対濡らすマンは虎視眈々とあなたを狙っています。対策はひとつ。カメラを入れるバッグに、防水性を持ってもらうことしかないでしょう。
というわけで、勝手な必須条件を並べ立ててみました。もちろん、こんな意識低い系ゆるポタ野郎の身勝手な思い込みを満たすフロントバッグなど、メーカーさん的に販売するメリットは皆無。フォトポタ用フロントバッグの選択肢は、ハナッから思いっきり限られています。そもそもフロントバッグ自体、そこまで多くの選択肢がある商品ではないですし。
条件を満たすフロントバッグは、ORTLIEBの「アルティメイト6」だけ?
そんな中で、こうした身勝手欲求ををバッチリクリアしている製品として挙げられるのが、ブロンプトンの「ミニOバッグ」です。
ブロンプトン用のバッグは色々試しましたが、こと「ブロンプトンでフォトポタする」という評価軸において本品以上のバッグには出会えていません。サイズ感、機能、品質…ありとあらゆる点が、フォトポタ用に最適で最高です。どうして…どうしてディスコンになってしまったんだ…。
それはさておき、確かに「ミニOバッグ」は最高なんですが、致命的なネガをひとつ抱えています。それは、「ブロンプトンにしか使えない」ということ。そりゃブロンプトン用なんだから、当然ですよね。ミニOバッグに罪はありません。
なんですが、「しまなみ海道の展望台を地獄行脚する」というときは、さすがにフロントディレイラーのある自転車を使いたい。ブロンプトンは、選択肢から外れます(魔改造すれば?というツッコミ不可)。
とはいうものの「ミニOバッグ」と同じ機能性を持っていて、フロントディレイラーのある(≒ドロップハンドルの)自転車でも使えるフロントバッグなんて、あるんでしょうか…。
あ り ま し た !
それはORTLIEBの「アルティメイト6」シリーズ。前述の条件をすべて満たしているうえに、ハンドルバーに固定できるアタッチメント(リクセン&カウル互換!)での装着が可能です。しかもシリーズ中のひとつ「アルティメイト6」の7Lタイプは、ミニOバッグとバッグ本体部分がほぼ同一の造り。違いはアタッチメント/トップカバーの固定方法/ハンドストラップの有無程度しかありません。
…というところまで考えて、気がつくと「アルティメイト6プラス(アルティメイト6のサイドポケット付きバージョン)」とアタッチメントがなぜか手元に。いやー、不思議なこともあるものです。
機材があるなら、使わなければなりません。そこでフロントディレイラーつきの自転車で、ミラーレス一眼を交換レンズとともに持ち運んで、登坂ありまくりのサイクリングを実施してきました。ぐふっ(吐血音)。
ネガが無いわけではありませんが、自分の中でのフロントバッグランキングは瞬く間にORTLIEBの独壇場。サイズ違いも揃えちゃおうかな…などという、欲望も湧き上がりまくる始末です。嗚呼…ORTLIEB…最高…!
強力ライバル、Route Werks登場!
アルティメイト6プラスを装着したTyrell FXで、しまなみ海道の展望台へ向かう登坂にボコボコにされていたときのことです。
嫁様から「海外から荷物が届いたぞ…貴様また何か無駄な買い物しやがったな…?(意訳)」という、ガイツーモロバレSMSが着信しました。
どぎつい斜度に、嫁様激おこの恐怖が加わってダブルで震え上がる羽目に陥ったのですが、そういえば自分もポチっていたんですよね。Route Werksの、ハンドルバーバッグ。あまりにも時間が経過していた(発送連絡も来てないよ!)ので、忘却しかけていました。はい。
帰宅後にチェックしてみましたが、品質面の不満は全然なし。個人的フォトポタ機材セット(Nikon Z6+パンケーキズーム+85mm単焦点)の収納も難なくできてしまい、唯一不安ポイントだった「カメラ入るかな?」という部分も無事クリア。
「フォトポタ用フロントバッグは、もうORTLIEBでいいや…」と思っていたところに、乱入してきた伏兵Route Werks。
こうなると、考えなければなりませんよね。「どっちをメインで使うべきか」ということを。
ORTLIEBとRoute Werksを、比べてみると?
比較1:サイズ感
自分の買ったORTLIEBアルティメイト6プラスは、容量7L(他に8Lと5Lの製品もあり)。 Route Werksのハンドルバーバッグは、3.2Lになります。当然、容量が大きいORTLIEBのほうが収納力は圧倒的に上です。
Route Werksが、ほぼ「カメラしか入らない」。それに対して、ORTLIEBはカメラ機材に加え、クッション材、輪行機材、着替えや予備バッテリー類などなど、いろいろ収納できまくり。その差は、歴然です。
だがしかし、容量が大きいことによるデメリットも、確実にあります。
ひとつは、見た目。Route Werksのハンドルバーバッグは、トップカバーがハンドルバーとほぼ同じ位置にあります。
それに対して、ORTLIEBはかなり上の位置。トップヘビー感満載で、スッキリした印象とはほど遠い感じです。もともとファニーな印象があるミニベロロードなら全然許容範囲ですが、普通サイズのロードバイクにはちょっとなあ…と思わずにいられません。
ふたつ目のデメリットが、ハンドルの操作性。容量が大きい分いろいろなモノが入りますが、それだけ重量も増加します。わずかなグラつきでも、ハンドルが大きく振られてしまう。走行中ずっと「振られがちなハンドルを、押さえつけ続けて走行すること」を強制され、1日走ると腕パンパンです。(涙)。
でもまぁ、だからといって走行に致命的な支障が出るレベルかと言えば、そこは明らかに否定できます。こんなへっぽこ自転車乗りが、登坂複数回ありで90kmの行程を走りきれていますので。
【比較の結果】
見た目はRoute Werks。容量/収納力はORTLIEBがそれぞれ圧勝。
比較2:カメラの取り出しやすさ
ORTLIEBは、強力なマグネットでトップカバーを固定しています。この固定力のチューニングが絶妙で、走行中の不安は皆無。それでいて開閉時に「力を加えて外す」という印象を一切受けない程度の強さに収まっています。パッと開けて、サッと取り出す。撮りたい衝動を、まったく阻害しない開けやすさです。
ちなみにミニOバッグは、ボタンでの固定式。パチンと外す/留める必要があるので、マグネット式より格段に手間です(ボタンの固定力があるからこそ、トップカバーにハンドストラップが着けられる、という側面はあると思いますが)。
さてさて、対してRoute Werksですが、こちらはレバー式の固定機構を採用しています。手前にレバーを引くと、ロックが外れてトップカバーが開く。極めて普通に開閉操作ができて、固定力も高いです。不満を感じる要素は、まったくありません。
【比較の結果】
カメラの取り出しやすさは、ORTLIEBの勝ちです。ロック解除とトップカバーを開く操作が、ほぼワンアクション。トップカバーを開く動作の中に、ロック解除が自然に含まれます。それに対して、Route Werksはロックを外す/トップカバーを開くというツーアクション。実用上の差はほぼゼロですが、ORTLIEBのほうが僅かに開きやすいです。
比較3:ハンドルへの装着感
ORTLIEBは、樹脂製のアタッチメントを金属製のワイヤーでハンドルに固定しています(リクセン&カウルのアタッチメントも流用可能なので、その場合は固定パーツをボルト締め)。
カバンをアタッチメントに取り付けて、グレーのボタンを押下するとロックがかかる仕組みです。
Route Werksのほうは金属製のアタッチメントを、ハンドルバーにボルトで固定しています。
カバンのアタッチメントを差し込んだあと、赤いレバーを180度回転させるとロック完了です。
【比較の結果】
グラつきなどはなく、共に安心感は絶大です。
ただし装着しやすさは、ORTLIEBの方が上。Route Werksはロック操作でレバーをクルッと回すのですが、ブレーキやシフトのワイヤーを押し避けないとロック位置まで回せません(自分のTyrell FXの場合)。ORTLIEBは「上から少し押すだけ」で、ストレスフリーです。
また、ハンドルバーへのアタッチメントの取り付けですが、ワイヤーで締め付けて固定する方式のORTLIEBはえらく手間と時間がかかりました。「苦労した」という印象が、記憶に刻み込まれています。正直、あまり頻繁にはやりたくない作業ですねぇ。
Route Werksはボルトを締めるだけの取り付けなので、普通に苦労レスです。
比較4:入手のしやすさ
ここはもう、ゴチャゴチャ書く必要は無いでしょう。
【比較の結果】
入手のしやすさは、ORTLIEBの圧勝です。Route Werksのハンドルバーバッグは、クラウドファンディングよるプロダクト。一般流通には乗っていませんし、再販がなければもう入手の機会はありません。ORTLIEBはAmazonでポチれば、それこそ翌日に届きます。入手性には、差がありすぎです。
ORTLIEB と Route Werks、両方を実際に使ってみて。
ORTLIEBは、サイズ感と容量のバランスが素晴らしいです。なんですが、前述のとおりトップヘビーな見た目とハンドル操作の重さが地味なストレス要因。収納のために犠牲にするモノが、ありすぎと言えばありすぎる、と言えます。
ただ、そこを差し引いても「カメラ以外にも色々入る」収納力は、きわめて大きな魅力です。
だって荷物がカバンに収まらなかったら、その荷物は持ち運べないのですから。フロントバッグに入れていたカメラ以外の装備ぜんぶを他に移すとなると、腰周りへのストレス増加を諦めて大きめのヒップバッグ導入を検討しないといけないかも。それはイヤだなぁ。
とくに防寒装備が不可欠な春先や秋口の旅は、運びたい荷物の量が増えますから、容量が大きいことのポジがより際立ちます。
Route Werksは、見た目が超スッキリ!
ロードバイクに取り付けても、「巨大なバッグが装着されている!」という印象は全然なし(個人の感想です)。ハンドリングへの影響だって、ガン無視できる範囲に余裕で収まります。
その反面、収納できるのはカメラ機材だけ。活用機会は防寒装備不要の夏場、もしくは宿泊を伴わない日帰りサイクリングに限られそうです。
まぁ宿泊ありと日帰りで、どちらか回数が多いかというと、圧倒的に日帰りです。これからは、Route Werksの登場回数が増えていく可能性が高いですね(アタッチメントを取り付け直すのも、手間かかりすぎですし…)。
総合判定!最強のフォトポタ用フロントバッグは?
というわけで、走り比べた結果もふまえて、結論を申し上げます。
最強のフォトポタ用フロントバッグは
「ORTLIEBのアルティメイト6」です。
ORTLIEBでしか実現できないことがあるし、 Route Werksでしか実現できないこともある。大は小を兼ねないし、その逆もしかり。一長一短がそれぞれ大きすぎて、代替不能ではあります。
でも、Route Werksのハンドルバーバッグは、「もう入手できない」というのが致命的です。いくら素晴らしい製品でも、買えなかったらそこまで。勝負になりません。サイズ感と見た目が気になるなら、アルティメイト6の5L版という選択肢もギリギリ残っていますし。
実に素晴らしい製品だけに、本当に勿体ない。Route Werksさん、量産&一般流通してくれないですかねぇ。
【追記】Route Werksのハンドルバーバッグが、一般販売開始!勝敗はどうなる?
本稿執筆時は「もう入手できないから」という理由で、ORTLIEBのフロントバッグに軍配を上げました。
なんですが!
Route Werksのハンドルバーバッグ、一般販売が開始されていました。Twitterでフォロワーの方に教えていただいたのですが、もともと一般販売の予定が合ったそうです。英語の読めない情弱は、そんなことを一切知らずに記事を書いておりました。恥ずかしいにもほどがある…!
というわけで、ここで買えます。
「Shipping address」の欄にはJAPANも入っているので、日本にも発送してくれる…はず…です。
こうなると、どちらに軍配を上げるか考え直さないといけません。…が、これ結論出ないです!容量足りなければ荷物は収納できませんが、サイズに比例してハンドリングへの影響は増えます。
結局のところ「運びたい荷物の量によって、最適解は変わる」ということ。いや、その、決して勝敗を決めあぐねて、お茶を濁して逃亡しようとかいうつもりは…。(原稿はここで途切れている)
関連記事: